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「セールストークに乗せられて…」 マンションを『ペアローン』で購入した妻、後悔してもしきれない“大きすぎる落とし穴”

  • 2025.3.3
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写真:photoAC(イメージ)

ペアローンとは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約し、マイホームを購入する方法です。

ここ数年は首都圏を中心に不動産価格が高騰しており、ペアローンを組まなければマイホームを購入できない、というケースが増えています。

しかし借入額を増やせるペアローンですが、デメリットや注意点も存在します。

今回は、FPとしてさまざまなご家庭でお金の相談を受けてきた筆者が、ペアローンを組んで後悔している相談者の事例を紹介します。

ペアローンには借入額を増やせるメリットがあるが...

 ペアローンを活用すれば“2馬力”として借入額を増やせるため、購入できる物件の選択肢が広がるというメリットがあります。

最近では、夫婦のいずれかが死亡したときに夫婦双方の債務がゼロになる「連生団体信用生命保険」も登場しており、金融機関としてもペアローンの需要に応えようとしています。 

「組むべきではなかった」…妻が激しく後悔するワケ

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写真:photoAC(イメージ)

しかし、筆者の相談者で「夫の収入だけでは希望のマンションを買えなかったためペアローンを組んだのですが、安易に組むべきではありませんでした…」と激しく後悔している方(Aさん/女性)がいます。

Aさんは不動産会社や金融機関の営業マンから「ペアローンにすればもっとグレードの高いマンションに住めますよ」「ご夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられるからお得ですよ」などのセールストークを受け、都内にある6,000万円のマンションを購入しました(ローンの内訳はAさんの夫が3.500万円、Aさんが2,500万円とのこと)。

Aさんが現在抱えている最大の悩みは「離婚したいのに離婚できないこと」だそうです。

マイホームを購入した当初は満足していたのですが、次第にお互いに仕事が忙しくなってすれ違いの時間が増えたり、それだけでなく価値観や生活観の不一致が鮮明になり、お互いに離婚を意識しているとのこと。 

ペアローンのデメリット

しかし、ペアローンには以下のようなデメリットがあるため、安易に離婚できません。

  • 自分の債務を完済しない限り、ローンの債務者を一人に変えられない
  • マイホームを売却したくても相手の同意が得られないと売却できない
  • 相手が返済を遅延すると自分に返済義務が生じる

ペアローンでは、お互いがローンの連帯保証人となります。連帯保証人とは、主債務者(つまり配偶者)が返済できない状態になったとき、返済義務を負う人です。 

ペアローンの融資額は、連帯保証人がいることも加味されて決まります。つまり、離婚したからといって連帯保証人をやめられるわけではなく、完済しない限り連帯保証人であり続けます(金融機関が認めてくれません)。

Aさんは離婚をして今の家を出て行きたいと考えていますが、ペアローンでは所有権が夫と妻の共有名義となります。共有名義の家は、双方の同意がないと売却できません。

Aさんの夫は今の家に住み続ける予定なので、このままだとAさんは「住まない家のために住宅ローンを支払い続ける」という事態に陥ってしまうのです。さらに、新しい住居での家賃も発生するため、Aさんは「経済的負担が重く、なかなか出ていけない」とも話していました。

今現在も、Aさん夫婦はギスギスした関係のまま同じ家で生活しているといいます。会話はほとんどなく「できるだけ家にいる時間を少なくしたい」という考えから、Aさんはあえて深夜まで残業したり、知人の家に泊まったりしているそうです。

ペアローンの離婚リスクに備えるためには

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写真:photoAC(イメージ)

Aさんの事例を見るとわかるように、ペアローンを組んでマイホームを購入したあと、何らかの事情で離婚を検討するに至っても、スムーズに事が運ばないケースがあり得ます。

離婚そのものにかなりのストレスや不安が伴うにもかかわらず、マイホームの処分をめぐって考えることが多く発生します。精神的にも経済的にも、消耗してしまう事態になりかねません

現在は、約3組に1組の夫婦が離婚するといわれています。今現在は円満でも、いつ離婚という事態に発展してもおかしくありません。特に、性格の不一致や金銭感覚の不一致は離婚につながりやすいため注意が必要です。

ペアローンを組むときには、以下のポイントを慎重に検討しましょう。

  • 夫婦関係の状態は良好で価値観の大きな相違はないか
  • 同居してどの程度の期間が経過しているか
  • お互いに長期的に返済できる経済力を維持できそうか

なお、FPとして筆者は安易にペアローンを組むのは反対しています。今回のように、離婚するときの負担が非常に重く、解決の糸口を探るのが難しいためです。

もしマイホームの購入を検討しているものの、一人だけでは希望額に届かない場合は「収入合算」を検討しましょう。収入合算は、契約者本人の収入に配偶者の収入を合算し、融資額を決定する方法です。

収入合算であれば、住宅ローンの契約者は一人です。つまり、融資額を増やしつつも、離婚時に起こりうる問題を防げます(連帯保証人にはなります)。

ただし、収入合算の場合は団信(団体信用生命保険)に加入できるのは契約者だけです。連帯保証人が死亡しても債務はそのまま残り、契約者は返済を続けなければなりません。

収入合算にもデメリットはあるとはいえ、離婚時のリスクを考えると「ペアローンよりも収入合算のほうが無難」といえます。

まとめ

昨今は不動産価格の上昇や共働き世帯の増加などの影響もあり、ペアローンを組んでマイホームを購入する人が増えています。しかし、ペアローンのデメリットやリスクを考慮せず、安易にペアローンを組んでしまうのは危険です。

「離婚したくてもできない」「マイホームを処分する方法がない」「配偶者が返済に遅れたせいで自分に請求が来る」など、さまざまなリスクがあります。

マイホームを購入する際には、経済的な事情だけでなく夫婦関係も鑑みたうえで、どのように住宅ローンを契約するのか考えましょう。



【柴田充輝】

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。 FP1級と社会保険労務士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。

 

※記事内のイラストおよび画像はイメージです。