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「20回以上観た」「セリフまで記憶」1500本超視聴してきたドラマオタクのコラムニストが選ぶ“ベスト平成ドラマ5選”

  • 2023.6.12
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イラスト:熊野友紀子(ホームページ

令和よりも格段に自由度が高かった平成のドラマが今、若者世代にも人気らしい。実際にサブスクでの平成ドラマの検索率が高いという話も聞く。

連続ドラマの視聴本数は1500本を超える私、小林久乃は、昨年末テレビドラマ好きが高じて『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓させてもらった。タイトル通り、平成に放送されたドラマがいかに面白かったのかを綴ったエッセイである。

私はなにか特別な趣味があるわけでもない。ただ中学生くらいから“ブラウン管”に吸い込まれるように、連続ドラマをひたすら視聴し続けている。感覚として、衣食住とそんなに大差がなく“オタク”と呼ばれても違和感ゼロ。

今回はそんな私の「ベストドラマ5選」の紹介をしよう。

毎日頑張りすぎているあなたにも捧げたい、心のサプリメント・ドラマ

日々、仕事や勉強、家事や子育てや介護や療養などなど、頑張って疲れてしまっているあなたにこそ捧げたい、元気を補給できるドラマを3つご紹介しよう。

『踊る大捜査線』

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出典:soraneko/Shutterstock.com

まず推したいのが平成9年から連続ドラマがスタートした『踊る大捜査線』(フジテレビ系列/FOD配信中)だ。

サラリーマンから警察に転職をした、青島俊作(織田裕二)が、いわゆる“所轄”で犯人逮捕に熱量を注ぐ物語。今、日本の警察官の少なからぬ人数は青島に憧れて職を志したのではないか……とさえ私は思う。なんせそれまでの刑事ドラマといえば、いかに格好良く犯人を逮捕するのかがキモ。

そんななか、警察官内にもはびこる、学歴等による格差を描いた『踊る大捜査線』は斬新だった。私も恥ずかしながら青島を真似て、アメリカンスピリットを吸い、カーキのジャケットを羽織った時期があった。

青島以外のキャストにも心を奪われた。「お疲れ様です」と言い合う署員たちに、和久さん(いかりや長介)が言った「疲れるほど働くな」は、今も私の中では至言である。彼がこのセリフを放ってから「お疲れ様です」を言うのが小っ恥ずかしくなって、今も率先して言うことはない。

元気を補給したいときにぜひ見てほしい。青島、マジでいい奴だから。

『魔女の条件』

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出典:maroke/Shutterstock.com

続いては、平成11年放送の『魔女の条件』(TBS系列)。サブスクでの配信もなく、今はDVDの販売もないので、紹介を手短に済ませよう。

こちら、高校教師の広瀬未知(松嶋菜々子)と、高校生の黒澤光(滝沢秀明)による禁断の恋の物語だ。結ばれようとする二人は、一般論を振りかざす大人たちからひたすら逃げる。ただ逃げ切れず、不本意な結末へ……というのがあらすじ。

ただ最終的に二人がどうなったのかは、あきらかにならず、視聴者の想像に任せるという平成ドラマらしい演出で終わった。美しいタッキー(滝沢秀明)も、絶妙なタイミングで流れてくる宇多田ヒカルの主題歌「First Love」も100点満点だった。

『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』

美青年主演モノが続く。平成30年放送の『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系列/paraviにて配信中)には、とんでもなくときめいた。

平成17年に話題をぶっちぎった、井上真央・松本 潤出演の『花より男子』(TBS系列/paraviにて配信中)の続編にあたる本作。庶民であることを伏せて、セレブ高校に通う江戸川音(杉咲 花)と、資産家の息子である神楽木晴(平野紫耀)による、学園ラブストーリー。ここに音に想いを寄せる馳天馬(中川大志)も参入してくるのだから、もう毎週火曜の夜は大興奮。

大昔『マーガレット』や『りぼん』を読み漁って、ありえない恋愛物語に浸っていた10代の自分が復活。このドラマはそんな懐古と、勝手な妄想が混ざり合っているのが醍醐味だった。

このドラマで改めて思ったのは主題歌の強さである。『魔女の条件』の主題歌「First Love」と同じく、物語が盛り上がるときに流れてくるKing & Princeの「シンデレラガール」が、ドラマに陶酔する中年の心を後押しした。

まさか40代にもなって、ドラマを見るために朝から仕事を踏ん張り、急いで帰宅して風呂まで入ってリアタイを心待ちにする日が来るなんて思いもよらず。本当に人生、何が起きるのか分からない。当時、周囲の女性にも同じように夢中になる現象が起きていた。

