1. トップ
  2. 28年前、日本中が心奪われた“国民的アニメ映画” 興行収入201億円で社会現象化した“永遠の名作”

28年前、日本中が心奪われた“国民的アニメ映画” 興行収入201億円で社会現象化した“永遠の名作”

  • 2025.6.9

「28年前の今頃、どんな映画があなたの価値観を揺さぶった?」

1997年といえば、安室奈美恵やGLAYが音楽チャートを席巻し、ドラマ『踊る大捜査線』が社会現象に。ゲームはプレイステーションが大ブームとなり、街にはバブルのかすかな余韻と新世代の鼓動が混ざり合っていた。そんな時代の真ん中に、ただの“娯楽”にとどまらない、深く壮大なテーマを掲げたアニメ映画が登場する。

undefined
© 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

『もののけ姫』——1997年7月12日公開。

宮崎駿監督が命を削って作り上げたこの一作は、日本アニメ史における金字塔であり、今なお“考えさせられる映画”として語り継がれている。その力強さとメッセージ性に、日本中が心を奪われた。まさに“国民的アニメ映画”と呼ぶにふさわしい作品だった。

戦いと共存、そして“生きろ”というメッセージ

『もののけ姫』は、自然と人間との対立を軸に、少年アシタカと山犬に育てられた少女・サンの出会いと葛藤を描く壮大なファンタジー。森を侵す人間と、森を守ろうとする神々。誰が正義で誰が悪なのか、簡単には判断できないその構図が、観る者の心に深い問いを投げかける。

作品のキャッチコピー「生きろ。」に象徴されるように、この作品は“答えを出す映画”ではない。“それでも生きていかなければならない”という、苦しくも力強いメッセージが込められている。

なぜ『もののけ姫』は国民的作品となったのか?

まず驚くべきは、そのスケールの大きさと圧倒的な映像美。宮崎監督は構想16年、製作に3年をかけ、手描きアニメの限界を超えるクオリティで“動く自然”を表現した。

音楽もまた、久石譲による壮大なスコアが、世界観の説得力を底上げした。「アニメ=子どものもの」という概念を打ち破り、“誰にでも深く届くメッセージを持った作品”として老若男女に受け入れられた。さらに、戦いや破壊の描写にリアリティがありながらも、根底には“共存”という希望が描かれていたことが、多くの日本人の心に響いた。

この映画は、アニメ作品としては異例の規模とテーマで社会現象化し、“永遠の名作”として今も語り継がれている。

興行収入、歴代1位を記録——そしてジブリの分岐点へ

undefined
© 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

公開当時、『もののけ姫』は201億円という、当時、日本歴代興行収入第1位を記録。

この記録は後に『千と千尋の神隠し』に抜かれるまで長らく破られなかった。スタジオジブリにとってもこの作品はターニングポイントだった。

社会派メッセージを真正面から描いたことで、「ジブリは“優しいだけの世界”ではない」と証明し、その後の作品群にも大きな影響を与えていった。

28年経っても、答えの出ない問いに向き合い続ける

『もののけ姫』がいまも多くの人の心を掴んで離さないのは、描かれたテーマが時代を超えて普遍的だからだ。

自然破壊、共存、多様性、境界線——それは現代の私たちが直面している問題そのもの。映画は結論を提示しない。ただ、登場人物それぞれが悩み、ぶつかり、譲れないものを持ちながらも、共に“生きよう”とする姿を見せる。その姿は、28年経った今も、観る者に問いかけ続けている。

『もののけ姫』——それは、今も“人と自然の関係”を見つめ直させてくれる、祈りと叫びの物語。


※この記事は執筆時点の情報です。