「なぜ酷評されているのか」「普通に良い話なのに」息子が父に捧げた最高の“親孝行”が話題に　朝ドラ『おむすび』

「親父が勝手に使った金」の真相は――。 朝ドラ『おむすび』第21週では、聖人（北村有起哉）と父・永吉（松平健）の長年の確執が解け、息子なりの親孝行が描かれた。誤解していた父の行動、静かに伝えた感謝、そして突然の別れ――SNSでも話題となったこの回を振り返る。

「親父が勝手に使った金」の真相

第21週「米田家の呪い」で、ついに聖人（北村有起哉）と永吉（松平健）が長年抱えていた確執の真相が明らかに。家族の絆が少しずつ修復されていく回となった。

聖人が父・永吉と不仲になってしまった原因は、「進学費用を勝手に使われた」という過去の出来事にある。しかし、その真相は聖人が思っていたものとはまったく違った。聖人はずっと「親父が俺の進学費用をギャンブルか何かに使い込んだ」と思い込んでいたのだ。

しかし、母・佳代（宮崎美子）が結（橋本環奈）に語った真実は、まったく違うものだった。当時永吉は、福岡から岐阜へ物資を運んでいる途中で、大雨と長良川の決壊に遭遇し、災害対応を手伝っていた。その場で知り合った男性から「半年後に絶対に返すから、金を貸してくれ」と懇願されたという。事故の被害に遭い、その男性の5歳の息子は意識不明の重体に陥っていた。命を救うための費用が足りない、と頼み込まれたのだ。

永吉は悩んだ末に、聖人の進学のために貯めていた費用を、その男性に貸すことを決める。そして佳代に「振り込んでくれ」と頼んだ。しかし半年後、約束の返済はなかった。聖人が大学進学を諦めることになった理由は、この出来事が原因だったのだ。

これまで聖人は「親父はいい加減で、ろくでもない人間だ」と思い込んできた。しかし、佳代がこのタイミングで、間接的にでも真実を知らせることにしたのは、今なら聖人が受け入れられると感じたからなのかもしれない。

事実を知った聖人は、驚きつつも「みんなで休みを合わせて太陽の塔を見に行こう」と提案。家族旅行の約束が決まりかけたが、最終的に太陽の塔へ足を運んだのは、聖人と永吉の二人だけだった。

聖人が父の髪を切るシーンの意味

親子関係の修復には、時間がかかるものだ。長年のわだかまりが一瞬で消えるわけではない。しかしそれでも、この第21週で描かれた、聖人が永吉の思いを少しずつ受け止めていく様子は、多くの親子間で覚えのあるものなのではないか。

聖人が永吉の髪を切るシーンが象徴的だ。聖人はずっと「大学に行けなかった」と後悔していたかもしれない。しかし彼は理容師という道を選び、その資格を生かして、父の髪を整えた。それは聖人なりの感謝と謝罪の表れに見える。

「聖人に男前にしてもろうた」と誇らしげに語る永吉が微笑ましい。その言葉には、単なるヘアカット以上の意味が込められていたに違いない。息子に髪を切ってもらうことが、彼にとっては最高の親孝行以外の何ものでもなかったはずだ。

聖人にとっても、この時間は特別なものだったのではないか。これまでの父に対する誤解が少しずつ解け、互いの存在を受け入れることができた。言葉ではなく、手を動かすことで気持ちを伝えたこのシーンは、多くの視聴者の心を打った。SNS上でも「なぜ『おむすび』が酷評されているのかわからない」「普通に良い話なのに」と言及されている。

「いきなりすぎるよ」「ありがとう、永吉さん」

視聴者の間で大きな話題となったのは、永吉の突然の離脱だった。SNSでは「いきなりすぎる」「もっと聖人と過ごしてほしかった」という声が多く上がった一方で「ありがとう、永吉さん」「いいホームドラマだった」といった感謝の言葉も見受けられた。

これまで、朝ドラ『おむすび』は何かと厳しい意見を向けられることが多かった。その背景にはさまざまな要素が絡んでいるが、実際のところ、今週のようにリアルな親子関係を描写した回などはとくに完成度も評判も高い。聖人と永吉の関係がゆっくりと修復されていく様子は、静かでありながらも強く心に残るものだった。

永吉が過去に語っていた「大阪万博の期間中、福岡から大阪まで食材を運んでいた」という話が、実は嘘ではなかったことも判明した。これまで聖人は父の言葉をすべて虚構だと思っていたが、少しずつ「親父の言うことは全部でたらめじゃなかった」と思えるようになったのではないだろうか。

長年の誤解やわだかまりは、一朝一夕には消えないもの。それでも、髪を切る時間を共有したり、太陽の塔を一緒に見に行ったりすることで、少しずつ「許し」が生まれていく。その過程が、静かに、しかし確かに心を打った週だった。

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NHK 連続テレビ小説『おむすび』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
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ライター：北村有（Kitamura Yuu）
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter：@yuu_uu_