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「野球は敵国のスポーツだ」84年前夏、球児を襲った“残酷すぎる悲劇”…史上わずか3回の『甲子園が消えた日』

  • 2025.8.12
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

甲子園──それは多くの高校球児にとって、青春のすべてをかける舞台。真夏の太陽の下、白球を追いかける姿は、時代を超えて人々の胸を熱くしてきました。

しかし、この甲子園が、過去に3度だけ中止になったことをご存知でしょうか。

理由はいずれも、球児たちの努力とは無関係な、抗うことのできない出来事でした。

歴史に刻まれた3つの悲劇

甲子園の長い歴史において、球児たちの努力とは無関係な理由で大会が中止に追い込まれたことが3度ありました。

1918年の米騒動 ── シベリア出兵による物価急騰が引き金となり、全国で暴動が発生。社会不安の中で第4回大会は中止となりました。甲子園の公式記録では「米騒動で中止」と簡潔に記されています。
1941年の戦時統制 ── 戦時中、野球が「敵性スポーツ」とされ、出場校が決定していた第27回大会は「幻の甲子園」となります。その後4年間、甲子園は戦争のため中断。甲子園の公式記録では「文部省の通達で 地方大会中に中止」と記載されています。
2020年のコロナ禍 ── 新型コロナウイルス流行により第102回大会が中止。多くの球児が最後の夏を迎えることなく、グラウンドを去ることになりました。甲子園の公式記録では「新型コロナウイルス感染症の流行により中止」とされています。

これら3つの悲劇に共通するのは、球児個人の力ではどうすることもできない外的要因による中止だったということです。

迫りくる第4の危機

そして今、4度目の脅威が静かに甲子園を包囲しています。気象庁などの専門機関は、地球温暖化の進行によって、これまで稀だった記録的な猛暑が、より頻繁に、より強くなると指摘しています。個々の猛暑の要因は複雑ですが、温暖化がその発生確率を格段に高めていることは、科学的な共通認識となりつつあります。つまり、私たちが直面しているこの暑さは、単なる天候不順ではなく、気候変動という大きな問題の表れなのです。

高野連も手をこまねいているわけではありません。クーリングタイムの導入2部制試合の試験実施など、さまざまな対策を講じています。しかし、これらはあくまで応急処置に過ぎません。根本的な気温上昇が続く限り、いずれ甲子園の夏は物理的に不可能になる日が来るかもしれません。

未来の球児たちのために

この危機の根源にある地球温暖化は、一朝一夕に解決できる問題ではありません。しかし、だからこそ今すぐ行動を始める必要があります。

環境省などが公式に推進している温暖化対策には、私たちが日常生活で取り組めることが数多くあります。

  • 省エネルギーの実践: 使わない照明や電化製品の電源をこまめに消す、エアコンの設定温度を適切に管理する。
  • 移動手段の見直し: 近距離の移動は徒歩や自転車を利用し、公共交通機関を積極的に使う。
  • 食生活の工夫: 食べ残しを減らし、食品ロスを削減する。旬の食材や地元の産品を選ぶ「地産地消」も輸送エネルギーの削減に繋がります。
  • 賢い製品選択: 省エネ性能の高い家電や、環境に配慮して作られた製品(エコラベルなどが目印)を選ぶ。

これらは、特別な英雄的行為ではなく、一人ひとりの日々の選択です。しかし、その小さな意識の変化がやがて大きな潮流となります。

107年前の米騒動も、84年前の戦争も、私たちには変えられない過去です。しかし、気候変動は違います。これは現在進行形の課題であり、私たちの行動次第で未来を変えることができるのではないでしょうか。白球を追いかける青春が「幻」になる前に、私たち大人が行動する時が来ています。甲子園を守ることは、未来を守ることと同じなのです。


出典:

阪神甲子園球場 公式サイト「夏の選手権大会の歩み」

戦前・戦後篇 1943~1944年|綱島理友のユニフォーム物語|チーム情報|阪神タイガース 公式サイト

気象庁「地球温暖化の基礎知識」

国立環境研究所「温暖化で日本の猛暑日の年間日数が5倍以上に」

環境省「脱炭素ポータル」 

環境省「COOL CHOICE」