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「家族と俺、どっちを取る」と迫った彼を実家に連れていくと→食卓で私より先に口を開いた母

  • 2026.11.7
ハウコレ

初めて来たはずの家で、彼は迷わず洗面所のほうへ歩いていきました。食卓で「この前の話だけど」と切り出すと、私より先に母が口を開きます。その目は、私ではなく彼に向いていました。

改札を出ると、彼は手土産の紙袋を持ち直しました。実家の最寄り駅で降りるのは、彼にとって初めてのはずです。母に会わせると決めたのは、電話であの言葉を言われたからでした。

取り消したデートのあとで

母が1人で暮らす実家へは、月に2回ほど帰っています。
電球の交換や重い買い物の手伝いは、昔から私の役目です。
電車で2時間かかるので、帰る週末は彼とのデートを断ることになります。
その週も、母に頼まれた用事があってデートを取り消しました。
電話口で謝ると、彼は少し間を置いて言いました。
「家族と俺、どっちを取る」
付き合って2年、彼がこんな言い方をしたのは初めてです。
家族と恋人は、比べるようなものではないはずでした。
言い返したい気持ちをこらえて、「今度、母に会ってから決めて」と答えました。
電話を切ったあとも、あの声はしばらく耳から離れませんでした。

初めてのはずの家

玄関で母が出迎えると、彼は深く頭を下げました。
差し出した紙袋の中身は、駅前で買ったという焼き菓子です。
靴をそろえた彼は、私が案内するより先に洗面所のほうへ歩いていきます。
「場所、分かるの?」
「なんとなく」
彼はそれだけ言って、手を洗い始めました。
食卓には、彼の好物の肉じゃがが並んでいます。
彼の好みを母に話した覚えは、一度もありません。
食事が進んだところで、私は箸を置きました。
あの言葉への答えを、ここで出すつもりで来たのです。
「この前の話だけど」
そう切り出した私より先に、母が口を開きました。

母が先に出した答え

「その話なら、もう答えは出てるのよ」
母はそう言って、彼のほうを見ました。
いつもどおりの穏やかな声なのに、言い方には少しも迷いがありません。
彼は背筋を伸ばし、膝の上で手を組んでいます。
「先に答えたのは、うちのほうだから」
何の話なのか、まるで分かりませんでした。
母と彼が、いつそんな話をしたのでしょうか。
2人の顔を見比べても、どちらも私と目を合わせようとしません。

そして...

湯気の立つ肉じゃがを前に、しばらく誰も箸を動かしませんでした。
やがて母が、湯のみを置いて私に向き直ります。
「この人、この前1人でここへ来たのよ」
初めて聞く話でした。
私は肉じゃがの皿に目を落とし、隣の彼を見ました。彼は膝の上で手を組んだままです。
どっちを取るのかと迫った彼が、なぜ私より先に、1人で母を訪ねていたのでしょうか。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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