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37年前、日本中が心を奪われた“国民的アニメ” 時代も世代も越えて愛され続ける…永遠の名作とは?

  • 2025.4.9
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(C)SANKEI

1988年、子どもも大人も“トトロ”に心をつかまれた

「37年前の今頃、どんな映画が心を癒していたか覚えてる?」

1988年といえば、音楽では中山美穂やプリンセス プリンセスがヒットし、ゲームはファミコンブームの真っ只中。街にはバブル景気の勢いが漂い、活気と喧騒が混ざり合っていた時代だった。

そんな中で、静かに、しかし深く日本人の心に根を下ろした一本のアニメ映画がある。

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© 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

『となりのトトロ』1988年4月16日公開。映画『火垂るの墓』との同時上映で登場したこの作品は、公開当初は必ずしも大ヒットとは言えなかった
しかしテレビ放送やビデオ化を経てじわじわと人気を伸ばし、今では“国民的アニメ”と称されるまでになった。その魅力と、時代を超えて愛される理由を振り返ってみよう。

“何も起こらない”のに、心に残る物語

この作品には、明確な“悪役”も“対立”も存在しない。
大事件も、劇的な展開もない。

でも、田舎の風景、木々の音、井戸水の冷たさ、縁側で食べるお弁当、そして時折ふわりと現れる不思議な存在——
その一つひとつが、まるで“自分の記憶のどこかにあった懐かしさ”として胸に残る。

当時のアニメ映画は、戦いや冒険を中心とするものが多かった中で、この作品は“子どもたちの日常と心の揺れ”に焦点を当てた、極めて異色の存在だった。

“あの生き物”は何だったのか?

ふわふわと大きく、目を丸くして笑う不思議な存在。
でもそれが何なのか、はっきりとは描かれない。

だからこそ、観る人によって意味を変える。
子どもにとっては“冒険の友だち”、大人にとっては“見えなくなった心の居場所”。

現実と幻想の境界が曖昧になるシーンにこそ、“信じる心こそが奇跡を起こす”というメッセージが込められているようにも見える。

宮崎駿監督は、子どもの感性を重視した作風で知られ、その感性がそのまま作品の空気感に表れている。

“家族”と“風景”が紡ぐ、日本の原風景

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© 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

この作品が今なお色褪せない理由のひとつは、描かれる風景の美しさとリアルさにある。

昭和30年代前半とされる日本の田舎(※20年代後半ともいわれる)。
木造の家、畑、小川、神社、バス停——
CGではなく、すべて手描きで丁寧に描かれた背景は、どのカットにも“懐かしさ”と“優しさ”が漂っている。

そしてもうひとつ大切なのが、家族の存在。
病気で入院している母を待ちながら、姉妹が懸命に日々を生きる姿。
子ども同士のケンカや、時には我慢しきれずに泣き出す場面も、すべてが自然で、本当にそこに暮らしているかのようなリアルさをもって描かれる。

物語を支えるのは“事件”ではなく、人と人との優しさと繋がり。
だからこそ、何十年経っても色褪せず、何度観ても心が癒されるのだ。

“あの頃の自分”にそっと会える映画

この作品は、ただのファンタジーアニメではない。
それは、子ども時代の記憶、失ってしまった感覚、そして大人になった今こそ思い出すべき“心の居場所”を描いた作品だ。

「あなたのとなりにも、あの生き物はいるかもしれない」
そんなメッセージが、いつでもそっと寄り添ってくれる。

37年経った今も、この作品は、私たちにとって“忘れたくない何か”を思い出させてくれる、永遠の一本だ。


※この記事は執筆時点の情報です。