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医師「命に関わる危険性も」→実は『ただの夏風邪』じゃないかも…見落としがちな『隠れ熱中症』の症状とは?

  • 2025.7.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

暑い季節になると、つい「夏風邪かな?」と軽く考えてしまう体調不良。しかし、それが実は熱中症の初期症状、つまり『隠れ熱中症』かもしれないことをご存知でしょうか?

熱中症は見た目や症状が軽いため、知らず知らずのうちに進行し、最悪の場合は命に関わることもある怖い病気。この記事では、「ただの夏風邪」と決めつけずに知っておきたい隠れ熱中症のサインと対策を、日常生活に役立つ情報とともにご紹介します。

見た目は普通、でも油断禁物!見落とされがちな隠れ熱中症

熱中症の主な症状は、高熱や激しい頭痛、意識障害などがありますが、初期段階では軽い倦怠感や頭痛、めまい、微熱といった症状が中心となり、夏風邪と勘違いしてしまうことも。こうした症状を軽視すると、体内での水分・塩分バランスが崩れ、やがて重篤な状態に進むリスクが高まります

特に注意したいのは、体感温度が高い場所での作業や運動後に感じる不調です。冷房の効いた部屋に移動して汗が引くと一時的に楽になりますが、それは『隠れ熱中症』が潜んでいる可能性も

脱水症状を起こしやすい高齢者や小さい子どもは、本人の自覚症状に乏しく医療機関での判別も難しい場合があるため、家族や周囲の人が普段と違う様子に気づくことが命を守る第一歩となります。

知っておきたい!隠れ熱中症を見抜くポイントと効果的な予防策

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

隠れ熱中症の見分け方として、以下のポイントに注意しましょう。まず、軽度の頭痛や吐き気、集中力の低下、筋肉のこむら返りなど普段と違う体調不良は要注意。特に気をつけたいのは、汗をかいているのに口の渇きがない体がだるくて安静にしていても回復しない場合です。

対策としては、こまめな水分補給が欠かせません。水だけを大量に飲むと低ナトリウム血症を招くことがあるため、発汗が多い場面では経口補水液(Oral Rehydration Solution、ORS)や適切な電解質を含む飲料を。一方で心不全・腎不全・透析患者、糖尿病患者では飲み方の指導が必要です。また、直射日光を避けることや、通気性の良い服装を選ぶことも有効。運動や外出は朝晩の涼しい時間帯にするなど、生活リズムを整える工夫も必要です。さらに、職場や学校などでの熱中症対策意識の向上や適切な休憩時間の確保も大切です。

また、屋内でも「エアコンを『もったいない』と我慢」「高齢者が夜間に脱水」「入浴での脱水」など、熱中症の危険は隠れていますので注意が必要です。

もしも熱中症が疑われる場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。早期発見と適切な処置こそが重篤化を防ぐカギとなるのです

『隠れ熱中症』を疑ったら…受診の目安

  • Ⅰ度(軽症):めまい、立ちくらみ、筋肉痛・こむら返り、発汗など。意識は清明で水分摂取が可能なら、涼所への移動・安静・経口補水で改善するか経過観察。
  • Ⅱ度(中等症):頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力低下などで日常生活に支障。医療機関受診を推奨。
  • Ⅲ度(重症):意識障害、痙攣、運動障害(ふらつき)、高体温(しばしば40℃以上)。救急要請(119番)と迅速な全身冷却が必要。

軽症の場合は、まずは涼しい場所へ→衣服をゆるめる→頸部・腋窩・鼠径部を中心に冷却や、ミスト+扇風機などを追加→意識障害や嘔吐がなく可能なら経口補水で様子を見るのが良いでしょう。

<医師が教える受診・通報の決断フロー>

  1. 意識がはっきりしない/ろれつが回らない/歩けないなどの中枢神経症状・汗をかいていないのに皮膚が熱く乾燥している(体温調節機能が破綻している) →直ちに119番を推奨。
  2. 嘔吐を繰り返す、強い頭痛・けいれん、40℃前後の体温 → 119番または救急受診を推奨。
  3. 自力で飲める・会話できるが倦怠感やめまいが続く → 涼所で休息+経口補水。改善なければ医療機関での受診を推奨。
  4. 高齢者・小児・持病持ち(心・腎・糖尿病など)は軽症に見えても早めに受診を推奨。

これらを参考に、熱中症だからと油断せず、場合によっては緊急の受診等も検討しましょう。

隠れ熱中症の正しい知識で健康管理を

ただの夏風邪だと思っていたら、実は隠れ熱中症だった」というケースは珍しくありません。だからこそ、暑い季節の体調不良は慎重に見極める必要があります。軽い症状であっても自己判断に頼らず、症状の経過や環境条件をよく観察し、必要に応じて専門家の意見を聞くことが重要です。

この記事でご紹介した隠れ熱中症の症状や予防法を日常生活に取り入れ、自己管理を意識することが、健康な夏を過ごすための最善策。くれぐれも無理をせず、こまめな水分補給と休息を習慣づけて、命に関わる恐れのある熱中症と正しく向き合いましょう


監修者:林裕章(はやし・ひろあき)
林外科・内科クリニック(https://www.hayashi-cl.jp/)理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域を支えている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
日本外科学会外科専門医、日本抗加齢医学会専門医