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朝ドラ『あんぱん』“実はこっそりと変わっていた”OPの演出… 一方で見過ごせない“設定のノイズ”も話題に

  • 2025.5.30
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『あんぱん』第9週(C)NHK

朝ドラ『あんぱん』の9週目は、視聴者の心を大きく揺さぶる重要な転換点を迎えた。今田美桜が演じるヒロイン・のぶの結婚と、竹野内豊演じる柳井寛の急逝という重大な展開が描かれ、SNS上では多くの反響が寄せられている。

「寛先生ロス」物語に刻まれた竹野内豊の存在感

第41話で急逝した柳井寛(竹野内豊)の突然の退場は、視聴者に大きな衝撃を与えた。

これまで“名言製造機”として数々の言葉で嵩(北村匠海)を導いてきた寛。その深い人間性と慈愛に満ちた姿は、多くの視聴者の心を掴み続けてきた。だからこそ、寛の急死はまさに「寛先生ロス」と呼ばれ、多くの視聴者が悲嘆に暮れた。

さらに寛の死に目に間に合わなかった嵩の描写も切ない。嵩は常に一歩遅れてしまう人物であり、今回もその遅れが運命的な悲劇を生んだ。視聴者が彼の背負う悲しみを共有するなかで、嵩の今後への不安が増幅される。

史実と異なる「幼なじみ設定」への戸惑い

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『あんぱん』第9週(C)NHK

一方でヒロインのぶは、若松次郎(中島歩)と結婚を決断した。この結婚は視聴者にとって衝撃的であり、物語の大きな転機となった。のぶと次郎の微笑ましい夫婦関係が描かれるなか、オープニングでのぶの姓が朝田から若松に変わるという細かな演出もSNSで注目された。

しかし、この「幼なじみ設定」については疑問の声も多い。

史実ではのぶと嵩は幼なじみではなく、大人になって出会った関係だ。そのため、物語序盤から嵩がのぶに思いを寄せるというドラマ独自の設定に対し、史実と異なる設定を指して「ノイズになっている」という意見もSNSで散見される。

現在の夫である次郎の描き方が丁寧で優しいものであるため、今後嵩とのぶが再び結ばれる展開には不安や戸惑いを覚える視聴者もいるのではないだろうか。史実を元に秀逸な脚色を加え、新たな物語として昇華させる過程を期待していた立場にとっては、少々不安が募る展開になりつつある。

乾パンを巡る葛藤と家族の分裂

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『あんぱん』第9週(C)NHK

9週目では、戦争の影響がさらに鮮明に描かれる。のぶの実家「朝田パン」が軍から乾パンの製造を依頼されるが、パン職人の屋村(阿部サダヲ)が「嫌だ」とはっきり拒否したことで家族内で衝突が起きる。屋村の毅然とした態度は、戦時中という時代背景を考えると非常に勇気あるものである。

一方で、家族が屋村の意思を尊重して乾パン製造を断ったことに対し、「筋が通っていないのでは?」という疑問が視聴者からも出ている。だが同時に、このエピソードを通じて、戦争がいかに日常や家族を巻き込んで分裂させてしまうかがリアルに伝わり、SNS上では「巻き込まないでほしい」「戦争が家族をバラバラにする」といった切実な声もあがった。

9週目の副題「絶望の隣は希望」は、まさにこの週の核心を捉えている。寛の急逝、嵩の絶望、のぶの新たな人生。どれも視聴者に深い感情を与えるが、そのなかには必ず小さな希望があることをドラマは丁寧に示している。

また、ヤムおんちゃんの「未来人説」も引き続き話題だ。日本が戦争に負けるという未来を知っているかのような彼の言葉は、現代を生きる私たちに大きな示唆を与えている。

このように9週目の『あんぱん』は、絶望的な状況とそのなかに隠された小さな希望を描き出した、非常に印象深い週となった。登場人物たちの人生が大きく動き出す過程に置いて、今後どのような展開が待ち受けているのだろう。


NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_