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医師「大人も注意して」 『手足口病』に子供が感染したら→受診の目安とやってはいけない“NG行動”を医師が解説

  • 2025.7.18
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

夏に、子どもを中心に流行する手足口病。発疹や口内の痛みから「子どものもの」と思われがちですが、実は大人も感染しやすく、意外な落とし穴が潜んでいます。特に、お子さんが感染した場合、親がやりがちなNG行動が症状悪化や二次感染につながることも…。

この記事では、医師の視点を踏まえながら、手足口病が子どもに感染した際に避けるべき行動や、その理由についてわかりやすく解説します。家族みんなの健康を守るために、正しい知識を身につけましょう!

手足口病の基本と家庭内感染のリスクを知ろう

手足口病は、主に「コクサッキーウイルス」や「エンテロウイルス」というウイルスによって引き起こされ、1~5歳の子どもに多く見られます。感染すると、手や足、口の中などに小さな水疱や発疹が現れ、口の中が痛くなり食欲不振になることも発熱を伴うケースも少なくありません

また、大人も油断は禁物です。子どもが感染源となって家族内でうつるケースは決して珍しくなく、大人が感染すると症状が軽く済むこともあれば、逆に重症化することもあります。なかでも妊婦や免疫力が低下している人は注意が必要です。

感染経路は、患者の咳やくしゃみ、唾液、便、あるいは発疹部分の体液など接触感染が主です。家庭内で使うタオルや食器の共用は、ウイルスを広げる原因となるため絶対に避けなければなりません

手足口病になったら…NG行動とその理由

親としては「少しでも楽にしてあげたい」「症状を早く改善したい」という思いから、ついしてしまう行動があります。しかし、医師から見るとそれが状況を悪化させたり、大人や他の子どもたちに感染させるリスクを高めることも。以下に、特に注意したいNG行動を挙げてみました。

1. 発疹をむやみに触る・潰す

発疹を手や口で触ってしまうと、ウイルスが付着した手で物や人に触り、感染が広がります。また、発疹を無理に潰すと、その部分から二次感染を起こすリスクが増大。お子さんの痒みや痛みに対しては、保湿や医師の指示に基づく適切なケアを心がけましょう。

2. 食器やタオルの共用

家族でも食器やタオルを共有することは控えましょう。ウイルスは便や唾液にも存在するため、共用品を通じて家族内感染が非常に起こりやすくなります。使い捨てのペーパータオルや専用の食器を用意し、使ったあとは0.05%次亜塩素酸で消毒を徹底するのがポイントです。

3. 学校や保育園に通わせる

発症初期はウイルスの排出も活発なため、症状が落ち着くまで登園や登校を控えることが重要です。無理に通わせてしまうと、クラス内での集団感染を引き起こし、さらなる拡大を招きます。登園や登校は『解熱し普段どおり食事・活動ができる』『重症例や合併症がない』という2つを目安に主治医と相談すると良いでしょう。

4. 大人が感染予防を怠る

子どもだけが注意すればいいわけではありません。大人の手洗い徹底やマスクの着用、消毒は感染拡大防止の基本です。大人が感染すると仕事に支障が出るだけではなく、乳幼児や高齢者にうつすリスクも伴います。家庭内での対策を家族全員で共有しましょう。

感染後に知っておきたいこと

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

手足口病に感染した子どもは口内痛で飲食量が低下しやすいため、脱水のサインに注意が必要です。ケアには、以下のポイントも覚えておくと安心です。

  • 口内炎対策:食事は刺激物を避け、ゼリーなどやわらかく冷たいものがおすすめ。
  • 水分補給:口の痛みがあっても脱水にならないよう、こまめに水分を摂る。
  • 発疹の清潔保持:シャワーやぬるま湯で優しく洗い、清潔に保つ。

感染後は発熱や発疹が治まっても、2〜4週間は便からウイルスが排出されることもあるため、引き続き衛生管理には注意が必要です。定期的な手洗いや消毒を怠らず、広がりを防ぎましょう。

症状が重い場合や様子がいつもと違う場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と指導を受けることが大切です。ごく稀に髄膜炎や脳炎などの合併症が見られる場合があるため、特に長引く高熱、嘔吐、けいれん、意識変化には注意し、早期の受診を考慮しましょう。

また、特定の株が流行時に1ヶ月前後で爪がはがれる(爪甲脱落症) ことがありますが、自然に再生します。

次のような症状がある場合は受診を考慮しましょう。

  • 高熱(>38.5 ℃)が 48時間以上 続く
  • 水分が取れず尿量が半日以上ほとんどない
  • 嘔吐・頭痛・ぐったり・けいれん等の神経症状

家族みんなで取り組む感染予防

手足口病は身近な感染症でありながら、正しい知識がなければ思わぬところで感染が拡大してしまうことがあります。子どもが感染した際にありがちなNG行動は、家族全員がリスクを理解し、協力して予防やケアに努めることが最善の対策です。

また、重症化や周囲への波及を防ぐためにも、大人自身が感染予防を徹底する必要があります。季節の変わり目や流行時期には、手洗い・消毒・換気などの基本的な衛生管理を改めて見直し、必要な時は迷わず医療機関に相談しましょう。


監修者:林裕章(はやし・ひろあき)
林外科・内科クリニック(https://www.hayashi-cl.jp/)理事長

国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域を支えている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。
日本外科学会外科専門医、日本抗加齢医学会専門医