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現代の闇とリンクする“不利益” NHK『虎に翼』に高い評価が集まる理由

  • 2024.8.24

「永遠を誓わない、だらしない愛」を目指した寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)は、婚姻届ではなく“遺言書”を取り交わすことで、彼らだけの婚姻関係に落ち着くことを決めた。8月19日〜23日に放送された第21週「貞女は二夫に見えず?」では、その一部始終を丁寧に描き出す。いわゆる事実婚をした二人の選択は、新たな幸せの可能性と、波乱の予感に満ちていた。

夫婦別氏制度、事実婚……幸せな婚姻関係とは?

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『虎に翼』第21週(C)NHK

航一からプロポーズされるも、「佐田」ではなく「星」に氏(法律上は「姓」「名字」は「氏」と呼ばれているため、以降これに倣う)を変えなければならない可能性を前に、足踏みしてしまう寅子。現代になぞらえると「選択的夫婦別氏制度(選択的夫婦別姓制度)」の可否を思わせる内容であり、寅子や航一はどんな選択をするか、視聴者の目を引いた。

入籍すれば、夫婦のどちらかが夫または妻の氏を名乗らなければならなくなる。この場合に発生する“不利益”は現代にも引き継がれており、変更手続きの煩雑さを理由の筆頭に「選択的夫婦別氏制度を取り入れるべき」といった声が止まない。

寅子は、自分さえ折れればすべてが丸くおさまると考え、航一と入籍しようと決意。しかし、航一は「お互いが考えていることを思いのままに書いた遺言書を取り交わして、それを、僕らの婚姻届の代わりに」「これをもって、夫婦となったことにしませんか?」と提案した。

その後、明律大学の法学部でともに勉学に励んだ同志たちが集まり、寅子と航一の結婚式を模した“裁判”を実施。法律上の夫婦となったわけではないが、彼らはいわゆる内縁関係(事実婚)におさまった形となる。

「選択的夫婦別氏制度」や「事実婚」など、従来の婚姻関係とは違う、新しい結婚の形を真正面から描く『虎に翼』。轟(戸塚純貴)の性自認にまつわる描写や、トランスジェンダーを公表しているシンガーソングライター・俳優の中村中を起用するなど、これまで見えなくされていた存在に光を当てる姿勢に、高評価の声が集まっている。

寅子たちがぶつかる新たな“障害物”

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『虎に翼』第21週(C)NHK

旧友たちに祝福された寅子、航一、優未(毎田暖乃)。第22週「女房に惚れてお家繁盛?」では、星家で暮らすことになった寅子と優未の様子が描かれる。予告動画から察するに、またもや一波乱巻き起こりそうな予感だ。

これまでも、航一の息子である朋一(井上祐貴)や娘ののどか(尾碕真花)が、自宅に遊びにやってきた寅子・優未親子に不審な目を向ける様子が描かれていた。表面的には寅子たちを迎え入れている様子ではあるけれど、やはり亡くなった実母に想いを馳せずにはいられないのだろう。

これまでまったく違う“文化”で育ってきた者同士が、新しい生活環境において、どれほど上手く関係を構築していけるのか。結婚は恋愛とは違い、家同士が合わさることで“親戚”と呼ばれる新たな集団が形成される。寅子、航一、優未のあいだでは是とされていたことが、拡大した集団にも受け入れられるかどうかは、わからない。

星家で暮らすことになった寅子と優未は、どんな困難の渦中に迷い込むのか。これまでも、さまざまな人間関係に揉まれてきた二人だからこその、考え抜いた決断をしかと見届けたい。



NHK 連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_