『花のち晴れ』、疲れた心身によーく効きます。よーく眠れます。

女性の生き方の概念を覆した、ヒューマンドラマ2選で明日からまた頑張ろう

平成のドラマにも女性の生き方の概念を覆して、私、私たちに力を与えてくれたドラマが数多くある。その中から2つ選んでご紹介しよう。

『最後から二番目の恋』

「いい歳」と呼ばれるようになっても、世間の不文律との対立は続く。時には大人だって本音をさらけ出したい。そんなぼんやりとした願望を叶えてくれたのが、平成24年放送の『最後から二番目の恋』(フジテレビ系列/FOD配信中)だった。

主演は我らがキョンキョンこと、小泉今日子だ。ドラマ制作に情熱を注ぎ、テレビ局に勤務する吉野千明(小泉今日子)。45歳、未婚、仕事柄や元来の気質で姉御肌の負けず嫌い。でも寂しがり屋の面もある。移住先の鎌倉で、長倉和平(中井貴一)とその家族に出会い、少しずつ心が解凍されるように素直になっていく。

「大人になるということは、それだけ多くの選択をしてきたということだ。何かを選ぶということは、そのぶん、違う何かを失うということ」。千明によるナレーションは、いつも疲弊した心に響いた。彼女は、私たちの代弁者だ。

ドラマではあるけれど、自分を重ね合わせて夢中になっていたことを覚えている。そう思った視聴者が多かったのか、シーズン2やスペシャルが放送された。48歳の独身女がヒロインになる日が来るとは、10代の私には思いもよらなかったことだ。

また、現在放送中の『風間公親―教場0―』(フジテレビ系列)に、長倉真平を演じていた坂口憲二が、病気療養を経て俳優復帰をした。これはひょっとしたら『最後から二番目の恋』のシーズン3も期待できるかもしれない……と、個人的には期待を膨らませている。

『29歳のクリスマス』

そして私が人生を変えられて、もう20回以上は見ている大切なドラマがある。それが平成6年放送の『29歳のクリスマス』(フジテレビ系列/FOD配信中)だ。

アパレル会社に勤務する矢吹典子(山口智子)が、世間体の結婚や地位にゆらぎながらも「これが私の人生だ」と風を切って歩いていく物語。そこには今井 彩(松下由樹)と、新谷 賢(柳葉敏郎)の共同生活をする友情もあった。

あらすじを聞くだけでは、どこにでもありそうなドラマだと流されてしまうだろう。なぜ私が影響を受けたかといえば、当時、まだ出身地の静岡県浜松市に住んでいたことが大きい。地方というのは同調と強調を求められるコミュニティーだった。10代後半から当たり前のように、未来の花嫁像を周囲から求められて育つ。選択肢を知らない未熟な私は、結婚シンドロームの大網に引っかかっていた。それが『29歳のクリスマス』を見て「あ、大人になったらこういう生き方もできるのか」と気づかされた。その結果が現在も独身である。

回想してみよう。当時、山口智子のドラマはいつも女性の生き方の半歩先をいく新しさがあった。例えば平成5年放送の『ダブル・キッチン』(TBS系列)では、今では普通になった、働きながら育児をする女性を好演。

『29歳のクリスマス』では、道理に合わなければ上司を相手にしても盾をつき、時には殴ることも……。高収入の伴侶を得ることが美徳とされていた時代でも、自分が相手を本当に好きかどうかで決める。

平成8年放送の『ロングバケーション』では(フジテレビ系列/FOD配信中)では、仕事もなにもかも失った葉山 南役を好演。さらりと年下男性との恋愛を成就させた姿に、私のような年下好きがどれだけ救われただろうか。

ありがとう、山口さん。

と、並べてきたオタクによるベスト・オブ・平成ドラマ。お時間があるときのサブスク視聴の参考にぜひお役立てください。


コラムニスト:小林久乃(Twitter:@hisano_k、HP:https://hisano-kobayashi.themedia.jp/

地元浜松市のタウン情報誌、都内の出版社勤務を経て独立。雑誌媒体でのライター、単行本の編集者として活動中、出版社から執筆のオファーを受けて、2019年『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』で作家デビュー。その後『45cmの距離感』と続く。10代から生粋のドラマオタクであり、多数の媒体でドラマや映画のコラム、レビューを執筆中。エンタメに関する脳内データ量と、独特の視点が認知されて『ベスト・オブ・平成ドラマ!』も上梓。現在は紙、Web、ラジオと編集部員時代の経験を生かしたプロモーション業で粛々と活動中。静岡県浜松市出身。40代、正々堂々の独身。

イラスト:熊野友紀子(HP:https://www.kumagoya.net/

※記事内の画像はイメージです。