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「ラスト15分は息できない」「全員どこかおかしい」“異質な脚本”に視聴者絶句…「最後まで観て」“予想外の展開”に衝撃走る名映画

  • 2025.8.3

映画やドラマの中には、脚本に張り巡らされた巧みな伏線によって、解釈が分かれる作品があります。今回は、そんな中から"物議を醸した名作"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、映画『パレード』(ショウゲート)をご紹介します。ルームシェアをする5人の若者の、穏やかで何気ない日常。けれど、連続婦女暴行事件をきっかけに優しさの仮面がはがれ、関係は思わぬ方向へと向かいます――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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香里奈(C)SANKEI

作品名(配給):映画『パレード』(ショウゲート)
公開日:2010年2月20日

東京のとあるマンションでルームシェアしているのは、映画会社に勤める直輝(藤原竜也)、イラストレーター志望の未来(香里奈)、人気俳優と交際中のフリーター・琴美(貫地谷しほり)、そして大学生の良介(小出恵介)。年齢も職業もばらばらな4人は、お互いに深入りせず、ゆるやかな距離感のまま、怠惰な共同生活を送っていました。

ある日、酔った未来が連れてきた金髪の美少年・サトル(林遣都)が、そのまま部屋に居つくことに…。男娼を名乗る彼の存在は、穏やかだった4人の関係に、少しずつ波紋を広げていきます。

そんななか、街では女性を狙った連続暴行事件が発生。サトルに疑いの目を向ける未来、信じようとする直輝、見て見ぬふりをする琴美と良介。部屋の外で何が起きていようとも、4人はあくまで“表面上の平和”を守ろうするのですが――。

小説に惹かれた名監督が手がけた、異色の“恐怖映画”

本作の原作は、吉田修一さんの同名小説パレード』です。『悪人』や『怒り』など、映像化の多い吉田さんの代表作のひとつで、2002年には山本周五郎賞を受賞しています。

映画化を手がけたのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲監督。原作に強く共鳴していたという監督は「これは恐怖映画だ」と語り、静かに崩れゆく日常を独自の視点で描き出しました。のちに自ら舞台版も演出するなど、監督にとって特別な作品だったことがうかがえます。

物語の中心となる5人の若者たちを演じたのは、実力派俳優たち。

マンションの"まとめ役"的存在、映画会社勤務の直輝役に藤原竜也さん。『DEATH NOTE』『カイジ』シリーズでの激しい演技とは一線を画し、感情を抑えた自然な演技で魅せています。ご本人もシネマトゥデイのインタビューで次のように語っています。

僕は、今回の映画で特別なことは何もやっていないんですよ。(中略)まるで寝起きのようなテンションで楽しませてもらいました
出典:『『パレード』藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介 単独インタビュー』シネマトゥデイ 2010年2月22日配信

イラストレーター志望の未来を演じたのは香里奈さん。人気俳優と交際中のフリーター・琴美には貫地谷しほりさん。大学生の良介役は小出恵介さんで、周囲に合わせて生きる“今どきの若者”をリアルに表現しました。そして、突然部屋に住みつく金髪の美少年・サトルを演じたのは林遣都さん。

キャスト陣は和やかな現場の中でもそれぞれの役と真摯に向き合い、その演技は海外でも高く評価されました。本作は第60回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞しています。

やさしさの仮面をかぶった“無関心”

あのマンションで起きていたのは、若者たちのささやかなモラトリアムだったのか。それとも、見て見ぬふりを続けた“共犯関係”だったのか――。

一見、ゆるやかで退屈に見えたルームシェアでの生活は、物語が進むにつれ、それぞれの内面に潜む“不穏”が少しずつ輪郭を現しはじめます。

「静かに壊れていくのが怖すぎる」「登場人物全員どこかおかしい」「あまりに気持ち悪い」といった声もあるように、本作が描くのは、優しさや気遣いの仮面に隠された“無関心”の恐ろしさです。異物のような存在・サトルの登場によって、その関係性が軋みはじめ、やがてそれぞれの“本音”があらわになります。

そして終盤、連続暴行事件の犯人が明かされると物語は加速。「ラスト15分は息できない」「最後まで観て」といった感想が象徴するように、本作の真価はその結末にあります。

突きつけられるのは、目を背けてきた現実と、無意識に選んでいた“沈黙”と“無関心”の重み――。強烈な“後味の悪さ”を残しました。

本作は、優しさと無関心の境界を見せつけられ、言葉にならない“ざわつき”が胸に残る異色の名作です。


※記事は執筆時点の情報です