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「退去時に50万円請求された」ペット可物件でまさかの高額請求…弁護士が明かす“逆転の一手”

  • 2025.8.18
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

ペット可の賃貸物件で生活していたものの、いざ退去となると「ペットによる汚損」として数十万円もの高額請求をされてしまった…という経験のある方も少なくないようです。

ネット上で「ペット可のマンションを退去する際に、壁紙の張り替えやフローリングの交換で50万円以上請求された。ルールは守っていたのに納得いかない」といった趣旨の投稿がされ、「うちも同じような経験が…」「ペット可なのにおかしくない?」と話題になりました。

はたして、ペット可の物件でも高額な退去費用は支払わなければならないのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

「ペットによる汚損」どこまで借主負担?弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

支払わなくてはいけない場合とは?

---ペット可の賃貸マンションで、退去する際に「ペットによる汚損」として高額の請求をされたという例が多くあるようです。どういった場合に、支払い義務が発生するのでしょうか?

1. 以下の場合は、原則として借主負担となり、支払い義務が発生します。

(1)通常使用の範囲を超える損耗・汚損

具体的には以下のような場合です。

ア、ペットの爪とぎや噛みつきによる深い傷や破損
イ、壁紙・フローリング・柱などの明らかな破損や変形
ウ、異臭(尿や糞便など)による消臭・張り替えが必要な状態
エ、異常な毛の付着による設備の故障やフィルター詰まり

これらは「通常の使用による自然な消耗」ではなく、借主の過失や特別な使用による損耗とみなされ、民法621条又は契約により原状回復義務が発生します。

(2)契約書・特約で明確に借主負担とされている場合

以下の場合が該当します。

ア、契約書に「ペットによる汚損・臭い除去費用は借主負担」と明記
イ、特約が具体的かつ合理的な範囲で定められている場合
ウ、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に適合している場合

なお、特約に、漠然と「ペットによる損耗はすべて借主負担」とだけ書かれている場合、無効となることもあります。

逆に、支払う義務がない場合とは?

---どういった場合は支払い義務はない、もしくは減額されるのでしょうか?

以下のような場合には、支払い義務がない、または減額されるでしょう。

(1)通常損耗・経年劣化

具体的には以下の場合が該当します。

ア、長年の使用による壁紙の日焼け
イ、経年劣化による床材の色あせ
ウ、ペット可物件で通常想定される程度の引っかき跡やにおい

国交省ガイドラインでは、こうした通常損耗や経年劣化は貸主負担とされています。

(2)特約が無効な場合

契約に以下のような特約が定められていても無効となります。

ア、「ペットによる損耗はすべて借主負担」といった包括的・不明確な特約
イ、借主に不利すぎて合理性を欠く内容
ウ、契約時に特約の説明が十分に行われていない場合

この場合、原則に戻り、通常損耗や経年劣化は貸主負担となります。

(3)見積額が不当に高い場合

以下の場合は減額交渉したり、見積自体をやり直すこととなります。

ア、実際の修繕費用を大幅に上回る請求
イ、部分補修で足りるのに全面張り替えを請求
ウ、原状回復とは関係ないリフォーム費用が含まれている

高額の支払い請求があったら…まず何をすべき?

---高額の請求があった場合、まずどのように対処したら良いのでしょうか?

以下のような対応が必要となります。

1. 請求を受けたらすぐにやるべきこと

(1)請求内容の根拠を確認する

見積書や請求書の写しを必ずもらい、施工範囲・単価・数量などの内訳が明記されているか確認しましょう。「全面張り替え」「消臭一式」などのざっくりした表記は要注意です。

(2)契約書・特約を見直す

1、「ペットによる損耗負担」の条項や特約の内容
2、契約時に説明を受けたか、同意の署名があるか
といった点をチェックするのを忘れないようにしましょう。また、国土交通省ガイドラインと照らして合理的かどうかも判断すべきです。

