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32年前、日本中が胸を打たれた“好きと言わないラブソング” 200万枚超の共鳴で“心の奥”に届いた名曲

  • 2025.8.6

「1993年、どんな恋をしてた?」

思春期のように不安定で、どこか抑圧された空気が日本を包んでいたあの頃。景気は冷え込み、人々は言葉よりも“気配”に敏感だった。そんな時代に、一切の大げささを排した“静かなラブソング”が、まるで冷たい空気の中で深く息を吸い込むように――そっと胸に染み込んでいった。

『TRUE LOVE』(作詞・作曲:藤井フミヤ)――1993年11月10日リリース

藤井フミヤ、ソロとしての第一歩にして最大の衝撃。結果的に200万枚を超える売上を記録し、平成のラブソング史にその名を刻み込んだ“特別な1曲”だった。

 

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2010年の藤井フミヤ (C)SANKEI

チェッカーズのその先へ――“ひとり”で立つ決意

『TRUE LOVE』は、チェッカーズ解散後、藤井フミヤのソロデビューシングルとしてリリースされた。

どこまでも穏やかで、感情が溢れ出す旋律。アコースティックギターを基調にしたシンプルなアレンジ。技巧を誇らない藤井のヴォーカルは、どこか「抑えている感情」のリアルさを漂わせ、それがまた聴く者の心をざわつかせた。

何より驚くべきは、“チェッカーズ”というスーパースターグループのフロントマンだった男が、ここまで静かにシンプルなサウンドに身を任せたことだ。そこに、どこまでも深く静かな“覚悟”があった。

恋を鳴らすギター。佐橋佳幸という職人

そして何より特筆すべきは、アレンジを手がけた佐橋佳幸による、冒頭のギターの一音。

たった一発、静かに鳴らされるギターのストロークが空気を一変させる。まるで“これから大切な話をするから、耳を澄ませ”と告げるようなその一音は、イントロというより物語の序章だった。

佐橋佳幸は、小田和正『ラブ・ストーリーは突然に』(作詞・作曲:小田和正)でも、わずか数音で物語の扉を開く、あの伝説的なギターイントロを作り上げた。

トレンディドラマ全盛期、“主題歌至上主義”の頂点

この楽曲の背中を押したのは、ドラマ『あすなろ白書』(フジテレビ系)の主題歌という強烈なタイアップだった。

1993年10月期に放送されたこのドラマは、繊細で不器用な大学生たちの恋と友情を描き、最終回の視聴率は30%を超える爆発的ヒット。木村拓哉演じる取手くんの「俺じゃダメか?」は、今なお語り継がれる名シーンだ。もちろん主役は、石田ひかり演じる園田なるみと、筒井道隆が演じた掛居保の恋模様であることも忘れてはならない。

だが『TRUE LOVE』は、そうしたドラマチックな展開の“真ん中”に流れていたわけではないかもしれない。

むしろそれらの感情の起伏を、静かに受け止め、そっと余白をつくるような存在だった。感情の高まりそのものではなく、そのあとに残る“余韻”や“戸惑い”に寄り添う。だからこそ、ドラマが終わった後も、人々の心に残った。

物語の熱を冷ますのではなく、包み込むように沈めていく。そんな風に多くの人の心に染み込んでいったのだ。

“愛している”と言わないからこそ、伝わったもの

実は『TRUE LOVE』の歌詞には、タイトルに反して“好き”や“愛してる”といった、あからさまな言葉が出てこない。

語らずに伝える、黙って寄り添う――そんな“静けさの美学”こそが、日本人の感性と完璧に重なった。

“何も言わなくてもわかってほしい”という、平成の恋の空気感を、この曲は音にしてしまったのかもしれない。

歌手・藤井フミヤという“存在の証明”

『TRUE LOVE』以降、藤井フミヤは『Another Orion』(作詞:藤井フミヤ・作曲:増本直樹)など、静かで叙情的な楽曲を数多く世に送り出す。しかし、それでもなお、『TRUE LOVE』の衝撃は別格だ。

それは“グループの一員ではなく、個としての藤井フミヤ”が自ら紡ぎ出した、確かな存在の証明だったからだ。

チェッカーズ時代の華やかなポップセンスとも、アイドル的なパブリックイメージとも決別し、「ひとりの男が、ただひとつの愛を歌う」という原点に立ち返った

そう、それはあまりにまっすぐで、あまりにピュアで、あまりに胸に突き刺さった。

“恋愛”という感情の核を、そっと取り出した曲

32年経った今でも、ふと誰かを思い出したとき、あるいは過去の自分に戻りたくなったとき、この曲が脳内に流れる人は少なくないだろう。

それは、この曲が“かつての気持ち”にそっと触れてくれる一曲だからかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。