1. トップ
  2. 35年前、マクドナルド全店舗の5割に“異例のスピード導入”→現在では“当たり前になっている光景”とは

35年前、マクドナルド全店舗の5割に“異例のスピード導入”→現在では“当たり前になっている光景”とは

  • 2025.5.30
undefined
画像:TRILLニュース

1980年代後半、日本のファストフード業界に一つの革命が起きた。それが、「ドライブスルーの急拡大」だ。

今でこそ当たり前の光景となったが、当時としてはまだ珍しかった“車に乗ったまま注文・受け取りができる”この購入スタイルが、わずか数年でマクドナルドの全国店舗の約5割にまで一気に導入されたという事実は、当時の人々に少なからぬ衝撃を与えた。

車社会の進展がもたらした「新たな食の風景」

背景には、日本のモータリゼーションの進展があった。1970年代から自家用車の普及が本格化し、1980年代には家族でのドライブや週末の郊外型レジャーが一般的なものに。車に乗っている時間が増えれば、食事も車の中で済ませたい──そんなニーズが自然と高まっていた。

同時に、都市から郊外へと広がる生活圏、そして共働き家庭の増加による「時短志向」も後押しとなる。まさに、家族と車の関係性が変わる時代に、ドライブスルーはぴったりとハマったのだ。

マクドナルドが初めてドライブスルー店舗を出店したのは1977年のこと。東京・高井戸の店舗がその1号店とされる。そして決定的だったのが1980年代後半、郊外型店舗とセットでドライブスルー展開を本格化させたことだった。

創業者の藤田田氏のヨミと“月商9500万円”の衝撃

undefined
画像:TRILLニュース

この急拡大の裏には、創業者・藤田田氏の鋭い戦略眼があった。

彼は「車社会にこそチャンスがある」と確信し、テレビ電話のような注文システムを自ら開発・導入。江の島に設置されたドライブスルー店では、なんと1982年8月、月商9500万円という驚異的な売上を叩き出した。

当初は「車に乗ったまま買う」という行為自体に戸惑う人も多かったという。店員が出てこないことに困惑したり、受け渡し口で停車せずに通過してしまったりと、現代では考えられないような“初々しい混乱”も見られた。それでも口コミや利便性の高さから人気は右肩上がりとなり、導入店舗数は急増していく。

1990年末には、マクドナルド全国774店舗中344店舗がドライブスルーを併設。当時としては破格のスピード感だった。

“今では当たり前”になった購買スタイルの原点

ドライブスルーの存在は、今や当たり前になった。特にコロナ禍以降は非接触ニーズの高まりもあり、その価値が再評価された側面もある。

だが、35年前の日本では、それは“最先端の購買体験”だった。車社会と家族の変化を見抜き、独自の技術開発と大胆な出店戦略で拡大を仕掛けたマクドナルド。その一歩が、日本人の「ファストフードの買い方」そのものを変えていった。

“今じゃ当たり前”のあの光景は、そうした時代のうねりの中で、確かに始まっていた。