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『どうする家康』信長(岡田准一)の家康(松本潤)に対する執着は、本能寺の炎でも焼き切れない!(第28回レビュー)

  • 2023.7.30

松本潤が主人公・徳川家康を演じる大河ドラマ『どうする家康』。7月23日に放送された第28回「本能寺の変」では、岡田准一演じる織田信長がついに討たれる。信長と家康の間で生まれていた、ほかに類を見ない不可思議な“縁”と、どこかやるせなさを感じさせる信長の孤独が浮き彫りになった。

※以下ネタバレを含みます。

これまでにない新たな“信長”と“家康”

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誰もが名を知る歴史上の偉人の一人、織田信長。彼といえば、傍若無人で不択手段、天下を取るためにできることはなんでもやったイメージが強い。最期は家臣である明智光秀に討ち取られ、あの「本能寺の変」で命を落としたと伝わっている。

大河ドラマ『どうする家康』が始まった当初から、家康と信長の関係性に注目する声は多かった。とりわけ歴史オタクや大河ドラマファンではなくとも、この二人のこと、そして歴史上の大事件「本能寺の変」を知らない人は少ない。ついに本能寺の変が『どうする家康』で描かれたのだ。

岡田准一演じる信長の豪胆で冷徹な様は、一般的にイメージされる織田信長の像に近い。それに対し、彼に付き従うように、決して強くは逆らえない家康の姿勢は、少々新鮮に映るかもしれない。そして、この二人の、なんとも言葉にできない不可思議な縁も

信長の壮絶な孤独と、家康の喪失

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第28回「本能寺の変」で描かれた信長の孤独は、凄まじかった。幼少期から、人の上に立つべき身分として過酷な教育を課された身。天下に近づくたびに、この手で人を殺めるたびに、信頼できる人間はみるみるうちに減っていく。

信用する人間はただ一人だけ、とする父・信秀(藤岡弘、)からの教えを胸に、確かに蓄積されていく孤独に自ら蓋をした。やがて、人としての心を失いかけた信長は、家康に出会う。

信長の妹であるお市(北川景子)は、家康の元を訪ね、こう告げる。兄にとって、あなたはただ一人の“友”だった、と。

家康にとっては、ただ上から存在を丸ごと押さえつけてくる荒くれ者でしかなかった。後に主君として従わねばならなくなるが、信長のせいで愛する正室・瀬名(有村架純)を亡くしてからというもの、恨みの対象となる。友だなんて、想像すらしていなかっただろう。

そんな信長は、どうせ討たれるなら家康に、と望んでいた。決して言葉にはせずとも、ただ一人の友として、ある種の信用を預けていたのだろう。結局、その望みは果たされない。諸説あるが、多く伝わっているように、信長は家臣の一人である明智光秀の裏切りに遭い、命を落とす。

言葉では言い表せない関係値を築いてきた信長と家康は、分断された。信長の孤独と家康の喪失が如実にあらわれた、伝説的な回。信長の家康に対する執着は、たとえ本能寺の炎をもってしても焼き切れないだろう。この先、家康はどう動くのか。

 

※記事内の情報は記事執筆時点の情報です。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_

イラスト:わんわん(Instagram