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「1週間すら我慢できない」「待ち望んでました」“毎週木曜日”を楽しみにするファンが続出…!昭和初期が舞台【木10ドラマ】

  • 2025.5.15

ときめきに年齢は関係ない。そんな言葉を改めて噛みしめるようなドラマが、2025年春、静かに私たちの心を揺らしている。フジテレビ系 木10ドラマ『波うららかに、めおと日和』は昭和初期を舞台に描かれる、江端なつ美(芳根京子)と江端瀧昌(本田響矢)の新婚夫婦ラブコメディだ。毎週の放送を心待ちにしているファンたちから「こんな時代だからこそ、このテイストを待ち望んでました」と熱く支持されている。

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(C)SANKEI

“ときめき”の描写が、少女漫画黄金期の感覚を思い出させる

物語は、ときにぎこちなく、ときに不器用で、それでも真っ直ぐな“夫婦の歩み”を描いていく。結婚式には夫が不在、初夜の意味も知らない妻、口下手で無愛想な軍人夫。そんな“最悪のスタート”から始まるふたりの生活は、どこか絵空事のようでありながら、細やかな描写によって地に足のついたリアルな温度を宿している。

なぜこれほどまでに私たちは、このドラマに心を奪われるのだろう。答えはきっと、いくつもの要素の掛け算のなかにある。

30代〜40代の女性たちが幼い頃に夢中で読みふけった『ちゃお』や『なかよし』。そのなかには、目が合っただけで息が詰まるような瞬間や、指先がふれそうでふれない場面にキュンとする繊細なときめきがあった

『波うららかに、めおと日和』の魅力は、まさにその“ときめきの純度”の高さにある。瀧昌のちょっとした仕草、なつ美のふとした表情、何気ないやりとりのなかに生まれる静かな情動。たとえば、向かい合って食事をするだけの場面に、こんなにも心を奪われるとは、誰が想像しただろう。目まぐるしく変わる現代のドラマにはない、“余白”がそこにはある。

その余白を豊かに満たしているのが、芳根京子と本田響矢という二人の存在だ。感情を丁寧に織り上げるような芳根の演技と、自然体でありながら絶妙な間合いを持つ本田の佇まい。言葉少なでも確かに通じ合う“空気”が、画面越しにやさしく伝わってくる。

初恋のような瑞々しさは、大人になった私たちへのご褒美

恋をすると、どうしてこんなにも苦しくなるのか。ほんの少しの言葉が、しぐさが、心を満たしたりえぐったりするのか。その理由を、理屈ではなく感覚で知っていたのが、かつての“少女”だった私たちだ。

そしていま『波うららかに、めおと日和』は、大人になったその少女たちに向けて、やさしい応答をくれる。「あのとき信じていた“好き”という気持ちは、決して間違っていなかったよ」と。

この物語の恋愛模様には、子どもっぽさや大げさな情熱ではなく、大人だからこそ生まれる“慎ましさ”がある。なつ美の戸惑い、瀧昌の言葉にならない優しさ。結婚しているという事実がありながらも、ふたりは恋愛の入り口をようやく見つけたばかりのように、そっと手探りをしている。その過程がとにかく愛おしい。

視聴者は、恋に破れた経験も、誰かと距離を取ったことも、すべてを通り抜けたうえで、このドラマに“まだ何かが始まるかもしれない”と感じているのかもしれない。これは、人生の後半戦に差しかかる誰かへの、小さな恋のエールでもあるのだ。

ノスタルジックな世界観と“夢の続き”のような演出

ヒロイン・なつ美の装い、いきなり届く電報、夕暮れの街並み、手づくりのお弁当。これらのディテールの一つひとつが、どこか遠い昔に思い描いた“理想の世界”を思い起こさせる。

このドラマが放つレトロな空気は、昭和初期という時代設定だけでなく、少女漫画の“夢の世界”の延長線にも感じられる。現代ではなかなか出会えない“優しい空気”に身をゆだねていると、不思議と呼吸が深くなり、心の余裕を取り戻していくような感覚すらある。

「こんな恋がしたかったな」――そんな記憶の断片を優しく撫でるように、このドラマは過去の自分に語りかけてくるのだ。

『波うららかに、めおと日和』は、恋愛ドラマというよりも、“愛の初期衝動を思い出させてくれる物語”だ。観ているだけで、忘れていた何かが少しずつ蘇ってくる。人を好きになるときのとまどい、不器用だけれど真摯な気持ち、その全部を大切にしていたあの頃の自分。

SNSでは「最新話放送までの1週間すら我慢できない」「こんな時代だからこそ、このテイストを待ち望んでました」という声があとを絶たない。その気持ちはよくわかる。毎週木曜、放送が始まると、静かな波のように、心の奥にある“やさしさ”の感覚が広がっていく。

この穏やかで丁寧なドラマが、一人でも多くの“元・少女たち”に届いてくれることを、心から願っている。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_