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医師「命に関わる」→ “更年期の落ち込み”放置するととても危険だった…起こりうる“3つの重大リスク”とは?【医師が解説】

  • 2025.5.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「理由もなく涙が出る」「気分が落ち込んで何も手につかない」――
40代以降の女性に多くみられるこうした心の不調。それは“更年期うつ”かもしれません。

更年期とは、閉経をはさんだ前後10年ほどの時期を指し、女性ホルモンの急激な変化により心身にさまざまな不調が現れます。なかでも近年、特に注目されているのが“更年期うつ”と呼ばれる状態です。
これは単なる気分の落ち込みではなく、放置すれば生活に深刻な支障をきたすだけでなく、命に関わるリスクにまでつながる可能性があると、専門医も警鐘を鳴らしています。

本記事では、更年期うつの基本的な特徴と、見逃した場合に起こりうる「3つの重大なリスク」について解説します。

更年期うつとは?ホルモンと心の密接な関係

更年期に入ると、卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。
エストロゲンは、感情や自律神経の働きをサポートする役割もあるため、その変化によって脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)のバランスが乱れ、気分に大きく影響を与えることが知られています。

加えて、更年期には子どもの独立、親の介護、職場での責任増など、ライフイベントによる心理的ストレスも重なりやすく、精神的に不安定な状態が続きやすい時期です。

このような背景から、以下のような症状が出てきた場合は“更年期うつ”を疑う必要があります。

  • 何もする気が起きない
  • 食欲の低下または過食
  • 睡眠の質の低下、寝つきの悪さ
  • 漠然とした不安感や焦燥感
  • 身体の不調(動悸、だるさ、めまいなど)が続く

「更年期だから仕方ない」と思って放置してしまう人も少なくありませんが、見逃すことでさらなる悪循環に陥るリスクがあるのです。

更年期うつを放置すると起こりうる“3つの重大リスク”

更年期うつは放置すると、次のような深刻な問題を引き起こす恐れがあります。

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

■ リスク1:社会的孤立と生活機能の低下

うつ状態が続くと、仕事や家事、人付き合いが億劫になり、外出を控えるようになったり、連絡を絶つようになるケースもあります。
これが進むと、社会的孤立を招き、自分の存在価値を感じられなくなり、さらなる抑うつ状態に陥る悪循環へとつながります。

また、食事・掃除・入浴などの基本的な生活動作にも支障が出始め、健康状態そのものの悪化にもつながります。

■ リスク2:体調不良の悪化と慢性化

更年期うつは心だけでなく、体にもさまざまな不調をもたらすのが特徴です。
放置すると、動悸、息苦しさ、めまい、頭痛、吐き気、腹痛などの身体症状が慢性化し、原因不明の不定愁訴として苦しみ続けることになります。

これにより、通院が増える・検査が続く・薬が増えるなど、医療への依存や経済的負担も大きくなりかねません。

■ リスク3:慢性的な不調による自己肯定感の低下

更年期うつの状態が長く続くと、心身の不調が慢性化し、「できていたことができない」「なんとなく毎日がつらい」といった感覚が積み重なっていきます。
その結果、「自分はもうダメかもしれない」「何をやっても無駄」といった自己否定的な思考に陥りやすくなるのが大きなリスクです。

これにより、対人関係が消極的になったり、趣味や外出を避けるようになってしまい、社会とのつながりが希薄になって生活の充実感を失いやすくなります。

気分の落ち込みを放置することで、本来の自分らしさを見失ってしまうことこそが、更年期うつの見過ごせない問題のひとつと言えるでしょう。

更年期うつは「がまんしないこと」が何よりの予防策

更年期は心身ともに揺らぎやすい時期ですが、それは決して“弱さ”ではありません。
しかし、そこで間違った対処や我慢を続けてしまうと、回復までに時間がかかり、生活や健康全体に深刻な影響を及ぼすことになります。

大切なのは、「自分の変化に気づいてあげること」、そして「必要なサポートを受けること」です。

今日からできるチェックポイント:

  • 気分の落ち込みが2週間以上続いていないか
  • 何をしても楽しいと感じられない
  • 不眠や食欲不振が続いている
  • 家事や仕事に集中できない
  • 孤独感や絶望感を感じることが増えた

これらに複数当てはまる場合は、婦人科や心療内科に相談することが推奨されます。

更年期うつは、適切なケアを受ければ改善できる病気です。
自分の心と体の変化に寄り添い、無理をせず、がまんせず、早めのケアで心地よい毎日を取り戻しましょう。


監修者:浅草橋西口クリニックMo 頴川 博芸

静岡県沼津市出身。日本大学医学部中退、東海大学医学部卒業、順天堂大学大学院医学研究科修了。順天堂大学医学部附属静岡病院で初期臨床研修修了後、順天堂大学医学部附属順天堂医院、越谷市立病院、順天堂大学医学部附属練馬病院などを経て現在は浅草橋西口クリニックMo院長、順天堂大学医学部附属順天堂医院食道・胃外科非常勤助手。資格は日本専門医機構外科専門医、日本温泉気候物理医学会温泉療法医、日本医師会認定産業医など。趣味は旅行。