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これが実話? 地上波では放送できない!男女交際禁止なら同性同士…衝撃の学園ドラマ『恋愛バトルロワイヤル』

  • 2024.8.30

過去に実際に起こった出来事にインスパイアを受け製作されたNetflixドラマ『恋愛バトルロワイヤル』。男女交際禁止の校則を破って自主退学勧告を受けるも、学校法人を相手に裁判を起こした女子生徒をモデルに、これまでにないオリジナルストーリーの学園ドラマが仕上がった。Netflixならではの“地上波では難しい”描写の数々を、ネタバレなしでいくつかご紹介したい。

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Netflixシリーズ『恋愛バトルロワイヤル』独占配信中

主人公が悪?ダークヒーロー的側面も

『恋愛バトルロワイヤル』の見どころは、なんといっても「男女交際禁止」というコンプライアンス違反に接触した校則が堂々と掲げられた学園において、高校生の男女が各々の「恋愛」にどう向き合うか、その怒りやもどかしさ、諦念を克明に描き出した点にある。

見上愛演じる主人公・有沢唯千花には、自身の出生や生育環境の影響から、エリート学園に入学して成すべき“野望”がある。それによるバイタリティや反骨精神が、彼女は人一倍強い。夢に向かって一心不乱に突き進む姿には共感できる面もあるが、そのハングリーさが好ましくない方面へ舵を切ってしまう瞬間がある。

単刀直入に言うと、唯千花はお金に困っている。男女交際禁止の校則を破ってしまい、退学を恐れて困っている生徒たちを相手に「バラされたくなければお金を払え」と脅す役割を選んでしまうのだ。

いわゆるダークヒーロー的描写のみであれば、地上波放送のドラマにも多く見られる。直近であれば『アンチヒーロー』(TBS系列/2024)の明墨正樹(長谷川博己)や『ブラックペアン シーズン2』(TBS系列/2024)の天城雪彦(二宮和也)など、わかりやすく金銭を要求するパターンも目立つ。

しかし唯千花は「男女交際禁止」の校則があるエリート学園の生徒自身であり、違反をすれば退学処分を受ける身であることに変わりはない。同じ穴のムジナである同胞たちを、同じ立場である唯千花が身分を隠して騙し、お金を得ている。そのギリギリの綱渡りが視聴者をドキドキさせるとともに、いずれバレるであろう嘘に胸を切なくさせる。

同性同士の恋は「恋愛ではない」?

『恋愛バトルロワイヤル』の世界、主な舞台であるエリート高校・明日蘭学院において、男女交際禁止という校則は絶対だ。この設定をもとに、デリケートな主題にもなり得る「同性同士の恋愛」に切り込む回も存在する。

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Netflixシリーズ『恋愛バトルロワイヤル』独占配信中

ネタバレになってしまうため詳細は避けるが、男女交際禁止という校則の存在を知った瞬間、浮かび上がる“一線”があることに思いを寄せてほしい。それは「異性」が恋愛対象になる人間と、「同性」が恋愛対象になる人間。男女交際禁止と聞けば、人は自然と「恋愛禁止」と結びつけてしまうが、同性が恋愛対象である側から見るこれらの言葉は、ただそこに在るだけで暴力や人権侵害にさえ及びかねない。

同性同士の恋愛が描かれることは、昨今珍しいことではなくなった。しかし、未だ同性同士の婚姻関係が認められていない日本において、同性同士の交際は恋愛か、そうではないか?といった問いは鈍い重さを持つ

男女交際禁止を掲げた学園において、もし同性が恋愛対象の生徒がいたとしたら。作品を視聴前の方は、ぜひこの問いを胸に本編を鑑賞してほしい。

なぜ「男女交際禁止」の校則ができたのか

そもそも、なぜ男女交際禁止の校則がつくられたのか? その理由には、明日蘭学院の校長・幾島葉子(寺島しのぶ)が関わっている。

その理由を詳述するのもネタバレになってしまうため避けるが、その理由こそが本作の土台に漂うテーマであり、メッセージにもなっている。彼女がただ私利私欲だけで、生徒のプライベートを締め付けるような校則を掲げたのではないことは、本編を見れば自ずと知れることだ。

男女におけるデリケートな問題を扱うドラマは、近年増えつつある。夫婦間のセックスレス問題に切り込んだ『あなたがしてくれなくても』(2023/フジ系列)をはじめ、若くして産んだ子どもを女性二人で育てるシスターフッドを描いた『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(2023/TBS系列)も記憶に新しい。

男女の間には、仲が深くなれば深くなるほど、どうしたって問題が生まれ、それを機に消えない溝が刻み込まれることがある。このとき、心身ともに拭えない傷を一生抱え、その先の人生を歩むことになるのは、どちらなのか。恋愛とは何か、人類が繁栄してきた根本に流れる普遍で長大なテーマを内包したのが、この『恋愛バトルロワイヤル』なのだ。



Netflixオリジナルシリーズ『恋愛バトルロワイヤル』
[出演]見上愛、宮世琉弥ほか
[配信]Netflixにて独占配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_