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朝ドラ『虎に翼』主人公に「疑問の声」が相次ぐ理由 次週の展開は波乱の予感…?!

  • 2024.7.6
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(C)SANKEI

連続テレビ小説『虎に翼』放送開始以来、おそらく初めて、主人公・寅子(伊藤沙莉)に対する視聴者からのブーイングが相次いだ第14週「女房百日 馬二十日?」。最高裁判事を退任する穂高(小林薫)のパーティの場で、お祝いの花束を渡すのを拒否した寅子に、疑問の声がわいた。

寅子が穂高に怒りを向けたのは……

寅子にとって、穂高は恩師だ。明律大学の女子部で学べることになったのも、かつて、父・直言(岡部たかし)を窮地から救ったのも、穂高の力添えがあってこそ。感謝はすれど、祝いの場で怒りをぶつける所以はどこにもないように思える。

寅子の大人気ない態度に対し、おそらく放送以来初めて、彼女に対する視聴者の不満がわいた。

ここまで寅子が穂高に怒りを向ける理由は、どこにあるのか?

7月5日に放送された70話において、寅子はしっかり穂高に向けて「感謝していることに変わりはない」「穂高先生を嫌っているわけではない」と言っている。

きっと寅子は、穂高に対する感謝や尊敬とは別に、彼の心のどこかにある「婦人は婦人の領域で、雨垂れの一雫となればいい」という思いに、ずっと引っかかっていたのではないだろうか。

かつて、法曹界を離れたあと復職した寅子に対し、穂高は「君が仕事をしていることを、ご主人や父上は何と言っているのか?」といった趣旨のことを尋ねていた。本来なら、女性が働くことに対し男性の許可は要らない。そもそも家族のことに立ち入るのは、時代を問わずマナー違反でもある。

穂高は寅子にとって恩師であり、人生を救ってもらった恩人でもあるのだから、少しくらい立ち入ってもよさそうなものではある。しかし、作中ではっきりと明言はされずとも寅子のなかに、穂高に対する違和感が積もっていて、祝いの場で爆発した可能性はある。

確かに、寅子は大人気ない。祝いの場でくらい、必死で「スンッ」を守ってもよかっただろう。

しかし、こうも思う。怒りはいつだって個人的なものだ。「私」が怒っていることを、なかったことにする必要はない。怒っているまま、許さないままでいてもいいのではないか、と。

寅子は「許されないつらさ」を知っている。一度、法曹界から逃げ出したことを、旧友であるよね(土居志央梨)からいまだに許されずにいる。寅子にとって致し方ないことではあったが、よねにとっては、寅子の行動や態度は承服できないものだったのだ。

どれだけ大人気ないと言われようと、理解できないと思われようと、自分だけの利己的な怒りを捨てない。

そんな寅子の頑なな態度は、おそらく第15週、猪爪家の不満が爆発する展開の布石にもなっている。

家族からも猛反発を受ける寅子、キーワードは「84点」

穂高に対する感謝と尊敬は示しつつも、「昨日のことは撤回はしない」とはっきり口にした寅子。その態度は、どこか、自分の言動はどこまでも正しい、という“強すぎる自信”のあらわれのようにも見えてしまう。

穂高は「君もいつか古くなる。自分を疑うことを忘れるな」と言っていた。寅子は、自分の職務に対してはもちろん、家族に対しても柔軟な姿勢を保てるのだろうか。

娘・優未(竹澤咲子)が「84点」と書かれたテストを寅子に見せると、彼女は84点をとった優未を褒めるのではなく、取れなかった16点に目を向けて「次は100点を取れるから!」と励ました(ちなみに、本来は34点だった点数を改ざんしているのでは、という考察もある)。

きっと寅子には、仕事のことばかりで家族との時間を作れていないことに対し、潜在的な罪悪感を持ってはいるのだろう。しかし同時に、足りないところは努力で埋める「上昇志向」でもって、仕事に精を出す自分自身のことも、さもありなん、と思っている。

自分がこれだけ頑張って、こんなふうに成果を出せているのだから、ほかの人だってできるはず。心の底からそう思っているであろう寅子は健全ではあるが、自分と同じようにできない人間にとっては、それは「諸刃の剣」となる考え方だ。

これまでも、寅子に対し違和感を抱いているように見える、優未や花江(森田望智)の視線が伏線として描写されていた。寅子の上昇志向と、猪爪家族の考え方の違いが、ついにぶつかり合ってしまう第15週となるだろう。



NHK  連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_