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医師「骨折や嘔吐の危険も」→“100日間続く咳”…過去5年で最悪の感染拡大 見逃しがちな“意外な症状”とは?

  • 2025.4.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

2025年4月現在、百日咳(ひゃくにちぜき)の感染が拡大しています。

東京都感染症情報センターによると、今年の患者数は過去5年間で最多で、特に注意が必要な状況です。百日咳は子どもの病気という印象が強いですが、実は大人も感染し、知らぬ間に周囲へ広げてしまうこともあるのです。今回は、百日咳の特徴や、実は難しくて悩ましい診断方法、予防法、治療についてご案内します。

百日咳とは?

百日咳は「ボルデテラ・パータシス菌(Bordetella pertussis)」によって引き起こされる感染症で、長く続く激しい咳が特徴です。

子どもに多い病気ではありますが,最近では大人の感染も増えています。日本では幼少期にワクチンを接種していることが大多数ですが、その効果は年数とともに下がっていき免疫が落ちると成人でも簡単に感染します。

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大人に見られる症状と影響

子どもの百日咳では「ヒュー」という独特の呼吸音が有名ですが、大人の場合はその症状がはっきりしないため、風邪や気管支炎と間違われやすいのが特徴です。

咳は痰をともなわず、夜間に悪化しやすく、睡眠の邪魔になったり、胸の痛みの原因や疲労感につながったりすることもあります。咳って結構日常生活への負担が大きく、仕事や家事がはかどらないという方も少なくありません。

  • 痰のない咳が長引く
  • 夜間に悪化しやすく、睡眠を妨げる
  • 胸の痛みや強い疲労感を伴うことも
  • 家事や仕事に支障が出る
  • 周囲にうつしてしまう可能性も

百日咳の進行と診断の難しさ

症状の進行

  1. カタル期(1〜2週間):軽い咳、鼻水、微熱
  2. 痙咳期(2〜4週間):連続的で激しい咳
  3. 回復期(1〜2か月):徐々に咳が軽減するが続く

診断方法

  • 問診、聴診
  • PCR検査(鼻ぬぐい液)
  • 血液検査(抗体価の測定)
  • 必要に応じて、X線やCTで他疾患の除外も行います

問診や聴診のほか、鼻から綿棒をいれて鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査をしたり、血液検査による百日咳の抗体価の測定を行うこともあります。症状が強い場合には、胸部X線や胸部CTで他疾患がないかの確認作用も要することがあります。

でもこの診断、言うほど簡単じゃないんです。

主な検査法とその課題

しかし、百日咳は診断をつけて有効な治療にむすびつけるのはそんなに簡単ではないのです。せっかく診断をつけても、そのころにはもう治療のタイミングを逃しているなんてことも。

原因となる百日咳菌を見つけるためには主に3つの検査法があります。

① 菌の培養検査
菌を鼻や喉から採取し、培地で育てる方法。確定診断につながるが、成功率は低く、時間がかかる

② 遺伝子検査(LAMP法など
菌のDNAを検出。最も信頼性が高く、早く結果が出るが、発症後3週間以内の検査が望ましい。

③ 血液検査(抗体測定)
百日咳毒素(PT)に対するIgG抗体を測定。発症2週間以上後に有効だが、乳児や接種直後の人には不向き

百日咳に効く抗菌薬(マクロライド系)は、初期の段階(カタル期)に投与しないと効果が薄く,咳が激しくなってからでは、菌を殺しても症状は残ることが多いのです。

つまり、咳でこまってようやく病院を受診し、その後ようやく確定診断がついたころにはすでに抗菌薬の治療が有効な時期は過ぎている・・・これが百日咳診療におけるジレンマなのです。

治療とセルフケア

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

百日咳診療においては、マクロライド系抗菌薬が治療の第一選択です。特に初期の段階で服用すると感染拡大の予防につながります。

ただし、咳発作初期以降は抗菌薬が必ずしも有効ではなく、咳が長引くことが多いです。

治療薬

  • マクロライド系抗菌薬が第一選択
  • 特に初期(カタル期)に有効。しかし受診時には多くが発作期に入っており、薬の効果が限定的になることも

セルフケア

  • 室内の加湿・換気を心がける
  • 咳がつらいときは上体を起こして就寝
  • 水分補給をこまめに
  • マスク・手洗いで感染拡大を防止

セルフケアは地道ですが、症状がつらい時の助けになったり、ほかの人へうつさない大事な工夫になります。

合併症と注意点

百日咳が悪化すると、強い咳で肋骨が折れてしまったり、肋骨周囲の胸膜が痛み、咳をするたび、深呼吸をするたびに胸が痛んだりする方がいます。ひどくむせ返ると戻してしまうことや、激しい目の充血を起こすことも。

家庭内では幼児や高齢者への感染を防ぐための注意が必要です。

・強い咳によって肋骨骨折や胸膜痛が起こる場合も
嘔吐や目の充血を引き起こすこともある
・家庭内では高齢者や乳幼児への感染に特に注意が必要

予防法とワクチンの再確認

DPTワクチンは子どもだけでなく、大人にも有効です。
医療従事者、育児中の方、妊娠を考えている方は、追加接種を検討することが推奨されます

まとめ

百日咳は子どもだけの病気ではありません。
大人もかかり、日常生活に大きな支障をもたらす可能性があります。

・早期の受診
・周囲への感染防止
・予防接種の見直し

この3つが、感染の広がりを食い止める鍵となります。


監修者:医療法人社団博雅会 草ヶ谷医院 院長 草ヶ谷英樹
総合内科・呼吸器内科・アレルギーの専門医。長引く咳・喘息・肺気腫・睡眠時無呼吸症候群・アレルギーなど、専門的な診療を提供すべく日々奮闘しています。「静岡の呼吸器なら草ヶ谷医院」と呼ばれるよう、医療の質はもちろん、スタッフの接遇やおもてなしの向上にも意識して取り組んでいます。スタッフが心身ともに充実し、満たされた気持ちで働ける環境を目指し、定期的な勉強会や講習会を実施し、院内外の活動への参加も支援しています。