1. トップ
  2. セリフがなくてもすごかった…! 近年、すさまじい実力を見せる夏帆『ホットスポット』で放つ、絶妙な“異質さ”

セリフがなくてもすごかった…! 近年、すさまじい実力を見せる夏帆『ホットスポット』で放つ、絶妙な“異質さ”

  • 2025.3.4

最終章にさしかかった『ホットスポット』。第2章と銘打たれた第4話から、一際存在感を放っているのが、夏帆が演じる磯村由美だ。主人公・清美(市川実日子)や、その幼なじみである美波(平岩紙)や葉月(鈴木杏)、岡田綾乃(木南晴夏)とは違う、予想のつかない角度から高橋さんを追い詰めていく姿は、第4話以降の見どころだった。

磯村由美の異質さ

undefined
『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

思えば、由美は第1話から異質な存在だった。はじめから「宇宙人はいる」と信じて疑わず、高橋(角田晃広)だけでなく、小野寺(白石隼也)の特徴に目をつけては、怪しい!と清美に報告をしていた。

清美自身が高橋さんが宇宙人であることを知ったあとも、由美からの言葉をなんとなく受け流していた。雲行きが変わったのは、第3話のラスト。由美が、高橋さんの曲げた10円玉を見つけてしまったことだ。真っ直ぐな目で、「小野寺くんの仕業だ!」と主張する由美の真剣さが高橋さんを追い詰め、事態をかきまわしていく。由美の主張だけなら大した情報ではないが、『月曜から夜ふかし』のスタッフが街で集めた情報も含めて、「小野寺くん宇宙人説」が強固なものになってしまう。清美は焦り、由美に高橋さんが宇宙人であることを告げる。

由美は、身近な人が宇宙人だったという事実にどんな反応を見せるのか。大きな期待を寄せたが、なんと由美は高橋が宇宙人であることを信じなかった。その後、由美は幼なじみの瑞稀(志田未来)に高橋さんが宇宙人であることを話しつつ、仕事中には高橋さんの能力を見せてもらう。

由美は、宇宙人がいることを信じることで日々に張り合いを出しており、高橋が宇宙人であることで何ができるとか、周りにバレたら大変なのかは、どうでもいいように見える。高橋さんに困りごとを解決してもらっていた清美たちと比べると、高橋さんとの関わり方は異質だろう。一方で、「私は日テレの人に高橋さんのこと、バラしたでしょうか?バラさなかったでしょうか?」と聞くなど、由美の存在自体が高橋さんにとっての困りごとになっているのも面白い。

由美が何を言い出すか、何をするか、どんなリアクションをするかわからないという不穏さを、夏帆が憎めない絶妙なバランスで演じている。

バカリズム作品といえばの女優

undefined
『ホットスポット』第7話より (C)日本テレビ

バカリズム作品の女優といえば、夏帆が浮かぶという人も多いだろう。『架空OL日記』『ブラッシュアップライフ』から続き、『ホットスポット』にも出演し、どの作品にもメインキャストとして登場している。『ホットスポット』への出演が発表された時には、SNSで「夏帆ちゃんの出演嬉しい!」という声が溢れた。

一方で、憶測から噂話を作り出して高橋さんを翻弄する由美の言動に対しては、「由美ちゃんのやっていること、怖いしやばい」「悪気なく絶妙にイラッとさせてくる」など、夏帆が巧みに演じているからこそ、由美に対する畏怖や苛立ちの声が寄せられている。バカリズムの脚本が持つゆるい会話劇を自然に演じつつ、由美のように異質さを入れ込み、物語の転換点となる役柄も演じられる証拠だろう。

もちろん、夏帆の女優としての魅力はバカリズム作品でばかり目立つわけではない。近年でいえば、『silent』で演じた聴覚障害のある桃野奈々役は特に素晴らしかった。奈々は、当て馬として視聴者から嫌われてもおかしくない設定の役柄だったが、葛藤や苦しみが痛いほど伝わってくる夏帆の凄まじい芝居により、視聴者の涙を誘った。奈々は聴覚障害者であり、言葉によるセリフは一つもない。しかし、表情の一つ一つ、手話に込められた感情の昂りによって表現されていた。感情が揺さぶられる役柄でも、しっかりと演じられるのだ。

最終章に入り、大きな展開が見えてきた『ホットスポット』。これまでも事態をかきまわしてきた由美がどんな反応を見せ、どんな行動をとるかも注目ポイントだろう。『架空OL日記』や『ブラッシュアップライフ』では、主人公の側でボケをかます役柄を演じている夏帆もぜひ堪能してほしい。

日本テレビ系 『ホットスポット』毎週日曜よる10時30分



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202