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ヤクザ・借金・騙し合い…話題の『地面師たち』に引けを取らないネトフリの名作3選

  • 2024.8.13

Netflix『地面師たち』への熱狂が続いている。不動産詐欺師集団「地面師」をテーマに、巨額を動かす「騙しの手法」に肉薄するサスペンスフルなドラマだ。長期休みを利用して鑑賞した方も多いかもしれない。そんな方におすすめしたい、Netflixで観られる映画&ドラマを3作紹介する。

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(C)SANKEI

『ヤクザと家族 The Family』

『地面師たち』にも出演している綾野剛主演の映画『ヤクザと家族 The Family』(2021)。ヤクザの道に進んだ主人公・山本賢治(綾野剛)の視点と、3つの時代を通して描かれる「反社会的勢力」の存在と移り変わりが、なんとも言えない切実さとやるせなさをもって迫ってくる作品だ。

冒頭、男が水中に沈んでいくシーンから始まる理由は、終盤まで見届けると合点がいく。ヤクザという生き方しかできなかった山本の人生と末路。彼の心に最後に去来した感情は、希望だったのか、それとも諦めだったのか。冒頭と終盤がループするように繋がる構成にため息をつきながら、一人の男のままならない命について思いを馳せてしまう。

『地面師たち』と『ヤクザと家族 The Family』を比較すると、どちらも社会の裏側にカメラを向け、暗躍する人間たちの挙動を捉えようとしている点では一致しているかもしれない。

しかし『地面師たち』は、ハリソン山中(豊川悦司)という、どこか超越して浮世離れした、腹の底を探りきれない人物が、この作品の象徴として君臨している。それはどこか、あくまでも虚実として物語を楽しめる免罪符のような役割にもなっているように思える。

『ヤクザと家族 The Family』は、裏社会を描写してはいるが、現実世界を生きる私たちのすぐ隣にいるような、壁一枚挟んだ向こう側で息をしているような生々しさがある。綾野剛演じる山本の苦悩、葛藤、この先をどう生きていくか、どう生きていけるのかわからない不安がスクリーンいっぱいに描写されるとき、ああ、彼の心境は決して他人事ではない、と思わされるのだ。

『ヴィレッジ』

『ヴィレッジ』(2023)は、横浜流星演じる主人公・片山優が暮らす霞門村が舞台。父親が起こしたとある事件によって、優は村のなかに、もっと言えば彼が働くゴミ処理場や違法の仕事、借金を抱える母親の存在に“閉じ込められて”いる

自分が直接的な原因でないにも関わらず、蔑まれ、陥れられ、這い上がる術やきっかけさえわからずに諦めたまま、判を捺したような生活に組み込まれている優。そんな彼が変わるきっかけとなったのは、東京から村に戻ってきた幼馴染・中井美咲(黒木華)の存在だった。

彼女の計らいによって、優はゴミ処理場の広報として働くことになる。最初こそ覚束なく、慣れない様子だった優だが、少しずつ自分らしさや希望を取り戻し、目に光が戻ってくる様子が鮮烈だ。

しかし、光が照らされれば照らされるほど、闇は濃くなっていく。優の後に作業員として入ってきた筧龍太(奥平大兼)が新たなイジメの標的となるなど、100%解決とはいかない展開に、胸が痛む。

希望を取り戻した優が、最後に見る景色とは。そして終盤、美咲の弟である中井恵一(作間龍斗)がとった行動の意味とは。「村」という狭い自治圏で繰り広げられる“崩壊”と“再生”の物語を前に、あなたは何を思うだろうか。

人生のどん底から這い上がろうとする優の目の変化は、どこか『地面師たち』の拓海(綾野剛)にも通じるところがあるように見える。

『インフォーマ』

インフォーマと名乗る情報屋・木原慶次郎(桐谷健太)と、彼から“ポンコツ”とあだ名される週刊誌記者・三島寛治(佐野玲於)のバディものとしても楽しく観られる『インフォーマ』。ジャンルとしてはクライムサスペンスで、裏で動き、相手を騙し、ときには騙される丁々発止の流れには、『地面師たち』にハマったなら確実に没頭できる

何事にも物怖じせず堂々と首を突っ込んでいく木原や、それにオドオドとついていく(ついていかされている?)三島の様子が微笑ましく、コミカルだ。だからこそ、冴木亮平(森田剛)や岡林秀樹(田島亮)ら謎の集団の闇が色濃くなり、その対比が味となっている。

凄惨で、もはや人の心を持っているとは思えない所業を真顔でやってのける冴木を見ていて、芽生える感情は「恐怖」しかない。彼の目的は何なのか、腹の底では何を考えているのか。一ミリも見えてこないからこそ、木原や三島の人間くささが良い緩衝材となってくれるのだ。

『ヤクザと家族 The Family』や『ヴィレッジ』とは違い、本作は全10話構成となっているため、鑑賞するのに少しハードルがあると思われるかもしれない。しかし、1話を観ればあっという間だ。配信や放送当時にリアルタイムで追っていた方も、長期休みを利用して一気見してみてはどうだろう。気づいていなかった伏線に驚かされるかもしれない。

なお、本記事で挙げた『ヤクザと家族』『ヴィレッジ』『インフォーマ』はどれも藤井道人監督作品である。他意はない。『地面師たち』にハマった方なら間違いなく楽しめるダークでスリリングな作品は、と検討した際に出揃ったラインナップだ。藤井道人監督作品なら映画『最後まで行く』(2023)や、ドラマ『アバランチ』(2021)もおすすめなので、未視聴の方にぜひおすすめしたい。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_