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『雨の日に頭痛がする…』一体ナゼ?!→実は“ただの偏頭痛”じゃなかった…知られざる“意外な原因”とは?【医師が解説】

  • 2025.5.9
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「雨の日になると頭痛がする」「季節の変わり目に体調が悪くなる」そんな経験を持つ人は少なくありません。近年では、こうした“天気によって体調が左右される症状”を「気象病」として捉える動きが広がっています。日本は季節や天候の変化が激しく、低気圧・高湿度・寒暖差などの影響で体調を崩す人が年々増加しています。

とくに放置すると症状が慢性化したり、生活の質(QOL)を著しく下げるリスクもあるため、正しい理解と対処が必要です。
この記事では、気象病のメカニズムと代表的な症状、そして日常でできる予防・改善法について解説します。

気象病とは?「天気」と「自律神経」が深く関係している

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

気象病とは、気圧や気温、湿度などの変化によって起こる体調不良の総称です。

正式な病名ではなく、あくまで症状の傾向を示す言葉ですが、医学的にも研究が進んでおり、主な原因は自律神経の乱れと考えられています。
最近は特に気圧の変化がトリガーとなるケースが多いことが指摘されており、気象病の重要なメカニズムのひとつとして、内耳が気圧の変化を感知し、中枢神経系に影響を及ぼすプロセスが注目されています。気圧が下がると前庭神経系の神経活動が亢進し、これが視床下部や脳幹を介して自律神経系のバランスを崩し、頭痛やめまい、不定愁訴を引き起こすとされています。

この影響で、以下のようなさまざまな症状が現れます

  • 頭痛・めまい・肩こり・関節痛
  • 耳の詰まり感・吐き気・倦怠感
  • 古傷の痛み・気分の落ち込み
  • 気管支炎・ぜんそくの悪化

特に天気が崩れる前(気圧が下がり始めるタイミング)に症状が出やすいことが多く、患者の中には天気予報よりも正確に“雨の前触れ”を体で感じ取れるという人もいます。
女性や冷え性、低血圧体質の人に多く見られ、更年期やストレスによって悪化しやすいとも言われています。また、片頭痛や肩こり、慢性的な腰痛のある方、精神疾患の既往がある方、不安傾向が強い方も、気象病を発症しやすい特徴とされています。

“放っておくと慢性化”のリスクも?気象病への正しい対処法

気象病のやっかいな点は、「体調不良なのに検査では異常が出ない」ことが多いことです。
そのため、「気のせい」「甘え」と誤解されやすく、正しく対処しないまま慢性化してしまうケースもあります。
しかし、気象病の多くは生活習慣やセルフケアで軽減できるとされています。以下に、医療や気象の専門家が勧める対策を紹介します。

①耳のマッサージで内耳の圧力センサーを整える
気圧の変化を感じ取っているのは、実は“耳”の奥にある内耳です。この内耳が敏感になることで自律神経が過剰に反応してしまいます。耳のまわりをやさしくマッサージしたり、耳を軽く引っ張るように動かすことで、内耳の働きを穏やかにする効果があるとされています。

②気圧変化アプリで“予兆”を可視化
近年はスマートフォンアプリで「気圧変化」を事前に把握できるツールが登場しています。体調が悪化しやすいタイミングを予測できれば、早めに薬を飲んだり、無理をしないよう予定を調整するなど、備えることが可能です。

③自律神経を整える生活習慣を意識
自律神経は昼夜のリズム・食事・運動・睡眠の影響を大きく受けます。以下のような行動が、気象病の予防に有効とされています:

  • 朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる
  • 夜更かしを避け、毎日決まった時間に寝る
  • 適度な運動(散歩・ストレッチ・深呼吸)で血流を促進
  • カフェイン・アルコールを控え、バランスの良い食事を摂る

特に気温差の激しい季節や梅雨前後は要注意。普段から自律神経を乱さない生活を心がけることが、体調維持のカギとなります。

“天気のせい”と軽く見ず、体の声に耳を傾けよう

気象病は、「雨の日は体調が悪い気がする…」という“なんとなく”を、科学的に裏付ける概念として近年注目を集めています。
「気のせい」ではなく、実際に心身にさまざまな変化が起こり、それが複雑に絡み合うことで生じる現象であることがわかりつつあります。正しい知識を持って備えれば、毎日の変化に振り回されずに過ごすことができます。

症状が軽いうちは「気のせい」と済ませてしまいがちですが、放置すれば仕事や日常生活に支障をきたすほどの不調が慢性化する可能性も。
“なんだか不調”の裏にあるのは、天気だけでなく、生活習慣の乱れやストレスが引き金になっていることも多いのです。

繰り返される不調を防ぐには、「体調を崩す前に予防する」視点が大切です。
気圧や天候に合わせて、自分の心と体を労わる行動を取り入れることが、気象病を上手に乗り越える鍵になるでしょう。


監修者:松澤 美愛(神谷町カリスメンタルクリニック院長 / Instagram

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。

精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会