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「引き込まれる演技」「彼女だからこそ出来た役」NHKドラマ出演女優に絶賛の声続出『バニラな毎日』

  • 2025.2.14

原作のある映像化作品には、どうしても「原作と比べて良いか、悪いか」といった比較の視点がついてまわる。原作至上主義ともいえる価値判断基準もあるが、必ずしも原作と展開が違うからといって、悪い作品の烙印をおされるわけではない。夜ドラ『バニラな毎日』に出演する和合由依が演じるのは、パティシエを目指している“はずの”高校生・結杏。結杏は原作では中学生の設定で、車椅子にも乗っていない。

役の魅力を増幅させる和合由依の演技

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『バニラな毎日』第4週(C)NHK

とある事情から自分の店を閉めることになったパティシエ・白井葵(蓮佛美沙子)と、破天荒でちょっと癖の強い料理研究家・佐渡谷真奈美(永作博美)がお菓子教室を始める『バニラな毎日』。教室にやってくるのは毎回一人、カウンセリングに通っている訳ありな生徒ばかりだ。

パティシエを目指している……とされている高校生・結杏を演じているのは、手足に障がいを持つ俳優・和合由依。2021年の東京パラリンピック開会式において、「片翼の小さな飛行機」と題されたパフォーマンスをしてみせた、あの彼女だ。

和合はNHK制作ドラマ『パーセント』にも出演しており、伊藤万理華演じるテレビドラマプロデューサー・吉澤未来から、ドラマ出演を依頼される劇団員・宮島ハルを演じている。自身も車椅子生活をしていること、それ以上の説得力を持つ演技が評価され、『バニラな毎日』に起用されたとしてもおかしくはない。

『バニラな毎日』で和合が演じているのは、車椅子生活をしている高校生・結杏。しかし結杏というキャラクターは、原作では中学生で、かつ車椅子にも乗っていない。

ドラマでは、手足に障がいを抱えているがゆえに、なんでも先回りして結杏の世話をしてしまう母親に焦点が当てられる。原作では、結杏がカウンセリングに通い出した理由として、成績トップだった結杏がテストの答案を白紙で提出したこと、それによって受験の失敗を案じた母が“先回り”してカウンセリングを予約した……という描かれ方をされている。

そもそも結杏がお菓子教室にやってくるエピソードも、原作ではタルトタタンをつくった順子(土居志央梨)の直後に展開されている。大幅とも捉えられる原作からの改変だが、原作ファンからの不満の声は少ない。むしろ結杏を演じる和合の存在感を称える声が多く「引き込まれる演技」「彼女にしかできない役」とSNSでも賞賛されている。

原作の改変はどこまで許されるか?

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『バニラな毎日』第4週(C)NHK

原作のある映像化作品を解釈する目は、慎重に養わなければならない。原作を愛するがあまり、改変そのものを検討の余地なく「改悪」と断ずる動きは、作品によっては尚早にもなる。

『バニラな毎日』は前述したように、エピソードの順番も、結杏の人物設定も大きく異なるが、映像化ならではの説得力が増したように思えてならない。

木戸大聖演じる秋山静のエピソード(彼も原作ではビジュアル系バンドのボーカルだが、ドラマ版ではロックバンドのボーカルになっている)、そして伊藤修子演じる優美のエピソードを介してから結杏のエピソードを描くことは、より白井と佐渡谷の信頼関係が強まっているニュアンスを伝えるのに、一役買う構成になっている。

たとえ原作から大幅に改変されていても、それがより映像化の魅力を増幅させることに繋がる例もある。『バニラな毎日』は、その事実をアピールするうえでも意義のある作品に仕上がっている。

NHK 夜ドラ『バニラな毎日』毎週月曜~木曜よる10時45分放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_