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“家族”とは一体何か...『西園寺さんは家事をしない』が掲示する価値観の広がり

  • 2024.7.30

チーム“偽家族”として互いを頼ることができる道を模索する西園寺一妃(松本若菜)と楠見俊直(松村北斗)。『西園寺さんは家事をしない』第3話では、さまざまな角度から家族を捉え直すエピソードとなった。

一妃と楠見が目指す“偽家族”

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火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』第3話より (C)TBS

男手一つでルカ(倉田瑛茉)を育てる楠見を見て、一妃は“偽家族”になることを提案。3人で朝食を共にしたり、一妃がルカの保育園へお迎えにいったりと、互いをサポートする存在として“家族”になろうとし始める。

一妃と楠見は、結婚しているわけでも、互いに恋愛感情があるわけでもない。また、朝と夜の大変な時間だけ行動を共にしているだけで、住んでいるのも別の場所。一般的な“家族”とは異なっていることは明白だ。ただ、一妃と楠見は、互いの得意なこと、苦手なこと、大変なことを理解しあい、日々を懸命に生きていることを認め合っている存在だ。

互いを支える存在が“家族”なのであるならば、先入観なく互いの努力、存在を認めあい、支え合っている一妃と楠見は良き家族といえるだろう。

一妃の存在と対比するように登場する楠見の義母

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火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』第3話より (C)TBS

第3話で一妃と楠見の関係と対比するように登場したのが、楠見の義母・波多野里美(奥貫薫)。楠見の亡き妻・瑠衣(松井愛莉)の一周忌で再会を果たす。

楠見と里美は、義理とはいえ家族だ。しかし、楠見と里美の間には、瑠衣を亡くしたことによる溝があった。里美は、楠見が一妃と“偽家族”になっていることを知り、ルカの世話ができていないのではと責めてしまう。楠見も里美に対して、「もう家族じゃない」という言葉をぶつけてしまう。

楠見と里美には、血の繋がりはない。そして二人を繋いでいた瑠衣は亡くなってしまった。もちろん一緒に住んでいるわけでもない。ただ社会通念上は、一妃よりは“家族”と呼べる存在だ。しかし、離れて暮らしている里美は、楠見の努力や苦労はわからないし、楠見も里美に対して瑠衣を守れなかった申し訳なさがある。義家族という関係だから、瑠衣という互いにとって大切な存在がいるからこそ、複雑な感情がそこにはある。

一妃は、楠見と里美を強引に取りもち、互いが理解しあえるように後押しをした。最後には、楠見から里美を家族と呼び、里美も楠見を息子と呼ぶ。互いの複雑な想いの根底にある、亡くした瑠衣への気持ちが通じあった瞬間だった。

家族を捉え直す物語

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火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』第3話より (C)TBS

第3話について、SNSでは「家族について考えさせられる」というコメントも。『西園寺さんは家事をしない』の中では、“家族”、“家族ではない”、“偽家族”など家族という言葉が多く出てくる。

家族とは一体なんなのだろう。結婚して戸籍上のつながりを得たら、一緒に暮らしたら、家族なのだろうか。しかし、家族という言葉がついた関係であっても、楠見と里美がそうであったように、互いを分かり合えていなければ家族という言葉がある種の縛りになってしまう場合もあるだろう。

一妃と楠見は“偽家族”という形で新しい共同体を築こうとしている。その根底にあるのは互いを支え合いたいという想いだ。『西園寺さんは家事をしない』は、従来の家族という価値観を拡張し、“自分が支え合いたい人とともに過ごすこと”を家族として捉えようとしているのかもしれない。



番組概要:TBS系『西園寺さんは家事をしない』 毎週火曜よる10時

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、施設取材、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202