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死別後に見つけた“夫の手紙”…『虎に翼』伊藤沙莉が演じる主人公は「だらしない愛」に走り出す

  • 2024.8.10

主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)と星航一(岡田将生)の恋のゆくえに注目が集まっていた第19週「悪女の賢者ぶり?」。8日放送の94回から9日放送の95回にかけて、寅子の戦死した夫・佐田優三(仲野太賀)の秘められていた思いが明らかになるなど、感涙必至の展開が続いた。

お守りに秘められた優三の手紙

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『虎に翼』第19週(C)NHK

売春事件に関与していたと思われる女子学生・森口美佐江(片岡凜)が東大に合格し、高瀬(望月歩)と小野(堺小春)が「友情結婚をする」と報告したり、花江(森田望智)が寅子に会いに新潟までやってきたりと、目白押しの第19週。

しかし、やはり世間の耳目を集めたのは、優三に持たせていたお守りから、彼の書いた手紙が見つかったこと。そして、それを契機に寅子と航一の関係が、一歩進んだことだろう。

優三のお守りに入っていた手紙の存在を、娘の優未(竹澤咲子)は知っていた。「開けてみて」と促され、寅子は初めて優三の「戦地での思い」「自分が亡くなったあとの希望」について知ることになる。

高瀬と小野が「友情結婚をする」と報告を受けたとき、寅子は手放しに喜びはしなかった。ほかの誰でもない自分自身が、優三と「愛情発進ではない結婚」をした。だからこそ、言葉にしにくい葛藤やモヤモヤを抱え込むことになるのではないか、と危惧したのだろう。

確かに、寅子と優三は大恋愛の果てに結婚したわけではない。それでも、二人の間にまったく愛がなかったとは言えない。ただ、タイミングと速度が違っただけにすぎないのだ。

優三から向けられた思いに、寅子が早く気づいていたら。「結婚すれば丸くおさまるから」という理由だけで、結婚に踏み切らずにいたら。二人の歩調を合わせ、同じ速度で愛を育てられる時代であったとしたら。

いくつもの「もしも」に囲まれながら、寅子のなかで醸造されるのは、優三に対して誠実な愛を向けられていたか自信がない、という後悔だったのかもしれない。

優三の書いた手紙には、寅子が弱音を吐ける人、寅子自身を愛してくれる人を見つけてほしい、といった切実な思いが書かれていた。まだ優三のことを愛していて、これからも愛していきたいと思っている寅子。それと同じくらいの強さで、航一とともに生きていきたいと熱望している寅子。

二つの思いに挟まれ、どちらにも踏み出せずにいる寅子だからこそ、読む間にとめどなく涙が流れた。時間差で染み入る優三の愛、思いやり、信頼。まるで、どこかで寅子の心を見守っているかのようだ。

ゆっくりとした速度で、歩調を合わせていく愛

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『虎に翼』第19週(C)NHK

優三の手紙を読んだ寅子は、あらためて航一に真っ直ぐな心境を伝える。いまでも優三を愛していること、これからも愛していくだろうこと。そんな状態で新しい恋愛はできない、と口にするが、帰り際、やはり抑えきれない衝動を吐露することになる。

航一も妻を亡くしている。お互いに大切な人を愛し続けたままで、いまのドキドキする気持ちに向き合ってみる、それの何がいけないのか、と彼は言う。航一は、優三の代わりにはなれない。寅子だって、航一の妻の代わりにはなれない。それを承知したうえで、お互いの存在を受け入れてみるのはどうか、と。

寅子はそれを「永遠を誓わない、だらしのない愛」と表現した。お互いに大事な人がいるからこそ、永遠の愛を誓わない。心地の良い速度と深さで、ゆっくりと歩調を合わせながら厚くしていく愛。その過程に、文句を言える人間はいないだろう。

優三にとっても、また航一の妻にとっても、望んだ未来であるはずだ。そう信じることがまた、寅子と航一の新たな人生と幸せを後押ししてくれるはずだから。



NHK  連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_