「次の飲み会は、ざっこくいにするから手配お願いね」と言われたら、「?」と首をひねってしまう人も多いのではないでしょうか。
岩手県遠野市でよく使われる言葉のようですが、いったいどんな意味かわかりますか?「春になったしそろそろ、ざっこくいしたいね」というふうに使われるそうです。
本記事では、「ざっこくい」という言葉の意味と習慣についてご紹介します。
岩手県遠野市の初めて聞いた方言と習慣
「ざっこくい」について、岩手県遠野市に勤務している50代男性が、こんな体験を教えてくれました。
これは私が岩手県遠野市に勤務していた時のお話です。「遠野物語」で有名な、あの遠野市です。
春先に「職場の飲み会をどこにしようか」と話していた時、現地出身の職員達が口々にこう言い始めたのです。
「『ざっこくい』がいいんでねえか」「『ざっこくい』したいね〜」
「ざっこくい」?同じ岩手県出身でも、花巻市で育った私はまったく耳にしたことのない言葉です。
行きつけの床屋のご主人も「え?『ざっこくい』って、岩手県内ならどこでもやってんじゃないですか?」と当たり前のような返事。
よくよく聞いてみるとこの「ざっこくい」は、遠野市独特の風習だそう。
「ざっこ」は雑魚、「くい」は喰いという意味で、川で捕れる魚をその場で焼いてみんなで食べ、お酒を飲んだりする季節のイベントのことだったのです。
言葉の意味も、その習慣も初めて聞くものだったので、同じ岩手県でも知らないことがあるのだなあと驚きました。
「ざっこくい」の由来とは?
遠野市内には釣りポイントで有名な猿ヶ石川があり、かつては5月上旬あたりに産卵期のウグイが大量に捕れていたそうです。そこへ川漁師たちがやってきて、河原に小屋を建てて捕れたウグイを炭火で焼き、遠野の人たちに売って現金収入にしていたのだといいます。
ウグイという魚は骨が多くておおよそ食用に向いていないのですが、この産卵期の時だけ味が良くなるとのこと。遠野の人たちはそこで魚を食べて、楽しく酒を飲んで語らうという素敵な風習があったそうです。
現在は昔ほどウグイが捕れなくなったので、買ってきた鮎やイワナ、または現地でも有名なジンギスカンなどを食べる形に変化しているということでした。
ほぼ形骸化して言葉だけ残っている風習のようですが、遠野市では「瀬ざっこまつり」というイベントが催されているとのことです。
同じ県内でも知らない文化が…!
同じ県内でも、伝わらない方言があるなんて驚きです。獲れたての魚をつまみに、みんなでお酒を飲みながら語らい合うと、仲間同士の絆がさらに深まりそうですよね。
読者の皆さんが住んでいるエリアでは、同じ県内でも伝わらない方言はあるでしょうか。同じ県民だから伝わっていると思っていても、実は伝わってない可能性があります。自分たちの方言がちゃんと伝わっているか、お互いクイズしあうのも楽しいかもしれませんね。
編集:TRILLニュース編集部
提供:岩手県遠野市に勤務・50代男性
※この記事では媒体で募集し集めた体験談を掲載しています
※お酒は20歳になってから
※画像はイメージです