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対照的?2度の劇場版、4年前の“医療ドラマの名作”と『まどか26歳、研修医やってます!』の違いとは

  • 2025.2.25

火曜よる10時から放送中のTBS系列ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』6話では、研修医の若月まどか(芳根京子)が救急医療に従事する様子が描かれる。過去に救急医療について描かれた名作ドラマは数知れず、直近では2021年に連ドラ、2023年に劇場版も公開された日曜劇場『TOKYO MER』が記憶に新しい。双方は同じ救急医療を描いているが、その見え方はまったくことなっている。

“医師とは何か”を問いかける物語

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(C)SANKEI

『まどか26歳、研修医やってます!』は、まどかの視点から描かれる、一人の医師の成長物語。それに対し『TOKYO MER』は、救急医療の最前線に立つプロフェッショナル集団が、極限状態で命を救うために力を尽くす物語である。

『まどか26歳』はどちらかというと、“命を救われる側”よりも“命を救う側”に焦点を当て、まどかを始めとする医師たちの心の動きを克明に描き出そうとしている。まどかが救命救急の現場に入った6話では、城崎(佐藤隆太)や榎本(菅野莉央)の指示を受け、ときに失敗しながらも目の前の患者と向き合うことで、まどか自身が「医師として何ができるか、どう在るべきか」を模索する様子が目立った。

詳しくは後述するが『TOKYO MER』では、どちらかというと現場の緊迫感に重きを置き、時間と条件が限られた環境下でいかに患者を救うか、技術的な面がフィーチャーされている印象だ。『まどか26歳』はそれとは対照的に、自身の在り方や働き方に対する問いかけが多い構成になっている。

「失敗したらどうしよう」「本当に私に医師が務まるんだろうか」といった、まさに等身大の悩みは、まどかのような医療従事者ではなくとも共感できる面が多く、より普遍性の高い物語として着地している。

極限の現場で貫くプロの矜持

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(C)SANKEI

医療の現場に立つ医師の心に焦点を当てたのが『まどか26歳』なら、ひたすら「命を救うこと」を追求する救急医療のプロフェッショナルたちを描いたのが『TOKYO MER』だ。

そもそも『まどか26歳』の主人公・まどかは研修医になりたてで、まだ右も左も曖昧な状態だが、『TOKYO MER』の主人公・喜多見幸太(鈴木亮平)は違う。積み重ねてきた経験と、研ぎ澄まされた感覚でもって、目の前の患者を助けることに迷いのない人物。その鬼気迫る様子は物語の冒頭、保守派の目には過剰に映り、揉め事の要因となってしまうほど。

一刻を争う緊迫した救命シーンはもちろん、崩れゆく建物の下など、自らの命さえ危うい現場でなおも患者を救おうとする喜多見の姿勢は、無謀にも見える。医師個人の葛藤よりは「とにかく行動あるのみ」といった姿勢が際立つ。彼の信念はMERのチーム内でもイザコザの種となってしまうが、ブレない喜多見の「最善の医療」を目指す視点は少しずつチーム内に伝播していく。

『まどか26歳』は研修医の成長を描く物語。『TOKYO MER』は熟練した救急医療チームの連携と信念を描く物語。両者はどちらも、ジャンルとしては「医療もの」に分類されるが、その立ち位置や描かれ方は対照的である。

どちらの医療ドラマが刺さるか?

『まどか26歳』は、医療従事者であろうとなかろうと、自分に合う職場や働き方を考えるうえで普遍的なヒントを得られる。『TOKYO MER』は、医師という職業に迷いなく突き進む登場人物たちのプロとしての動きから、救急医療の世界を体感できる。

医師としての成長か、プロフェッショナルとしての矜持か。双方のドラマから、医療の現場は一辺倒ではなく、日によって流動的であることも教えられる。どちらのドラマがより響くかは、視聴者それぞれが置かれた状況によっても異なるだろう。

2023年に劇場版が公開された『TOKYO MER』は、2025年にも劇場版の続編が公開される予定となっている。医療もの、並びに救急ものとしても一定の地位を確立しつつあるシリーズだ。両者の描写の違いを感じとりながら、働くとは何か、命とは何か、それぞれの答えを模索するきっかけにもなり得るのではないだろうか。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_