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20年経った今でも刺さる“名曲”と“青春ドラマ”→国民的グループ活動休止の前に振り返る

  • 2025.5.20
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(C)SANKEI

嵐が、2026年春頃に開催するコンサートツアーをもって活動を終了することを発表した。誰もが知る「Love so sweet」や「Happiness」、デビュー曲の「A・RA・SHI」、後期では「カイト」など、数えきれない代表曲がある中で、筆者にとって思い出深い1曲が「a Day in Our Life」だ。

2002年にリリースされた嵐にとって7枚目のシングルで、まだ国民的アイドルの立ち位置を確立できていなかった頃に打ち出した攻めの一手。当時はRIP SLYMEやDragon Ash、KICK THE CAN CREWといったヒップホップ/ミクスチャーロックから大ヒット曲が多く生まれていた黎明期と言える時代で、そのブームに乗ったのがまさに「a Day in Our Life」だった。スケボーキング(作詞・作曲は「SHUN・SHUY」名義)が楽曲を手がけ、櫻井翔による通称“サクラップ”が炸裂している、今もなお色褪せない隠れた名曲だ。

『木更津』は一大ブームを巻き起こし、2度の映画化を果たした

そんな「a Day in Our Life」が主題歌となったドラマが、櫻井もキャストの一人として出演している『木更津キャッツアイ』。岡田准一が主演を務め、宮藤官九郎が脚本を担当した、2002年当時、一大ブームを巻き起こした作品。2003年に『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』、2006年には『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』として2度の映画化も果たしている。

ぶっさん(岡田准一)、バンビ(櫻井翔)、うっちー(岡田義徳)、マスター(佐藤隆太)、アニ(塚本高史)の5人による、野球チーム・木更津キャッツであり、怪盗団・木更津キャッツアイ。余命半年のぶっさんをメインにして、様々な事件が起きていくのが主な物語であり、「1回表」から「1回裏」へと伏線を回収(時に笑えるくらい無理やりに)していく構成、登場人物たちのドライブしていくセリフのスピード感、情報量は宮藤官九郎作品であり、平成の空気感をそのまま真空パックしている。

櫻井にとっては映画『ハチミツとクローバー』(2006年)やドラマ『謎解きはディナーのあとで』(2011年)、『家族ゲーム』(2013年)、『ネメシス』(2021年)、『大病院占拠』(2023年)をはじめとする『占拠シリーズ』など、主演作が多く存在するが、先述したようにまだ嵐が今ほどの圧倒的な知名度を獲得していない頃に櫻井が出演していたのが、『木更津』だった。

バンビは、大学生の童貞キャラ。バンビというあだ名も、まだ未経験の子鹿のバンビが由来にあり、モー子(酒井若菜)のことが好きというのも童貞キャラの印象を強めている。キャッツではピッチャーを務め、ミスター木更津に選ばれる第7話では“東京に侵され”そうになるモー子を救出し、晴れてモー子との交際がスタートした。

『木更津』はバンビが“子鹿”から“鹿”になる成長譚

『木更津』は、ぶっさんが主人公の物語であるのは間違いないが、今改めて見返してみるとバンビが“子鹿”から“鹿”になる成長譚でもあるように思える。そう感じるのは、『ワールドシリーズ』の特に物語前半はあの世へと旅立ったぶっさんの代わりに、バンビが主人公ポジションを張っているからだ。モー子にフラれはしたが、市役所勤めの公務員となったバンビは、本作のテーマでもある「普通」を手にした木更津キャッツアイ唯一の人物。演じている櫻井自身もドラマシリーズから『ワールドシリーズ』までの4年で演技、ビジュアルともに見違えるほど洗練されており、作風は全く違うものの『ハチミツとクローバー』が『ワールドシリーズ』と同年に公開されていることを考えると、『木更津』での経験は役者としての櫻井にとって大きな糧となっているのではないだろうか。

『THE3名様』で『木更津』メンバーが再集結

その証拠に、『木更津』での共演は今にもしっかりと繋がっている。2024年に公開された映画『THE3名様Ω~これってフツーに事件じゃね?!~』に、櫻井がサプライズ出演したのだ。『THE3名様』は佐藤隆太、岡田義徳、塚本高史が共演するショートコメディ。実写ドラマとして2005年にスタートした『THE3名様』に、櫻井が参加したことにより『木更津』メンバーの20年以上ぶりの共演が実現したのだ。さらに、ミー子として『木更津』に出演していた平岩紙も出演。朝ドラ『虎に翼』や『ホットスポット』など、現在は飛ぶ鳥を落とす勢いの平岩だが、当時はまだ無名と言える知名度であり、こうして『木更津』メンバーとして再集結できたのは嬉しいことだろう。

2024年放送の『櫻井・有吉THE夜会』では、ゲストに塚本が出演し、『木更津』のセリフを覚えているかの勝負を櫻井とするなど、今も伝説的ドラマとして語り継がれている『木更津』は櫻井にとっても大切な作品になっていることは言うまでもない。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。