1. トップ
  2. 人気マンガの実写化でも原作ファンから高評価! “注目の若手女優”がNHKドラマで見せたスゴい演技

人気マンガの実写化でも原作ファンから高評価! “注目の若手女優”がNHKドラマで見せたスゴい演技

  • 2025.2.18

北海道の大学の獣医学部を舞台にしたドラマ『リラの花咲くけものみち』(NHK総合)。家庭環境が原因で、引きこもりとなった主人公・岸本聡里を山田杏奈が演じている。第1話では、聡里が寮で同室の梶田綾華(當真あみ)に心を開く最初の一歩と、獣医学部での新鮮な日々が描かれた。

意志が宿る山田杏奈の瞳

実母を小学4年生で亡くした聡里は、父の再婚により、継母との生活を始める。聡里の父が単身赴任になって以降、継母との関係がうまくいかなくなってしまった。実母との思い出になるものを次々に処分していく継母。継母は、飼い犬であるパールまでいらないと捨てようとしていた。聡里は、「自分が学校に行っている間にパールが捨てられてしまうのでは」と考え、パールを守るために学校に行けなくなってしまった。

undefined
『リラの花咲くけものみち』2月1日放送(C)NHK

そんな聡里を救ったのは、チドリ(風吹ジュン)だった。そこから聡里はチドリとパールとの生活を始め、チャレンジスクールを経て、獣医を志す。物語は、聡里が北農大学獣医学群に進学したところから始まる。チドリやパール以外との交流がほとんどなかった聡里の新たな一歩。聡里は、チドリに言われたように、腹から声を出して、同室の梶田綾華に話しかける。狭い室内に似つかわしくない聡里の大きな声と、若干引いたような綾華の表情のギャップが微笑ましい場面。聡里の頑張りがよく伝わってくる。

山田杏奈はとにかく目に力のある俳優だ。引きこもり時代の闇に包まれた光のない瞳、自宅に帰ってしまうチドリを見る悲しげな伏せ目、チドリに背中を押されて意志を宿して綾華の前に立つ強い瞳と、心のうちにある感情を瞳が伝えてくれる。

物語中盤、綾華にベッドの下にある古ぼけた箱とその中にある骨の存在を指摘された聡里が、自分の過去を綾華に必死に語るシーンがある。聡里にとってはできれば思い出したくない過去。それを、どうにか綾華に伝えようと淡々と言葉を選んで語っていくが、聡里は綾華と目を合わせようとしない。その視線からは「誰かが自分の話を聞いてくれると、涙がこぼれてしまう」という感情が伺える。最後には、「本当は学校に行きたかったです」と、唇を震わせ、涙を流し始める聡里。長ゼリフで、過去にあったことを語るだけのシーンでも、しっかりと感情の昂りが表現されているのだ。

幅広い役をこなす演技力

undefined
『リラの花咲くけものみち』2月15日放送(C)NHK

近年、その演技力が確実に評価され始めた山田。2023年には『ゼイチョー〜『払えない』にはワケがある〜』で、ヒロイン役・百目鬼華子に抜擢された。自身の過去をきっかけに徴税吏員を志した華子は、実際に働くなかで成長し、市民に真摯に寄り添っていく。表情を変えないクールなヒロインで、これまでの可愛らしく可憐な山田杏奈像を覆すものであったが、応援したくなるヒロイン像を作り上げていった。『ゴールデンカムイ』では、ヒロイン・アシㇼパ役を演じ、実写化に対して厳しい目を向けていた原作ファンからも好評の声を得ている。

2024年は、映画『正体』で、藤井道人監督作品に初出演。後半のキーパーソンとなる酒井舞を演じた。舞は、主人公・鏑木慶一(横浜流星)が最後に潜入する介護施設の職員の一人。東京で美容専門学校に通っていたものの、地元に帰ってきており、仕事に対してはそこまでやる気がない様子。慶一に淡い恋心を寄せ、それを日々の楽しみにしている。

山田の仕事に対する意識が分かる声色や台詞回し、慶一を見る時の少し赤みがかったような恋する表情。そして、舞の行動により、慶一が追い詰められることになってしまった際の戸惑い。セリフで説明しなくとも手に取るように分かる舞の感情の変化に、山田杏奈の演技力の真髄が感じられた。

『リラの花咲くけものみち』は、獣医学部を舞台にしながらも、聡里の変化や成長を丁寧に描いていく作品。聡里は、言葉や行動以外の情報をうまく調整できる山田杏奈にぴったりの役柄だと言えるだろう。

土曜ドラマ『リラの花咲くけものみち』 NHKプラスで見逃し配信中



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202