1. トップ
  2. 朝ドラで“忘れられない”一人の女性「ハマり役で大好き」「もっと見たい」他作品でも“大絶賛”される実力派女優

朝ドラで“忘れられない”一人の女性「ハマり役で大好き」「もっと見たい」他作品でも“大絶賛”される実力派女優

  • 2026.2.7
undefined
『ばけばけ』第9週(C)NHK

髙石あかりがヒロイン・トキを務める朝ドラ『ばけばけ』で忘れられないキャラクターのひとりである、北香那演じる知事の娘・リヨ。ヘブン(トミー・バストウ)に惹かれ、トキに協力を仰ぐ才色兼備のお嬢様である。恋模様を引っ掻きまわす破天荒なキャラでありながら、同時に、松江を背負って立つ知性をも漂わせる女性。北香那は朝ドラに限らず夜ドラ『替え玉ブラヴォー!』で主演も務めており、SNS上でも「どの役もハマり役で大好き」「もっと見たい」と好評である。

※以下本文には放送内容が含まれます。

ただの“恋敵”じゃ終わらない

undefined
『ばけばけ』第9週(C)NHK

第9週で初登場したリヨ。少々風変わりな立ち振る舞いや、物怖じしない態度などから、いわゆる“波乱要員”として認識されるようになった。しかし、彼女はただの恋敵キャラでは終わらない。リヨの行動は、単なる嫉妬や独占欲に裏打ちされているのではなく、知的好奇心や率直な欲望が土台に感じられる。

もっとも印象的で、かつリヨの人となりを表しているのは、トキに対して回りくどい牽制を一切せず、「協力して」と真正面から言葉を投げかける場面だ。空気を読むよりも、世間体を気にするよりも、まずは自分の意思を最優先にする。勝ち負けではなく、ただ欲しいものを欲しいと言っているだけなのだ。

だからこそリヨは悪役にはならない。現に、なかなか本編に登場しなくなってからも、視聴者の言及は続く。彼女は善でも悪でもない。地方に暮らす女性といったステレオタイプを壊してまわるような、現代にも通じる確かな審美眼を持った人物なのだ。

演技力の土台|気品と意志

この難しい役どころを成立させている最大の要因が、北香那の演技力である。彼女の最大の武器は、言葉を尽くさずとも感情を伝える“瞳”。視線の置き方、相手を見る高さ、そのわずかな違いだけで、育ちや知性、そして自負が伝わってくる。

英語のセリフも同様だ。流暢さを誇示するのではなく、これまで彼女が学んできた環境を自然と感じさせる、美しい発音と抑制されたトーン。完璧であることよりも、積み重ねてきた時間が見える。そのリアリティが、リヨという人物を記号ではなく“人間”にしている。

さらに印象的なのが、北香那の独特な“間“の取り方である。セリフとセリフのあいだに生まれる沈黙が、彼女の余裕と意志を際立たせていた。これがまた『ばけばけ』の作風にも、髙石あかりの醸し出す空気感にも絶妙にマッチする。リヨがただの嫌な女に見えないのは、ほかの演じ手同様に、むやみやたらと感情を押し付けていないためである。

ヒロイン像に奥行きを生む存在

undefined
『ばけばけ』第9週(C)NHK

リヨの存在は、ヒロイン・トキをより立体的に浮かび上がらせる。トキにとって英語は、ヘブンとの出会いから広がった世界の象徴だ。一方リヨにとって英語は、幼い頃から選び取ってきた教養であり武器である。その違いが、ふたりの立ち姿に如実に表れている。

トキが戸惑いながら言葉を探すのに対し、リヨは迷いなく言葉を差し出す。この対比によって、トキの素朴さや優しさ、そしてたびたび抱きがちな不安がより鮮明になる。北香那の存在があるからこそ、ヒロイン像が単調にならず、物語に奥行きが生まれているのだ。

北香那といえば、『バイプレイヤーズ』で見せたコミカルなジャスミン役、『どうする家康』のお葉、『インフォーマ』のナナなど、役ごとにまったく異なる顔を見せてきた女優である。今回のリヨ役でも、その振れ幅は健在だ。お嬢様の気品をまといながら、現代的な自我を確かに宿している。

リヨはやがて物語の前線から退いていくかもしれない。それでも、彼女がもたらした“空気の変化”は確実に残り続ける。『ばけばけ』が描こうとしているのは、怪談や異文化交流だけではない。違う価値観を持った人々が出会ったときに生じる、説明のつかない揺らぎだ。その揺らぎを、北香那は一瞬の登場で、確かな痕跡として刻みつけた。

リヨは去っても、北香那の演技は残る。そう言い切れるほど、強く、美しい存在感だった。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_