【推しの子】真のヒロインは誰なのか？「有馬かな」「黒川あかね」どちらとも取れる“ニクい”演出

現在放送中のTVアニメ『【推しの子】』において、真のヒロインはいったい誰なのか。一見すると星野ルビーのようにも見えるが、ヒロインレースで火花を散らしているのは有馬かなと黒川あかねだ。第1期で主に描かれたのは、有馬の葛藤やアクアに対する胸の内だった。「あんたの推しの子になってやる！」と宣言するなど、有馬とアクアがくっつくと示唆するようなシーンも。しかし、第2期ではあかねの“彼女力”が垣間見える場面が目立つ。この混戦を制するのはどちらなのだろうか。

あかねの危ういほど深い愛

恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます」がきっかけで、アクアとあかねはビジネスカップルという形で付き合い始める。ただ、アクアの目的はプロファイリング能力を持つあかねを星野アイの復讐に利用することだった。アイを完璧にトレースしたあかねに心を奪われたものの、恋人同士のほうが都合が良いといった思惑が大きかったのだろう。

しかし、あかねはアクアにビジネスではない特別な感情を抱いていた。仕事だと割り切って交際を続けるアクアと、本当のカップルになりたいあかね。お互いに見ている先が違うようなぎこちない関係だった。

第2期で舞台「東京ブレイド」の稽古が始まると、2人の距離感はだんだん変化していく。アクアがアイのトラウマを思い出して倒れたとき、介抱するあかねから感じるあたたかさ。アクアの母親がアイである真実に気づいた場面では、あかねはためらう素振りも見せずに彼を抱きしめ涙を流した。

心理学を勉強していたこともあり、あかねは他人に対する興味や関心が人一倍大きいのだろう。アクアだけではなく憧れの存在だった有馬への感情も重いと視聴者から声があがる彼女。人を殺して復讐しようとしているアクアに「一緒に殺してあげる」と言い切るその愛は、良いほうにも悪いほうにも転がりそうな危うさがある。

アクアの感情もゆっくりと変化が

第1期と第2期ではヒロインが変わったかのように描き方が変わる本作だが、ここで有馬とあかねに対するアクアの心境にも注目したい。感情演技をするために、過去のうれしかった出来事を思い出す場面だ。

アクアの脳内でまっさきに浮かんだのは、恋愛リアリティショーの仲間たちに加えて幸せそうに笑うあかねの姿。続いてアクアとキャッチボールをしたり楽しそうに話す有馬の姿が思い浮かぶ。

うれしかった記憶を思い出すとき、すぐに出てくる人こそが大事な存在ではないだろうか。ビジネスカップルだと割り切っていたころのような淡白な感情ではなく、ゆっくりとだが彼のなかで変化があるように思う。ただ、有馬の笑顔が思い浮かんだ後、アクアの目元の力みがゆるむような描写も。どちらとも取れるニクい演出だ。

“有馬派”と“あかね派”でそれぞれのシーンの映り方が変わるのが『【推しの子】』の面白さのひとつ。そして、アクアとくっつくにしろしないにしろ、2人には幸せになってほしいと願ってしまう。不穏でスリリングな物語のなかで織り成す恋愛模様に今後も要注目だ。

【推しの子】
ABEMAでは『【推しの子】』第2期を毎週水曜夜11時より地上波同時・無料最速で配信。
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
［番組URL］https://abema.tv/video/title/25-240?s=25-240_s2&eg=25-240_eg0
【(C)赤坂アカ×横槍メンゴ／集英社・【推しの子】製作委員会】

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ライター：まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。X：@kaku_magari