このドラマを見てからというもの、電車に乗るのが少しだけ怖くなった。金曜ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(以下、ペントレ)は、山田裕貴主演のSFサバイバルストーリー。
朝の8時23分に電車に乗ったら、約30年後の未来に飛ばされてしまった……。そんな衝撃的な展開から幕を開ける本作。8〜9話を振り返りつつ、今後に向けた考察をしてみよう。
無事に元の世界に戻れたが……
萱島直哉(山田裕貴)をはじめとする電車の乗客たちは、電車ごと未来の世界へ飛ばされてしまった。
消防士である白浜優斗(赤楚衛二)、学校教師である畑野紗枝(上白石萌歌)らと、水も食料も限りのあるサバイバル生活をしながら、元の世界へ戻る方法を模索する。
8話では、帰る手がかりである“ワームホール”が出現。大人がじゅうぶんに通れそうなほどの、真っ黒な穴がぽっかりと開いている。
さまざまな検証、そして準備を経てそこに飛び込んだ萱島たちは、無事に現代へ戻ることができた。
しかし、彼らが行き着いたのは2026年5月。2023年よりも3年ほど未来だった。普通なら「たった3年なんて誤差の範囲だろう」と捉えてしまうところだが、ひとつだけ問題がある。
2026年5月は、大災害が起きると想定されている時期の約半年前にあたるのだ。
6月16日に放送された9話では、2026年に戻った白浜たちがふたたび集い、未来に大災害が起きる事実を世間に認めてもらおうと奔走する。
しかし、現実は厳しい。第三者から見たら、萱島や白浜たちは電車ごと姿を消し、3年経ってからいきなり戻ってきた謎の存在だ。話を丸ごと信じてもらえると思うのが、お門違いなのかもしれない。
果たして「大災害」は止められるのか
地球に隕石がぶつかり、人類は滅びる。それが、萱島たちが約30年後の未来で知った事実だった。
実際に2026年にそんな災害が起きる確証はなかったが、実際に彼らがサバイバルした“未来”には人や生き物の姿がなく、建物も文明もない。
これが「災害によって人類が滅びた世界」だと言われれば、納得してしまうほどの、荒涼とした景色が広がっていたのだ。
好奇の目にさらされた萱島たちは、世間に大災害が起こる事実を信じさせることができるか。そして、それを止められるのか。
キーパーソンになると思われるのは、未来に一人だけ残った男・田中弥一(杉本哲太)ではないだろうか。
物語の序盤から単独行動を選び、仲間とは群れずに奇特な行為が目立った彼は、とうとう現代に帰る選択肢を自ら蹴った。未来に置き去りにされたままの彼が、今後の物語に関与しないとは考えにくい。
また、登場シーンこそ少ないものの、確実に存在感を示している蓮見涼平(間宮祥太朗)も無視できない。
彼は隕石や時空の歪み、タイムトラベルについて研究する教授である。これまで萱島たちと直接に関わってはいないものの、彼がきっかけとなって事態が好転する可能性はじゅうぶんにある。
心ない野次馬の相手をするのに疲弊し、こんな世界はなくなってしまえばいい、と自暴自棄になる白浜。常に周りを元気付けてきた彼を、最後の最後で鼓舞してくれるのは、きっと萱島に違いない。
ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_