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「教育」を「飼育」と一蹴…小雪演じる“受験コーディネーター”の冷酷さが恐ろしすぎる『スカイキャッスル』

  • 2024.8.15

韓国原作の木曜21時放送ドラマ『スカイキャッスル』が、セレブ妻同士の「夫の出世争い」&「子どもの受験戦争」&「謎の突然死事件」を詰め込んだトンデモ展開で、1話放送から盛り上がっている。なかでも、子どもたちの受験に手を貸す受験コーディネーター・九条彩香(小雪)が壮絶だ。

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(C)SANKEI

家庭の教育方針に「教育ではなく飼育」?

誰もが羨む完璧セレブ妻の主人公・浅見紗英(松下奈緒)を筆頭に、才色兼備の二階堂杏子(比嘉愛未)、明るくチャーミングな夏目美咲(高橋メアリージュン)らが登場するドラマ『スカイキャッスル』。

タイトルにも冠されている高級住宅街・スカイキャッスルは、紗英たちのように、医師の夫と名門学校に通う子どもたちと暮らす、セレブ妻たちの楽園のような場所だった。

ちょうど同世代の子どもがいる彼女たちは、夫の出世はもちろん、子どもたちの受験が成功するか否かによっても立ち位置が変わってしまう、ギリギリのところにいる。何がなんでも合格させたいセレブ妻たちは、合格率100%をうたう受験コーディネーター・九条彩香と契約するべく、試行錯誤を繰り返す。

限られた人物しか参加できない「秘密の教育セミナー」でしか接する機会がもてないという、まさに雲の上の存在である九条。契約するのは、見込みある一握りの生徒のみで、契約に至ったあとも「教育方針には一切、口を出さないこと」が条件であるという。

子どもたちの合格を切望する妻たちは、あの手この手で九条に近づき、契約をもぎ取ろうとする。その足の引っ張り合いとも言えるやりとりも巧妙だが、九条の言動がなんともセンセーショナルなのだ。さすが『梨泰院クラス』『六本木クラス』を手がけた制作チームが作り込んだ日韓共同プロジェクトである。

3人のセレブ妻のなかでは、比較的大人しく慎ましやかな杏子だが、夫による子どもの教育方針と合わず、苦い思いをしている。とくに、一つも窓のない子ども部屋で、精神を追い詰めながら勉強を強いるやり方には、どうしても賛同できずにいた。

なんとか九条との面談にこぎつけられた杏子は、実際に子ども部屋を見てもらうことに。夫に面と向かって「教育ではなく、飼育をなさいましたね」と切り捨てる様は、スッキリすると同時に、どこか背中に冷たいものも感じた。

九条の考えていることは読めない。子どものことを考えているようでありながら、合格のためには多くの課題を出し「睡眠時間を削ればこなせる」と平気で口にする。彼女がここまで冷酷な受験コーディネーターになった背景には、母・冴島香織(戸田菜穂)を死に追いやった疑惑をかけられたまま姿を消した、息子・遥人(大西利空)の存在が関連していそうだ。

もう1人のキーパーソン・南沢泉を演じるのは……

九条をめぐる受験戦争のゆくえも気になるところだが、第2話で壮絶な過去が明かされた紗英、そして暴露のきっかけとなった女性・南沢泉(木村文乃)の関係性にも注目したい。

紗英は犯罪者の父がいた過去を隠すべく、改名までして現在のセレブ妻の地位にまでのぼりつめた。義理の母に「嘘つき」呼ばわりされながらも、なんとかたどり着いた夢のスカイキャッスル生活にすがっている。しかし、スカイキャッスルへ引っ越してきた泉の発言によって、その生活が根本から揺らぎかけているのだ。

泉は「一緒に若葉園で過ごした馬場洋子さんじゃない?」と紗英に問いかけた。家庭環境に恵まれなかった紗英は、確かに幼いころ、泉とともに若葉園にいた。しかし、過去を捨て、名前を捨て、スカイキャッスルで夫の出世と子どもの受験合格を願っている紗英にとっては、触れられたくない部分である。

とっさに「人違い」と否定した紗英だが、泉には本能的にそれが嘘だとわかったようだ。彼女も医師の妻であり、腹違いではあるが受験を控える息子もいるので、あまり関係性を荒立てるのは良策ではない。ほどほどの距離を保つことにした矢先、小説家である彼女にとって看過できない話を聞くことになる。

それが、冴島香織の転落死事件だ。前述したように、彼女は突然スカイキャッスルから転落して亡くなってしまった。その犯人が息子の遥人ではないか、という疑惑が持ち上がっている。

もう二度と悲しい事件を繰り返さないように、この話を文章にする使命がある、と泉は静かに決心する。しかし、それが紗英たちとの決定的な亀裂に繋がってしまう。

この物語を客観的に見れば、泉は比較的冷静で、夫の出世や子どもの受験にも必要以上にこだわっていないように見える。少なくとも、ほかのセレブ妻たちからすれば「敵ではない」と見なされているようだ。

しかし、わざわざ人の過去を掘り返し、タブー視されている事件に首を突っ込もうとしているあたり、一癖ある人物のようにも思える。九条と同じように、泉の言動によってセレブ妻たちの“未来”が決まってしまうかもしれない。



テレビ朝日系 『スカイキャッスル』 毎週木曜よる9時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_