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「朝起きられない…」→ 実は放置すると危険?! 2月に現れる“隠れた病気のサイン”とは?【専門医が解説】

  • 2025.2.10
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

1年で最も寒い2月、体調やメンタルが優れない方も多いのではないでしょうか。もしそれが「冬季うつ」かもしれないと感じた場合、特にお子様が学校に行きたがらなくなったり、家で過ごす時間が増えたりする冬の時期は、心配が募るかもしれません。今回は、お子様の不登校と「冬季うつ(季節性感情障害)」の関係について、専門医に詳しく解説してもらいました。

冬に現れる心の不調、「冬季うつ」とは?

「冬季うつ」は、正式には「季節性感情障害(SAD)」と呼ばれ、日照時間が短くなる秋や冬に、うつ症状が現れます。そして春や夏に回復することが特徴です。
※ここでは、「冬季うつ」という言葉に統一して説明します。

冬季うつの主な症状として、以下のものが挙げられます。

  • 過眠:普段より長く寝てしまい、朝起きるのがつらい。
  • 過食:特に甘いものや炭水化物が無性に食べたくなる。
  • 倦怠感:体がだるく、疲れやすい。
  • 気分の落ち込み:何をするにも億劫で、気分が晴れない。
  • 集中力の低下:物事に集中するのが難しくなる。
  • 不安感:漠然とした不安を感じる。

これらの症状は「冬のせいかもしれない」と見過ごしがちですが、もし日常生活に支障が出るほど重くなった場合は、冬季うつの可能性を考慮する必要があります。

冬に心の不調が現れる“意外な理由”とは…?

冬季うつの原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が影響していると考えられています。

  1. 日照時間の減少:太陽光を浴びる時間が短くなると、脳内で気分を安定させるセロトニンの分泌が減少し、気分が落ち込みやすくなります。
  2. 概日リズムの乱れ:体内時計は光によって調整されていますが、冬は日照時間が短いため、体内時計が乱れやすく、睡眠の質や気分に影響を与えることがあります。

これらの要因が複雑に絡み合って、冬季うつを引き起こしている可能性があるのです。

また、冬季うつは大人だけでなく、お子様にも起こる可能性があります。特に思春期のお子様はホルモンバランスが不安定なため、影響を受けやすいことがあります。

医師コメント
大人のように「眠れない」「食欲がない」といった典型的な症状だけでなく、「イライラしやすい」「学校に行きたがらない」「集中できない」といった、一見、病気とは気づきにくいサインで現れることがあります。
また、学校の成績が下がったり、友達とうまく遊べなくなったりなど学校生活や交友面で影響が出ることもあります。

不登校の原因は様々ですが、冬季うつもその一因となり得ます。気分が落ち込んだり、体がだるくなったりすると、学校に行くのが億劫になることも。また、過眠の症状があると、朝起きられずに学校に遅刻したり休んだりすることもあります。

冬季うつの症状は、発達障害や他の精神的な問題と重なる場合もあるので、お子様の不登校の背景には、他の要因も考慮する必要があります。

医師コメント
まず、過眠過食倦怠感、集中力の低下などはADHDなどの発達障害でもみられる症状です。他にも症状が似ている心の病気があるため、本当に冬季うつかどうか見分ける必要があります。ですので本当に冬季うつかどうか判断するためには「冬季になって症状が出現した、または悪化したのか」「どのような症状がいつ出現したのか」などの情報を受診時に紙などに書いてきてもらえると助かります。

「もしかして?」と思ったら…

お子様に以下のようなサインが見られた場合、冬季うつの可能性を考慮してみましょう。

  • 冬になると急に学校に行きたがらない。
  • 家で過ごす時間が長く、スマホやゲームばかりしている。
  • 朝、起きるのがつらい。
  • 食欲が増える、または食べなくなる。
  • イライラしている、または落ち込んでいるように見える。
  • 以前より元気がない。
  • 甘いものを食べたがる。

もしこれらのサインに気づいた場合、まずはお子様に優しく耳を傾け、「どうして学校に行きたくないの?」と問い詰めず、まずは「少し話してみようか?」と優しく声をかけてみてください。

  • 目線を合わせて話す。
  • 優しい言葉をかける。
  • お子様のペースに合わせてゆっくりと話す。
  • 否定せずに共感する。
医師アドバイス
冬季うつと、他の心の病気は、症状が似ているため、見分けるのが難しいことがあります。基本的にはご家族が「この病気に違いない」と断定するよりは「こういった症状があって学校に行けず困っている」と具体的な症状となぜ困っているかを明確にして医師に相談していただけると、診断や治療方針を定めやすくなります。

冬季うつを改善!主な治療法には何がある?

冬季うつにはいくつかの治療法があります。

光療法:高照度の光を毎日浴びることで、体内時計を整え、セロトニンの分泌を促進します。光療法専用の機器がオンラインで購入できますが、目の疲れや頭痛を感じることもあります。
ビタミンD補給:ビタミンDは脳の働きに重要で、不足すると心のバランスが崩れることがあります。魚やキノコ、卵に多く含まれ、サプリメントを使う場合は医師に相談しましょう。
生活習慣の改善
朝日を浴びる時間を増やす。
規則正しい生活を心がけ、バランスの取れた食事を提供する。
軽い運動を心がけ、散歩など体を動かす活動を取り入れましょう。

これらを実践しても効果が得られない場合や症状が重い場合、薬物療法(抗うつ薬など)を検討することがあります。薬物療法は医師の指示に従って行ってください。

医師コメント
光療法では、特別な光を毎日30分~2時間浴びることで、脳内の物質(セロトニンやメラトニン)のバランスを整え、体内時計のリズムを改善する効果が期待できます。研究では、大人の冬季うつには、一定の効果があるとされています。子どもへの効果も期待されていますが、まだ十分な研究結果はありません。

“冬季うつ”の症状について特徴をおさらい!

冬季うつは、毎年秋から冬にかけて症状が現れ、春や夏に自然と改善する「季節性」が特徴のうつ病の一種です。主な症状として、過眠や過食、特に炭水化物を過剰に摂取したくなる傾向が見られます。

うつ病は通常、症状が2週間以上続き、日常生活に支障をきたす場合に診断されますが、冬季うつは暖かくなると回復しやすいのが特徴です。また、ADHDとの違いとして、ADHDは症状が長期的に持続する点が挙げられますが、両者が合併するケースもあります。

冬季うつは不登校とも関連する可能性があるため、もしお子様が心の不調を感じている場合、精神科医や小児科医などの専門家に相談することが重要です。また、不登校の背後には他の問題が隠れていることもあるため、広い視点で対応することが大切です。


共同執筆者:島田直英(精神科医、総合診療医)、院長 飯島慶郎(精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士)

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