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43年前、日本中が恋をした究極の“かわいいだけじゃだめ” 最強チームが生んだ“王道アイドルの決定打”

  • 2025.8.1

「43年前の春、あの歌声にキュンとしたこと覚えてる?」

1982年。すでに“国民的アイドル”として圧倒的な人気を誇っていた松田聖子。彼女が、自身のポップアイドル像をさらに高精度で磨き上げたのが、9枚目のシングル『渚のバルコニー』(作詞:松本隆・作曲:呉田軽穂)だった。

かわいくて、はじけてて、ほんの少しだけ背伸びしてるような響き。

“アイドルソング”でありながら、音楽的にはとことん精巧に作り込まれている。それがこの曲の本質だった。

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(C)SANKEI

トップアイドルとしての“安定の全力”

『渚のバルコニー』がリリースされたのは1982年4月21日。前年までにすでに『青い珊瑚礁』『チェリーブラッサム』『白いパラソル』『風立ちぬ』など、誰もが口ずさめるヒットを連発していた松田聖子は、すでにアイドルの絶対王者だった。

そんなファンが望む“聖子ちゃん”像を、極限まで研ぎ澄ました一曲

アップテンポで、親しみやすくて、耳に残るメロディ。冒頭の歌いだしから一発で「これは聖子の曲だ」と分かる強さがあった。

歌声は明るく、ハリがあり、語尾まできっちりかわいい。彼女にしか出せない“正解の声”がここにある。

“赤いスイートピー”から続く、黄金のチーム

作詞は松本隆。作曲はユーミンこと松任谷由実の別名義・呉田軽穂。そして編曲はユーミンの夫でもある松任谷正隆。

この3人のチームは、前作『赤いスイートピー』で初めて結成され、大ヒットを記録。そこから約3か月後、同じメンバーが集結してつくられたのが『渚のバルコニー』だった。

この布陣が意味するのはただひとつ――「勝ちパターンは崩さない」。

松本隆が手がける言葉は、リズムと響きを意識しており、聖子の声質に完璧にマッチ。

呉田軽穂によるメロディは、日本のポップスの中に“洋楽的な空気感”をさりげなく持ち込んでいた。

そして松任谷正隆の編曲が、それをきっちりアイドルソングとして成立させる精度の高さ。

それぞれの個性がぶつかることなく、“松田聖子のための楽曲”として美しくまとまっている。まさに、最強チームが手堅く仕留めた、かわいさの完成形だった。

息をのむほど計算された“かわいさ”

『渚のバルコニー』は、歌詞も曲調も“かわいらしさ”全開。でもその裏側には、冷静に構築された“音の設計”があった。

例えば、語感の跳ね方。例えば、メロディの上下に合わせた言葉の配置。

「かわいいと思わせること」に対して、徹底的にロジカルだった。

そして何より、松田聖子自身の発声の正確さとテンション管理のうまさがそれを支えていた。

「甘く」「高く」「軽く」――この3つの要素を、ここまでバランスよく出せる歌手はそう多くない。それは松田聖子の歌唱力があってこそだろう。だからこそ、どんなに“アイドルっぽく”ても、曲としての説得力がちゃんとある。

今でも鳴り響く、“ポップスの正解”

今、『渚のバルコニー』を聴き直して驚くのは、その圧倒的な曲のクオリティの高さだ。

音の質感も、テンポ感も、言葉のリズムも、ちゃんと今に通じる。“アイドルソング”であると同時に、しっかりと作り込まれた音楽作品であること。

それが、この曲を単なる懐メロで終わらせない理由だ。

43年経っても、このかわいさは更新されない。

それが『渚のバルコニー』であり、松田聖子という存在の“完成された絶対的存在”なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。