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35年前、日本中が見守った“帰ってきた歌姫” 1年間の沈黙を破りオリコン1位に輝いた“伝説的な名曲”

  • 2025.6.3

「35年前の夏、あの人の歌声が戻ってきた日を覚えてる?」

1990年7月、中森明菜が1年ぶりに音楽シーンに戻ってきた。その復帰作となったのが『Dear Friend』。前年に起こった出来事で活動を休止していた明菜にとって、このシングルはまさに“再出発”の象徴だった。

明るく穏やかなメロディ、そして「生きる」ことへの前向きなメッセージ。

それまでの中森明菜のイメージとは少し異なる、柔らかで希望に満ちた一曲は、彼女の“生きようとする意思”そのものだった。

まるで心の奥に差し込む、午前中の光のように。静かに、でも確かに温かい。

悲しみを抱えたまま、微笑もうとする強さ

『Dear Friend』の歌詞には、大きな愛や未来への願いが込められている。

まるで“誰か”に向けた手紙のような歌詞は、当時の彼女自身の想いと重なり、聴く人の胸に深く染み入った。過去の痛みや孤独を否定せず、それでも一歩前に進もうとする姿勢。その佇まいに、多くの人が心を動かされた。

悲しみが消えるわけではないけれど、それでも人は優しくなれる──そんなメッセージが込められているように感じた。

あのとき、彼女の“声”を待っていたファンたちにとって、この曲は“贈り物”のようなものだったのだ。

それでも、中森明菜であることに変わりはなかった

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(C)SANKEI

明菜は変わらず中森明菜だった。儚くて、繊細で、でもどこまでも真っ直ぐで。

『スローモーション』や『DESIRE』といった華やかなヒット曲とは異なるベクトルで、『Dear Friend』は“歌姫・明菜”の新たな魅力を提示した。

リゾート地で撮影されたジャケットやMVも話題に。明るい陽射しの下で微笑む明菜の姿は、それまでのイメージを更新するようで、どこか見る人に“安堵”を与えた。

その笑顔が本物かどうかは、きっと誰にもわからない。だけど、そこに込められた覚悟とやさしさだけは、見る人の胸にまっすぐ届いた。

“再生”の象徴として、今も響き続ける歌

『Dear Friend』は、オリコン1位を記録し、復帰作としては大成功を収めた。だがこの曲が評価されているのは、その数字以上に、“再生の物語”を多くの人と分かち合ったからに他ならない。

あれから35年。

中森明菜という存在は、時に沈黙しながらも、多くの人の記憶の中で生き続けている。そして『Dear Friend』は、彼女の軌跡の中で、もっとも静かで、もっとも強い“希望の歌”として、今も聴かれ続けている。

それは、どんな時代にあっても、“誰かのことを想う気持ち”を優しく照らしてくれる一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報です。