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「抱きしめたい」「胸が痛い」岡田将生演じる航一の娘がぶちまけた“本音”に擁護の声『虎に翼』

  • 2024.8.31

本音をさらけ出すのは難しい。それが、親や恋人や親友など、近しい関係なら尚更のことだ。8月26日から30日にかけて放送された連続テレビ小説『虎に翼』の第22週「女房に惚れてお家繁盛?」では、航一(岡田将生)の娘・のどか(尾碕真花)を中心に、星家の本音が爆発する展開に。SNS上では「のどかの立場を思うと胸が痛い」など、彼女を思いやる言葉があふれた。

のどかが抱えていた“寂しさ”

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『虎に翼』第22週(C)NHK

まだ吐き出しきれていない本音が、のどかのなかにある。そう感じ取っていた寅子(伊藤愛莉)の娘・優未(毎田暖乃)は、勝ったら私たちのどこが嫌なのか本音を教えて、と麻雀対決を提案する。しかし、優未は父・優三(仲野太賀)から受け継いでしまった“腹痛癖”を発症してしまい、勝負は一時休戦に。

彼女を心配する寅子、二人を見守る航一や朋一(井上祐貴)、百合(余貴美子)の様子を見て、のどかの不満が爆発。「そういうところが嫌」「気が付くと真ん中に二人がいる」と、これまで蓋をしてきた思いを次々と言葉にした。

母を亡くしたのどかと朋一は、子どもとして十分に甘えられないまま学生になり、大人への階段に足をかけてしまったのだろう。本当は自分だって、子どもらしく甘えたり駄々をこねたりしたい。愛されているという実感がほしい。そんな欲求が満たされないまま、母から託された「お父さんを甘えさせてあげて」といった願いも十分に叶えられず、もどかしい気持ちに足をとられていた

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『虎に翼』第22週(C)NHK

そんななか、寅子と優未がやってきた。快活でまっすぐで素直な気質の二人に対し、仕事第一で家族との付き合いも下手だったはずの父が、笑顔で穏やかに接している。家族である自分がなし得なかったことを、不意にあらわれた二人がやってのけている光景が、受け入れ難かったのも無理はない。

涙ながらに本音をぶちまけるのどかの姿は、見ようによっては稚拙にも映る。しかし、本当の思いを口にできたことで、彼女は確実に前に進めるはずだ。SNS上でも、「抱きしめたい」「胸が痛い」「彼女の気持ちがわかる」と擁護する声が多い。

「時々は褒められたい」百合の本音

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『虎に翼』第22週(C)NHK

もう一人、共感を得ている登場人物がいる。航一の継母である百合だ。彼女は家族のために尽くすことを誇りに思っており、毎朝、和食と洋食とに分けて食事を用意することも厭わない。

しかし、のどかが本音を打ち明けた影響からか、彼女も日頃の思いを口にする。誇りを持ってやっている家事だけれど、感謝されたくてやっているわけではないけれど、時々は褒められたい、と。褒めてもらえることが嬉しい、という素直な言葉が、その場にいる全員の心に染み入るのがわかった。

百合の本音は、日頃から家族のために家事や育児をがんばっている立場の視聴者にも、共感を持って受け入れられた。報酬が発生しない、見えない仕事に従事する人たちは、何を糧に踏ん張ればいいのだろう。感謝の言葉や思いやりもないままでは、「誇り」「やりがい」の旗を立てても早々に折れてしまう

寅子の後輩女性・秋山(渡邊美穂)が無事に出産し、保育園が見つからなければベビーシッターを探したいと思っている、といった話が出ると、百合は「やろうかしら、ベビーシッター」と前向きだった。誰にも気を遣わず、自分で自由に使えるお金を待つことに憧れていた、といったことを合わせて口にしていたことからも、彼女が無意識に「褒められずにいたこと」に対して、言葉にできない思いを抱えていたことがわかる。

『虎に翼』は全人類へのエール

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『虎に翼』第22週(C)NHK

『虎に翼』は、女性が立ち上がっていく過程を追った物語だ。女性が、男性よりも上の立場になることを目指すのではなく、男女の差別なしに目線を同じくして議論を交わす、そんなフラットな世の中に近づくことを目指したドラマ。女性に限らず、男性も含めた全人類へのエールでもある。

妊娠・出産を機に、一度キャリアをストップさせなければならないことに悩んでいる寅子の後輩・秋山は「佐田さんたちの期待に応えられる気がしなくて」と不安を吐露する。それを受け、寅子は彼女らしい素直な言葉でエールを送った。

「秋山さんがやりたいことを選択して進んでいくこと」「あなたの居場所はちゃんとここにある」と。

寅子は「あのとき自分がして欲しかったことをしてるだけ」と謙遜するが、たった一時期でも、築いてきたキャリアを止めねばならない不安を抱えた身からすると、“戻れる居場所”を担保してくれる強い言葉は、そのまま安心に直結する。

全人類、居場所がほしいのだ。ここにいてもいい、という保証があるだけで、生きていけるものなのだ。人としての根源にも触れる『虎に翼』のテーマは、この先、クライマックスに向けてさらなる深みへと入っていく。



NHK 連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_