「予想以上に良作」「１番ハマってる」回を増すごとに拍車がかかる“おもしろさ”で、心を掴まれた視聴者が続出【NHKドラマ】

2025.2.17

緑髪の一風変わった国際捜査係の警察官・鴻田（奈緒）と、中国語通訳者の有木野（松田龍平）が主人公のドラマ、NHK『東京サラダボウル』。日本に居住している外国人を巡って起こる事件やトラブルを扱うに伴って、彼らが陥りやすい苦境を詳らかにしている。

6話では、鴻田が警察官を志すに至った理由と、恋人を亡くした有木野の過去が繋がっていることがわかった。SNS上で「予想以上の良作」「１番ハマってる」と絶賛が続く本作は、二人の過去を描くことでさらに視聴者の心を掴んでいる。

鴻田が警察官になったきっかけは……

回を増すごとにおもしろさに拍車がかかる『東京サラダボウル』。NHK制作のドラマには良質なものが多く、放送前から話題になっていた本作ではあるが、どの回もコンセプトや脚本がしっかりしている点、鴻田を演じる奈緒をはじめ役者の演技に誠実さと説得力がある点などから、SNS上でも話題が浸透している。「予想以上の良作」という噂を聞きつけ、追って視聴を始めたファンも多いのではないだろうか。

6話では、鴻田が警察官を志すきっかけになった事件や、幼少期に在日韓国人のコミュニティ内で交流していたスヒョン（水瀬紗彩耶）との過去について描かれる。

まだ小さな鴻田とスヒョンがやりとりする様は、微笑ましい。食べたことのない韓国の食材を口にして「おいしい！」と目を輝かせたり、スヒョンから韓国語の発音について教えてもらったり、発音がちょっと違うだけで意味は同じである日本語と韓国語の単語についておもしろがったり。国を問わず、主に食文化に対して好奇心を働かせる鴻田は、幼いころから変わらないのだと思わせられるシーンだ。

ともにチマチョゴリを着て写真を撮ったり、海辺で絵を描くスヒョンに鴻田が付き添ったりと、二人は交流を重ねていた。しかし、スヒョンの両親をめぐる“とある事件”によって、彼らは突然、鴻田の前から姿を消す。幼い鴻田の耳には「これだから在日は」という周囲の大人のため息がこびりついたのだろう。警察官のなかでも国際捜査を志した鴻田の心理が見て取れる。

その後、成長した鴻田はたまたま駅の敷地内で刃物を持った男と遭遇。襲われそうになった母娘をかばって前に出る彼女の元に、複数人の警察官が駆けつけた。そのなかの一人が、かつての有木野の恋人・覚（中村蒼）だったのだ。

不思議な円環で繋がった、鴻田と有木野の過去。これまでいくつかの回想シーンで示されているように、すでに覚は亡くなってしまっている。無茶をして敵陣に乗り込んでいった鴻田に対し、有木野が「このままだと、あんた落ちるよ」と警告したことがあったが、彼の脳裏には覚の姿が浮かんでいたのかもしれない。SNS上でも、繋がった二人の過去について言及する声が多く「だから落ちるよって言ったのか」と納得の感想が散見された。

ボランティア・シウの真意は？

『東京サラダボウル』は、外国人居住者への拭いきれない差別感情や、人身売買ならびに戸籍売買など暗部に潜りがちな問題に光を当てた作品だ。異様な存在感をまとうキャラクターとして、“ボランティア”と称されるシウ（絃瀬聡一）がいる。

3〜4話にかけて、主に中国で問題視されている戸籍や人身売買について描かれたが、ボランティア・シウはその“事業”の元締めとされている。その表情は一貫して冷徹で、真意が見えない。一視聴者として気がかりなのは、すでに有木野は行きつけのバーでシウと顔見知りになっている点だ。

シウの目的は何なのか？なぜ外国人居住者を狙うのか？ただの私利私欲のためなのか、それとも。鴻田と有木野の過去が明かされ、有木野の亡くなった恋人・覚を介して繋がっていたことが明らかになったタイミングで、次に物語の焦点となるのはシウだろう。覚が亡くなった事件にシウが関係している、とみるのが妥当かもしれない。

2020年に放送されたドラマ『MIU404』（TBS系列）に登場した久住（菅田将暉）というキャラクターは、麻薬売買に手を染める悪漢として描かれていた。さぞ悲哀な幼少期を送ったのだろう……と視聴者に想像させる描き方だったが、その心理を逆手に取るように彼は「俺は、お前たちの物語にはならない」と口にするだけだった。果たしてシウに“物語”はあるのか。

ドラマ10『東京サラダボウル』 毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター：北村有（Kitamura Yuu）
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X（旧Twitter）：@yuu_uu_