一見ややこしく見える計算でも、式の特徴を的確にとらえ、ひと工夫すれば、すらすらと答えが出てくることがあります。
さて、今回の問題にはどんな特徴があるでしょうか。考えながら、暗算してみてください。
問題
次の計算を暗算でしなさい。
−11−(−11)÷(−11)×(−11)
※制限時間は10秒です。
解答
正解は、「0」です。
どのように計算すれば、10秒で答えが出るのでしょうか。
次の「ポイント」で、確認してみましょう。
ポイント
この問題のポイントは、「同じ数を使った計算であること」です。
式の中に登場するのは、すべて「−11」という同じ数です。このような形をしている式は、工夫次第で「極力計算しないで答えを出せる」可能性が高くなります。
では、具体的にどのような工夫をすればよいかを見ていきましょう。
まず、この問題で最初に計算すべきは「(−11)÷(−11)」の割り算である点に注目してください。なぜなら、割り算・掛け算は足し算・引き算よりも先に計算するというルールがあるからです。
<計算順序のルール>
次の順序で計算します。
1.( )の中
2.掛け算・割り算
3.足し算・引き算
※同じ優先順序の計算がある場合は、左から優先して計算します。
今回の式に( )の計算は含まれていませんので、掛け算と割り算のうち、より左にある割り算から先に計算をします。
−11−(−11)÷(−11)×(−11)
ここで、「同じ数どうしの割り算の答えは1になる」ことを思い出してください。例えば「3÷3」が1であることは、すぐに分かると思います。数が負の数になったとしても同じことがいえます。
よって、「(−11)÷(−11)」の答えも1になります。
−11−(−11)÷(−11)×(−11)
=−11−1×(−11)
次に計算するのは「1×(−11)」の掛け算です。
1の掛け算の答えは、掛けた数そのものになります(1×◎=◎)。
1と掛けた数が負の数であっても同じことが言えますから、計算は次のようになります。
−11−1×(−11)
=−11−(−11)
最後に、残った引き算をしましょう。
負の数の引き算というと「ルールを覚えていない!」と思ってしまうかもしれませんが、これは「同じ数から同じ数を引く引き算」です。
つまり、「1−1」や「100−100」と同じです。
こう考えれば、答えが0になると分かりますよね。
−11−(−11)
=0
これで正解にたどり着きました。
【補足】負の数の計算ルール
ここで、負の数の計算ルールについても軽く復習しておきましょう。
負の数を含んだ掛け算や割り算では、次のように答えの符号を決めます。
<答えの符号の決め方(掛け算・割り算編)>
・同符号どうしの掛け算・割り算の答え→正の数(+)になる
例:−1×(−1)=+1 −1÷(−1)=+1
・異符号どうしの掛け算・割り算の答え→負の数(−)になる
例:1×(−1)=−1 −1÷(+1)=−1
また、負の数の足し算は正の数の引き算に、負の数の引き算は正の数の足し算に変換できます。
+(−■)=−■
−(−■)=+■
これを踏まえて今回の問題を計算すると、次のようになります。
−11−(−11)÷(−11)×(−11) ←同符号どうしの割り算なので、答えは正の数
=−11−1×(−11) ←異符号どうしの掛け算なので、答えは負の数
=−11−(−11) ←負の数の引き算なので、正の数の足し算に変換
=−11+11
=0
答えは先の説明と同じく0になりました。
まとめ
今回は、同じ数が使われているという特徴に注目することで、計算が簡単になる問題でした。
解説では、次の三つのポイントを利用して計算を行いました。
・同じ数どうしの割り算の答えは1になる
・1の掛け算の答えは1と掛けた数と同じ数になる
・同じ数から同じ数を引く引き算の答えは0
これらは、正の数の計算問題ならすぐに思いつく内容だったかもしれません。負の数の演算でも、同じように三つのポイントを利用できますので、ぜひ使いこなしてくださいね。
※当メディアでご紹介する数学関連記事においては、複数の解法をもつものもございます。 あくまでも一例のご紹介に留まることを、ご了承ください。
文(編集):VY
数学とIT技術学習が趣味のWebライター。実用数学技能検定2級と数学教員免許を取得後、家庭教師や学習支援スタッフとして数学指導を行ってきた。文系と理系の別、年齢にとらわれない、誰でも楽しめる数学解説作成を目指している。
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