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まさかの裏切り?ドロ沼展開に梅子が高笑い!朝ドラ『虎に翼』見事な展開にあっぱれ!

  • 2024.6.30

狭い箱にぎゅうぎゅうと押し込められるような生活のなか、身を粉にし、心を殺して夫や家族に尽くしてきた大庭梅子(平岩紙)。そんな彼女が、夫の妾と三男・光三郎(本田響矢)が恋仲だったことを知って、ついに“解放”された。文字どおりの高笑いに、梅子本人はもちろん、視聴者もスッと胸を晴らした思いだろう。

白旗とともに宣言「ごきげんよう!」

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(C)NHK

6月24日〜6月28日まで放送された、連続テレビ小説『虎に翼』の第13週「女房は掃きだめから拾え?」では、寅子(伊藤沙莉)の学友であった梅子の遺産相続問題が描かれた。

二人は久々の再会だったが、まさに泥沼化している相続問題が解決しない限り、手放しで喜ぶわけにはいかない状況が続く。

梅子は、あくまで新憲法に則った自身の権利を譲ることなく、姑や三人の息子たち、妾の元山すみれ(武田梨奈)とも真摯に向き合った。つらい言葉を浴びせられても、状況を冷静に見つめ、言うべきことは言うと決めたその姿勢は、せっかく新しくなった憲法の力を形骸化させたくない思いがあったのかもしれない。

または、弁護士を志し、学友とともに勉強に励んだ過去の自分に、後押しされたのかもしれない。

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(C)NHK

しかし梅子は、より手塩にかけてきた三男・光三郎が、妾であるすみれと恋仲になっていたことを知り、まさに憑き物が落ちたかのように吹っ切れた様子を見せる。予告映像にもあった、気持ちの良いほどの高笑いで、相続の権利を放棄することを宣言したのだ。

すでに亡くなった夫とはもちろん、義母や息子たちとの縁もスッパリ切らせていただく、と笑った梅子の表情は、晴れやかで、青空の爽快さを思いださせる健やかささえ満ちていた。

お互いに、誰のせいにもせず、自分のために生きていきましょう。そんな梅子の言葉は、義母や息子たちに向けて、そして、物語を見守っている視聴者に対しても放たれているように聞こえた。

男女ともに生きやすい世界は、実現するか?

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(C)NHK

梅子のように、自身の生き方を見直した人物が、もう一人いる。寅子の幼馴染であり、ともに暮らす義姉でもある花江(森田望智)だ。

母(花江にとっては義母)・はるが亡くなってしまい、寅子も常に仕事で外に出ている状況において、家を守るのは花江の役割となりつつあった。掃除、家事、洗濯などのほか、きっと彼女はすべてを完璧にこなそうとしすぎて……つまり、はるの代わりを努めようとしすぎて、密かに疲れを溜めていたのだろう。

家庭裁判所のアレコレで忙しく立ち回る寅子の陰で、時折、家事をしながら暗い顔を見せる花江の姿がカットインするたび、SNS上でも「花江が心配」との声が挙がっていた。

しかし、彼女もまた、ある意味“名誉の白旗”を振ったのである。

完璧であることをやめた。良い母、良い妻であろうとすることをやめた。

無理なことは無理と割り切り、手が欲しいところには手が欲しい、と素直に助けを求めることにしたのだ。花江本人が言ったとおり、素直に家族に助けを求められるのが、彼女の良いところでもある。

自分らしく生きると決めた、彼女たちのような女性がちらほらと現れるなか、当時の男性たちは何を思っていたのか。もしかしたら、まるで、自然と優先されていた自分の立場や権利が侵され、損をすると感じる人もいたのかもしれない。

しかし、本来は、性別問わず健やかに生きられる世界が、誰にとっても望ましい世界であるはずだ。誰もが自分らしく生きられる世の中になってほしい。そんな願いは、当時もいまも不変なものなのかもしれない。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_