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33年前、恋愛ドラマの定番を覆した“月9の傑作” 女性の友情を主役にした“異色の名作”の衝撃

  • 2025.4.25
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(C)SANKEI

1992年、2人の女性の友情が月曜夜に彩りを添えた

「33年前の春、どんなドラマに夢中だったか覚えてる?」

1992年といえば、テレビドラマでは『愛という名のもとに』『ずっとあなたが好きだった』など、ヒューマンストーリーや恋愛ドラマが人気を集めていた時代。そんな時代に、“恋愛”ではなく“友情”に焦点を当てた異色の月9ドラマが放送され、大きな話題を呼ぶ。

それが――『素顔のままで』。

1992年4月13日、フジテレビ月曜9時枠で放送スタート。主演は中森明菜と安田成美、脚本は北川悦吏子。2人の女性の人生と友情をリアルに描いた作品は、今も“月9らしくない月9”として語り継がれている。

“恋愛じゃない月9”が視聴者の共感をつかんだ理由

『素顔のままで』が放送された当時、月9枠といえば“都会的な恋愛ドラマ”が定番だった。しかし本作は、図書館司書として生きる女性・香坂優美子(安田成美)と、ミュージカルスター志望の女性・月島カンナ(中森明菜)が偶然出会い、ひとつ屋根の下で暮らしながら、互いに影響を与え合っていく“女性同士の友情と成長”を描いたドラマだった。

日々の不安、夢と現実のギャップ、人間関係のもどかしさ。派手な展開はないものの、だからこそ「ああ、わかる」と思わせるセリフや感情のやりとりが丁寧に描かれていた。

「恋愛だけが人生じゃない」そんなテーマが、特に働く女性たちや20代・30代の視聴者に深く刺さったのである。

なぜ『素顔のままで』は特別な“友情ドラマ”になったのか?

最大の要因は、主演2人の“素”が滲み出るような自然体の演技にある。

当時の中森明菜といえば、トップアイドルとして長年活躍してきた“カリスマ”のような存在。一方で安田成美は、清楚で穏やかな空気感を持つ“等身大の女性像”の代表格。そんな2人が織りなす関係性には、作りものではない“リアルな距離感”があった。

嫉妬やすれ違いもあれば、支え合いや癒しもある。演出も過度にならず、内館牧子の脚本が描く台詞の一つ一つがリアルで、視聴者にとって「これは自分たちの話だ」と感じさせてくれる力があった。

主題歌『君がいるだけで』がドラマを“記憶”に変えた

『素顔のままで』といえば、もうひとつ忘れられないのが主題歌――米米CLUB『君がいるだけで』

この曲はドラマとともに大ヒットを記録し、1992年の年間シングル売上1位に。柔らかく包み込むようなメロディと、「君がいるだけで 心が強くなれること」という歌詞が、ドラマの内容と驚くほどリンクしていた。

友情も、夢も、恋も、誰かの“存在”があって初めて前に進める――そんなメッセージが、視聴者の心に優しく残り続けた。

33年経った今も、“肩を並べて歩く関係”を描いた名作として残る

2025年の今、“女性の友情”はより多様に、自由に描かれるようになった。それでも『素顔のままで』が今もなお記憶に残るのは、“競い合う”でも“依存する”でもない、“対等で心地よい関係性”を描いた作品だったから

恋愛だけじゃない、夢を諦めない、でも無理をしない。そんな2人の姿は、今を生きる私たちにとっても、等身大の理想像かもしれない。

『素顔のままで』――それは、33年前の春、私たちに“誰かと一緒に歩く心強さ”をそっと教えてくれたドラマである。


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