『御上先生』衝撃のキャスティングで圧倒的な存在感！今、最も注目すべき演技派女優の“視聴者を引き込む表現力”

TBS日曜劇場『御上先生』は、第1話冒頭でいきなり刺殺事件が発生、教育のあり方と凶悪犯罪のつながりを示唆するような展開で話題となっている。

その犯人を誰が演じているのか当初は伏せられていたが、物語が進むにつれて堀田真由が演じていることが明かされた。このキャスティングには多くの視聴者が驚かされた。これまでの彼女のイメージを覆す役でもあり、こうした犯罪に手を染めるのが男性に多いこともあって、男性俳優が演じていると考えていた人が多かったこともあり、非常に強いインパクトを残した。

彼女がこの役を演じることで、ただの悪い人間とは思えず、被害者と加害者という単純な二項対立では考えられない深みを作品に与えている。堀田真由の存在感がドラマに奥行きを与えていると言えるだろう。そんな堀田真由のこれまでのキャリアを振り返ってみたい。

複雑な感情に引き裂かれた役を積極的に演じてきた堀田真由

堀田真由は年齢的には若手と言える世代だが、すでにキャリアは10年目となる。2015年のWOWOWのドラマ『テミスの求刑』で仲里依紗演じる主人公の妹役でデビュー。その2年後に、NHK朝の連続テレビ小説『わろてんか』で主人公の妹・りんを演じて一躍注目されることになった。そして、若手俳優の登竜門的な学園ドラマやラブコメ作品に出演しながら経験を積み重ねていく。

2022年、三谷幸喜が脚本を務めたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時の二番目の妻・比奈を確かな演技力で演じ、着実な成長を見せてくれた。また、朝ドラでは2020年の『エール』にも主人公の初恋の相手・志津を演じ、若くして2度目の朝ドラ出演を果たし、演技力の高さと存在感で多くのドラマ・映画で活躍している。

そんな彼女の転機になった作品は、フジテレビヤングシナリオ大賞の映像化作品『サロガシー』だろう。堀田真由は、この作品で初めてドラマの主演を務める。本作での彼女の役柄は、ゲイの兄のために代理母出産をする女性。男性優位な建築業界で、自立した人間として結婚せずに生きていこうとする女性を演じている。結婚せず子どももいらないと思っていたが、代理母として出産を経験し、母性に目覚め、自らの人生観が揺らいでいく女性の心理を巧みに表現していた。

こうした複雑な感情に引き裂かれるような、難しい役にも堀田真由は果敢に挑んでいる。2024年のドラマ『アンチヒーロー』では、勝利のためなら違法スレスレな手段も辞さない弁護士事務所で働く弁護士を熱演。理知的でありながら、父親の犯した罪と自身の弁護士としての正義の間で揺れ動くさまを共感を込めて演じてみせた。

続く、日本テレビの『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』では、ミステリアスな雰囲気のあった『アンチヒーロー』とは全く異なる、仕事と男性優位な社会の壁にぶつかる等身大の女性の姿を披露。脚本家志望で、結婚せずに仕事に生きることを心情としているものの、様々な障害に直面して悩みながらも前に進んでいく姿が視聴者の共感を呼んだ。

その他、連続ドラマ初主演となった『たとえあなたを忘れても』では、解離性健忘という障害を抱えながら生きる青年を支える役など、一筋縄ではいかない題材をよく選んでいるとも言える。

コミカルな芝居も重厚感ある理知的なキャラクターも演じてみせる堀田真由は、若手演技派の俳優として、今最も注目されるべき存在と言えるだろう。

『御上先生』見せた鋭い眼光

そんな彼女が『御上先生』で新たに挑んだ役が、殺人犯だ。国家試験会場で突如、見ず知らずの人物を刺殺した真山弓弦を演じる彼女に与えられた舞台は、暗い留置場と面会室だ。薄暗い部屋の中で覗かせる鋭い眼光が心の深い闇を感じさせる。時に不敵な笑みも浮かべる弓弦は身勝手な殺人者か、歪んだ社会の犠牲者か。堀田真由が演じることで、その境界線が揺らぎ、視聴者も安易に悪人と決めつけられない深みを物語に与えている。

この弓弦というキャラクターは当初、男性を想定していたが、プロデューサーの飯田和孝氏が『アンチヒーロー』での彼女の芝居を見て、女性に変更することを決めたという。決して出番が多いわけではないが、物語全体に影響を及ぼす、極めて重要な役であり、その強烈な存在感で視聴者を惹きつけている。

これまでも複雑な役を演じてきた彼女にとっても、挑戦となるキャラクターだろうが、これまでのところは見事にハマっている。これによって役柄の幅をさらに拡げた堀田真由は、今後どんな役者に成長していくのか、楽しみだ。

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ライター：杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X（旧Twitter）：@Hotakasugi