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「木を切り倒す!?」ドイツのバレンタインデーで見かけた“衝撃の光景”とは

  • 2023.2.14

ベルリン在住のライター、河内秀子です。

東京からこの街に移り住んでから、はや20年以上。バレンタインデーを前に、日本とドイツの恋愛事情を考えてみました。

人それぞれ千差万別、という点では、あまり違わないような気もするのですが、シャイなようでいて一部には暴走列車(?)もいたりして…。

今回は、ドイツの恋愛事情のお話です。

バレンタインデーの風習は、東と西で違う?

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筆者撮影。

“欧米”では、バレンタインデーは「愛する人に贈り物をする日」と言われることもありますが、ドイツではどうなのでしょうか。

実はドイツのバレンタインデーの歴史は浅く、第二次世界大戦後に西ドイツに駐屯していたアメリカ軍から広まったと言われています。

1950年にニュルンベルクで初めての「バレンタイン・ダンスパーティ」が開催されたのがきっかけだとか。旧東ドイツ地方で一般的に知られるようになったのは、1990年の東西統一以降。東西の温度差もさることながら、そもそもドイツの人は、愛を表すのに特別な日は必要ではないという意見で、大半の人がバレンタインデーは、商業的な背景から作られたイベントだと考えているようです。

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筆者撮影。ここ数年、ドイツでもクリスマスが終わると、バレンタイン商戦が見られるようになりました。

その反面、5人に1人のドイツ人が、バレンタインデーに50ユーロ以上の贈り物をするという市場調査も。プレゼントにはブーケを添えるのが定番で、この日お花屋さんの前には行列ができています。しかし贈り物よりも、一緒に過ごす時間が大切と考える人も多いよう。

「これまでにバレンタインに贈られた最悪のプレゼント」のアンケートを見ると、男女ともに家具、次いで家電がトップ。愛の証として家具を贈る…日本ではいまいちピンとこない感覚です。

木を切り倒して、家の前に立てて、愛の告白!?

「ドイツ人(男性)はシャイ」というのを、よく耳にします。

周囲にいるドイツ人男性陣を見渡してみると、確かにおおむねシャイという印象は受けるのですが、簡単には括れない気もします。しかも愛の告白となると、内気をこじらせて激情がほとばしってしまったのか?!とツッコミを入れたくなるようなことも。

ある時近所のアパートの屋上から、「♡イッヒ・リーベ・ディッヒ○○♡」という愛の告白の垂れ幕がかかっているのを発見しました。どうやら向かいに住む女の子に宛てたもののよう…。駅や街灯に、一目惚れした知らない相手に向けた貼り紙を見かけることもありました。

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筆者撮影。6月1日、メイポールを撤去する人たち。プファルツ地方で目撃。

そして、極め付けはマイバウム(リーベスマイエン)の風習です。

ドイツ南部や西部で、古くから行われている伝統行事「マイバウム(5月の木、メイポール)」。5月1日に大きな木を切って、村や町の中心にある広場に立てて、飾り付けをして春を祝うもので、ヨーロッパ各地にこの風習が残っていますが、ドイツの一部の地方では、これが愛の告白に使われているのです。

それはドイツ南西部、ラインラント地方、プファルツ地方。

4月30日に若い男性が白樺の木を切り、クレープペーパーで飾りをつけ、最後にハート型のプレートに好きな子の名前を入れたものを添え、その子の家の前に立てかけておくのです。私が話を聞いた男の子曰く、人気がある子だと場所が取り合いになり、マイバウムがライバルに盗まれてしまうこともあるそうで、「友達と一緒に夜通し見張った」とのこと。このマイバウムは1か月後に撤去され、愛の告白にOKする場合には、食事に誘うのが一般的だとか。

もともとは村の内部での結婚を推奨し、未婚の女性を競り落とすための風習だったと言われるとモヤモヤしますが、男友達や父親と一緒に森に出かけて白樺の木を切り倒し、トラックで運んでくる。その行程自体が楽しいので、最近では告白の方は二の次という噂も。

30歳まで独身だったら大聖堂の階段を掃除?

音楽隊で有名な北ドイツ、ブレーメンでは「30歳の誕生日を独身で迎えたら、大聖堂前の階段を掃除し、誰かにキスしてもらえるまでやめられない」という公開処刑のような風習もあります。興味のある方は、Domtreppenfegen(大聖堂の階段掃除)で検索してみてください!大量の写真が出てくることでしょう。

この風習はブレーメン発、北ドイツのいくつかの地方で見られるものでしたが、最近では海を渡り、イギリスやスペインにまで広がっているそうです。

恋愛の風習は、“ドイツ”の中でも地方や街によって、本当にさまざま。ドイツはこう!とは簡単には言えないのですが、その多彩な文化を知ることが、海外暮らしの面白さでもあるのです。

まとめ

ドイツでは近年、バチェラーパーティも人気。花嫁や花婿は、居酒屋から居酒屋へとハシゴする道すがら、ライターやお菓子などを町の人に売りつけ、パーティの費用を捻出します。私は「僕の脱毛1ユーロ!」と、毛脛を見せられ、脱毛テープを押し付けられたことがありました。なぜ私がお金を払うのか!?

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筆者撮影。

結婚式には、二人が力を合わせて一緒に問題を解決できると見せるために、ノコギリで巨大な木の幹を切ったりといった風習も。ちなみに私は結婚式には巨大なバウムクーヘンを注文し、これを切り出してパーティのお客様に振舞いました。「このケーキは日本の伝統的なお菓子なのか?」と聞くドイツ人が多かったことも、衝撃でした。バウムクーヘンはドイツのお菓子だけれど、実は一部地域のお菓子!なのでした。そんな話もいつか、お伝えできたらと思います。

 

参照先:ドイツ公共放送ARD 「バレンタインデーの伝統はどこから来たの?」、ドイツにおけるバレンタインデーギフトの支出傾向(2020年)、ドイツ国営国際放送DW「ドイツの愛の風習マイバウム」



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筆者:河内秀子(Twitter
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。
#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題
編集:TRILLニュース