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「あなたのことも、ずっと聞いてたわ」亡くなる5日前に父と入籍した女性。相続の話し合いで語られた思い出に背筋が凍った

  • 2026.11.6

葬儀場で初めて知った父の再婚

父と母は長年仲が悪く、父が重い病気になったころに離婚しました。

そして、その半年後に父は亡くなりました。

葬儀の日、僕は喪服のまま、昼の葬儀場のロビーで弔問客にあいさつをしていました。

受付の横には、子どものころの僕が父と青い自転車の前で撮った写真が飾られていました。

ひと通りあいさつを終えたころ、母と同じくらいの年齢の女性が近づいてきました。

喪服姿のその女性は、写真をちらりと見ると、僕に向かってにこやかに話しかけてきたのです。

「お父さんは最後まで私が見ていましたから」

突然の言葉に戸惑い、僕は尋ねました。

「失礼ですが、父とはどういう…」

「妻です。亡くなる5日前に、籍を入れたんですよ」

僕は耳を疑いました。父が再婚していたなんて、そのときまで何も知らなかったのです。

女性は笑顔のまま、父の最後の日々について話しつづけました。

父のそばにいたのは自分なのだと、強調されているように感じました。

その夜、母に電話で再婚のことを伝えると、しばらく沈黙が続きました。そして母は、短く答えたのです。

「そう。あの人らしいわね」

相続の話し合いで聞かされたこと

父の保険金は800万円ほどありました。

しかし、医療費や父が生前に作った借金の返済に充てられ、ほとんど残りませんでした。

それでも、父の子である僕と、亡くなる直前に入籍した女性は、相続について話し合う必要がありました。

別の日の昼、僕は小さな会議室で女性とテーブルをはさんで向かい合いました。

書類をめくっていると、女性がにこやかに口を開きました。

「お母さんと結婚していたころから、ずっと一緒だったのよ」

「…え?」

「あなたのこともね、ずっと聞いてたわ。小さいころの話も、全部」

女性は書類から目を上げ、父から聞いたという僕の思い出を楽しそうに話しはじめました。

父に自転車の乗り方を教わったこと。公園で転んでひざをすりむいても泣かなかったこと。

そして、帰り道に父がアイスを買ってくれたこと。

どれも僕にとって、父との大切な思い出でした。

「あの青い自転車、すぐ乗れるようになったんでしょう。お父さん、うれしそうに話してたのよ」

僕は返す言葉が見つかりませんでした。

すると女性は、懐かしそうにこう続けたのです。

「懐かしいわね。あの日は暑かったものね」

その言い方に、僕は思わず女性の顔を見ました。

父から聞いただけのはずなのに、まるで自分もあの日の公園にいたかのような口ぶりだったのです。

僕の知らないところで、自分の幼いころの出来事が、ずっとこの女性に語られていた。

そう思うと、血の気が引くような感覚に襲われました。

僕は目の前の書類を見つめたまま、黙っていることしかできませんでした。

相続の話し合いは時間もお金もかかりましたが、ようやく終わりました。

それ以来、女性とは一度も会っていませんし、連絡が来ることもありません。

それでも今、子どものころの公園や青い自転車を思い出すと、父との楽しかった記憶に、あの女性のにこやかな声が重なってしまうのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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