(3)現状を記録する

退去時に室内写真・動画動画(日付入りが望ましい)を撮影し、その際、臭いや破損の程度が分かるよう、汚損箇所をアップで撮影しておきましょう。不当な要求を回避する証拠となります。可能なら第三者立会いでの確認も有効です。

2. すぐに支払わない

根拠や金額に納得がいかないうちは、その場で支払いに応じないようにすることが重要です。

「内容を確認してから回答します」と伝え、一旦持ち帰りましょう。一括払いの合意や小切手へのサインは慎重に対応する必要があります。

3. 交渉・相談の進め方の注意点

(1)根拠資料をもとに交渉

家主や管理会社と交渉する際には、「通常損耗・経年劣化」に該当する部分は貸主負担であることを指摘することを忘れないようにしましょう。

その上で、部分補修で足りる場合は、全面交換費用との差額減額を求めることが必要です。また、汚損が「ペット可物件で想定される範囲」かどうかを話題にすることも重要です。

(2)第三者機関への相談

交渉する前に第三者機関にあらかじめ相談しておくことも有効です。相談窓口には以下のようなところがあります。

ア、消費生活センター(188)
イ、弁護士(法テラスでも可)

入居時に気をつけるべきこととは?

---ペット可の物件で、退去時に高額な請求をされないために、入居時に気をつけておくべきことがあれば教えてください。

入居時に気をつけることは以下の通りです。

(1)契約内容・特約を細かく確認する

「ペットによる損耗は全額借主負担」など包括的な条項がないかチェックしましょう。また、ペットに関する特約が具体的・合理的に定められているかも確認することが必要です。その際には、国土交通省「原状回復ガイドライン」との整合性を意識するようにしましょう。

(2)入居時の室内状況を記録する

入居時の壁紙の傷、床の汚れ、設備の状態を写真・動画で記録しておくとよいでしょう。この際、日付を入れておくのが望ましいといえます。これを、契約書の「物件状況チェックリスト」に反映させておけば、退去時に「この汚損は入居前からあった」と説明できる証拠になります。

(3)ペットによる損耗を防ぐ工夫をする

入居時に猫用の爪とぎ防止シート・マットを壁や柱に設置したり、トイレや給水場所を限定して床の汚れ・腐食を防ぐと有効です。定期的な清掃と消臭も行うようにしましょう。特に、ペットの臭いは残りやすく、原状回復費用の請求の原因になりやすいです。

退去時に気をつけるべきこととは?

---退去時に気をつけておくべきことはありますか?

退去時に気をつけることは、以下の通りです。

(1)事前のセルフクリーニング

ペットの毛や臭いは可能な限り除去することを心がけ、場合によっては、専用消臭スプレーやプロのハウスクリーニングも検討しましょう。

(2)退去立会いに同席する

担当者が指摘する損耗箇所をその場で確認しましょう。また、「ここは入居前からの傷です」など即時に説明できるよう証拠写真を持参することも必要です。後日、予想外の損耗を追加指摘されないよう記録を残しておくことも重要です。

(3)見積書・根拠資料の確認

施工範囲や単価が妥当かチェックし、「全面張り替え」が本当に必要か、部分補修で足りないかを判断しましょう。

知識と準備で不当請求を回避しよう

「ペット可」物件でも、通常想定される範囲を超える損耗は借主負担となる一方で、経年劣化や通常損耗、不当に高額な請求は拒否できるとのことです。

重要なのは、入居時から退去時まで一貫した準備と記録です。契約内容の確認、入居時の状況記録、日頃のメンテナンス、そして退去時の適切な対応が、不当な請求から身を守る最良の方法といえるでしょう。

もしも高額請求を受けた場合は、慌てずに内容を精査し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。ペットとの快適な賃貸生活のためにも、正しい知識を身につけておきたいですね。


記事監修:NTS総合弁護士法人札幌事務所 寺林智栄 弁護士

 

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2007年、弁護士登録(札幌弁護士会所属)。 2013年から2017年まで東京家庭裁判所家事調停官を務める。 離婚・相続などの家事事件、労働問題、一般民事事件、企業法務など、幅広い分野を担当している。