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「嘘や騙し合い」は一切ナシ “全員男性”の恋愛リアリティ番組が評価されるワケ

  • 2024.8.24

大学生のダイやアーティストのシュン、モデルのリョウタ、料理人のカズトなど登場人物が全員男性のNetflix恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』。7月30日に最終回が配信されたが、その後もこの番組についての言及が止まらない。恋愛リアリティ番組としてどんな新しさがあるのか、とくに注目されたダイとシュンの関係性、今後新たに期待する恋愛リアリティ番組の在り方について触れたい。

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Courtesy of Netflix

リアルだけど、和やかであたたかな恋愛リアリティ

恋愛リアリティ番組といえば、フジ系列『あいのり』(1999〜2009)からブームの火がつき、その後もさまざまなスタイルで恋愛模様を追ってきた、エンターテイメントのなかでも一大ジャンルとして認識されている。

直近では『バチェラー・ジャパン』シリーズ(Amazonプライム・ビデオ)や『オオカミくんには騙されない』シリーズ(ABEMA)など、インフルエンサー、モデルやタレント、俳優の卵などが出演し、いわゆる知名度アップを狙った演出などもみられるのが特徴。視聴者もそれありきで楽しんでいる節がある点を含めても、一種のムーブメントと言える。

Netflix『ボーイフレンド』は、男性同士の恋愛を追ったリアリティ番組。もちろんメンバーは全員男性である。恋愛模様にまったく絡んでこないメンバーがいたかと思えば、約1ヶ月の短い共同生活の間で出入りするメンバーが結構いたりと、同性同士ならではのリアルな恋愛模様が描かれている、と言及する声もある。

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Courtesy of Netflix

『ボーイフレンド』が話題となった理由の一つとして、恋愛リアリティ番組にどうしてもありがちな駆け引きや、見えないところで嘘をついたり騙したりなど、他者を陥れる心理描写が少ない点が挙げられる。

一人の男性に対し、複数の男性が想いを寄せるケースはあるものの(とくに料理人のカズトの人気っぷりにはコメンテーター陣も注目していた)、他者を落として自分を上げる、などといったドロドロした展開はない。

一人ひとりが真摯に互いと向き合い、嬉しいことや楽しいことはしっかり言葉にして伝え、反対に心がモヤモヤするような不安があれば、ツーショットの時間をとって誠実に開示し合う、といったことを繰り返していた。

途中で参加したメンバー・イクオが、とあるきっかけで気まずくなっていたダイ・シュンのために一肌脱ごう、と暴走してしまう場面などもあるが、二人のためにできることをしたい、と思ったがためのすれ違いだった。優しい人たちが集まった優しい恋愛リアリティ番組。ドロドロした駆け引きは苦手、といった方にこそおすすめしたい。

ダイとシュンのやりとりに“ヤキモキ”?

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Courtesy of Netflix

『ボーイフレンド』の見どころの一つは、なんといってもダイとシュンのやりとりだ。ダイはとてもストレートに感情表現をするタイプで、ほぼ一目惚れでシュンに想いを寄せた瞬間、止められない恋心をアピールし始める。

一方、シュンは過去の恋愛にトラウマを抱えており、なかなか積極的にはなれないタイプ。くわえて、些細なきっかけで相手(今回の場合はダイ)のなかに“イヤな部分”を見つけてしまい、抱え込んで不機嫌になってしまうのだ。シュンの“面倒くささ”は本人も自覚していて、Googleなどで「ボーイフレンド シュン」などと検索すると、サジェストワードで「めんどくさい」と表示されるほどである。

想いが通じ合ったかと思いきや、ダイの知らないうちにシュンが不機嫌になっている。はたまた、一度だけシュンがダイに「友達のほうが上手くやっていけるかも」といった旨を伝えたかと思えば、次の瞬間にはダイに体を寄せて甘えた様子を見せるシュン……。

本当は何を考えているのか、どうしたいと思っているのか腹の底が見えないシュンを前に、ダイは文字どおり翻弄され続ける。その様子に視聴者も心を揺さぶられるわけだが、ダイは頑なに一途に、シュンへ向けた矢印をほかへ外すことはない。

晴れてカップルとなった彼らは、現在も交際中(2024年8月中旬現在)。『ボーイフレンド』を見て、相手に徹底的に向き合い、欠点さえ丸ごと包み込むような恋愛をしたい、と感じた視聴者も多いのではないだろうか。

恋愛リアリティ番組のなかにも、多様性の波が打ち寄せている。女性同士の恋愛リアリティ番組、性別の垣根を超えた恋愛リアリティ番組など、これからもさまざまな形態の恋愛リアリティ番組を期待したい。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_