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山田涼介演じる"クレイジー教師"に注目が集まるワケ。令和の学園ドラマが新しすぎる『ビリオンスクール』

  • 2024.7.30

『アイデアのつくり方』(ジェームズ・W・ヤング)において、新しいアイデアとは、既存の要素の組み合わせでつくられると書かれている。金曜よる9時放送ドラマ『ビリオン×スクール』も、どこか既視感のある要素が散りばめられているにも関わらず、どこか新しい。これぞ令和の学園ドラマだ、と思わせる理由を考える。

山田涼介+木南晴夏の主従関係

ドラマ『ビリオン×スクール』の主人公は、驚異的な頭脳を持った発明家であり、加賀美グループのCEOでもある加賀美零(山田涼介)。

なぜ学園ドラマの主人公が社長? と思ってしまうだろう。彼の現在の研究対象は超高性能教育用AIプログラム「ティーチ」(安達祐実)であり、ティーチの正式運用を目指して現場のデータを収集する必要がある。よって、彼は身分を隠して絵都学園の教師として潜り込んでいるのだ。

同じく絵都学園の教師となったのが、零の秘書兼ボディガードである芹沢一花(木南晴夏)。零の言動にたびたび疑問を呈し、突っ込むところは遠慮なく突っ込む頼もしい存在だが、零に対する忠誠心は人一倍強い。

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(C)SANKEI

先祖代々、芹沢家は加賀美家に忠誠を誓ってきた。どんなことがあってもそばにいて、身を守るのが役目だと幼少期から教えられてきた、と一花も口にしている。

身分を隠して教師をしていたり、担任・副担任を務めている3年0組(さまざまな問題を抱えた生徒が寄せ集められたクラスとされている)の生徒が窮地に陥った場合、すぐに助けに来たりする構図は、往年の学園ドラマと相違ない。これから少しずつ、問題児たちとも距離を縮め、最後には心を通わせあって終わるのだろう。

どこか既視感を覚えても仕方ないのだが、なぜかこのドラマを新しく感じる理由は、メインキャスト2名の圧倒的な主従関係にある

零は、自分の目的達成のためなら手段を厭わない。彼はあくまで「教育用AIプログラムのデータ収集のため」に3年0組の担任をしているにすぎない。それは一花も同様で、口ではあれこれ言うけれども、最終的に零が「右」と言えば右に行く。この主従関係は絶対で、崩れることはない。

生徒への愛情はなし、そこがいい

繰り返しているとおり、零の目的はあくまでデータ収集なので、問題のある生徒に向き合うときのモチベーションも「新しいデータを取るため」に終始する。生徒一人ひとりへの愛情や思い入れは薄いが、そこがいい。「愛」「情熱」「根性」といった、これまでの学園ドラマに必須だったワードが、すべて陳腐に響く勢いで、零は目的達成のために邁進する。

莫大な資金を持つ加賀美グループのCEOである、という設定も存分に生かされている。

7月19日に放送された第3話では、3年0組内における“スクールカースト”が問題に。カースト制で底辺とされている生徒たちが手を組み、映画祭に自主映画を出品する流れになる。それをおもしろく思わないカースト上位の生徒たちが、紺野直斗(松田元太)に映画制作を中断させるよう命じる。

紺野はもともと、映画制作のリーダー・鈴木司(柏木悠)と友人だった。撮影した映像を消したり、小道具を壊したりすることを画策するも、ギリギリのところで思いとどまる。

その一連の背景を自白させようとした零は、加賀美グループの力を最大限に利用し、ハリウッドから一流の映画制作スタッフを呼び寄せ、本番さながらのエキストラや舞台を整えるのだ。その力の入れようは、大枚で両頬をぶっ叩くような奇想天外さに溢れている。椅子に縛り付けられ、背後で爆発まで起こる状況に、もちろん紺野は耐えられない。

目的達成のためには金に糸目をつけない、クレイジーでわかりやすいキャラクター設定が、このドラマにおいては効果的に作用している。今後、改心した生徒たちは零を慕うようになるだろうが、それさえも彼の手の内だと思うと、ある種のカタルシスを感じる。これぞ令和における学園ドラマの見せ方だ。



フジテレビ系『ビリオンスクール』毎週金曜よる9時放送

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_