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「人生を手放さない」――浅野温子、病に倒れた角川総監督も支えた『星の教室』“ドストレートなセリフ”に込めた思い

  • 2026.11.5
浅野温子 クランクイン! 写真:高野広美 width=
浅野温子 クランクイン! 写真:高野広美

角川映画を立ち上げ、次々と話題作を世に放ってきた角川春樹が総監督を務めた『星の教室』。角川作品に長く関わってきた浅野温子は、夜間学級を舞台にした本作のオファーを受け、「こういう王道をおやりになるんだ」と驚いたという。演じた役を「強い人」と語る一方、自身は「全然前向きじゃない」と明かす。撮影現場では、主演の桜田ひより以外は「みんなマイペース」だったと笑い、ベテラン俳優のまさかの“カンニング”秘話まで披露。気取らない語り口で、作品の舞台裏を明かしてくれた。

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■角川春樹総監督の選んだ題材に「ものすごく大きな驚きでした」

――先ほど写真撮影を拝見していましたが、浅野さんのかっこよさにしびれました。普段、筋トレなどされているのですか?

浅野温子(以下、浅野):全然してないです(笑)。筋トレって食べ物が8割って言うでしょ。だから鶏肉とブロッコリーにしなきゃいけないんですけど、それだけじゃ嫌なんですよ。スパゲッティも食べたいし、納豆も食べたいし(笑)。

――たとえば早歩きしているとか。

浅野:してないです。ただ、私は『古事記』なんかを題材にした“よみ語り”の活動をずっとやっているんです。その公演が90分あって。舞台の上でぐるぐる歩いたりするので、それがいいのかもしれません(笑)。

――“よみ語り”では伝える側ですが、学び直しがテーマのひとつである『星の教室』では、夜間学級で学ぶ生徒のひとりを演じました。今回のお話があったときの印象は?

浅野:正直、この題材を角川春樹さんが選んだことが、ものすごく大きな驚きでした。ド正論で。角川さんの作品は、ドンパチのある大きなものが多いのに、こういう王道をおやりになるんだと。

■ドストレートなセリフと向き合った役

――浅野さんが演じた山西蕗子さんは、主人公のさやか(桜田ひより)が夜間学級に通うきっかけを作るひとりです。中国残留孤児であり、多くを背負ってきた人ですが、とても明るくて魅力的な方です。どう心を寄せて演じられましたか?

浅野:台本に明るいと書いてあるから、私はそうやっているだけ(笑)。妙にテンションを上げているつもりもなくて、脚本のまま演じた、という感じです。

――蕗子さんがみんなの前で作文を発表するシーンは、とてもエモーショナルです。「明日を諦めない。人生を手放さない」という言葉は、昨年、脳梗塞で倒れ、今もリハビリを続けている角川総監督の支えにもなっていたとか。

浅野:みたいですね。撮影しているときは全然知りませんでした。「ああ、そうだったんだ」って。ただ、大事なセリフなので観ている方たちに「伝えなきゃ」とは思っていました。ものすごくドストレートなセリフだから、迷ったら伝わらないかもしれない。いろいろ考えないで、「蕗子はこうなの!」とストレートにぶつけました。

――中川龍太郎監督(『わたしは光をにぎっている』『恒星の向こう側』)からは、何か演出はありましたか?

浅野:実は一度、「もうちょっと深く、弱さだったり、含みのある感じで」と言われたんです。「わかりました」とやってみたんだけど、すごい勢いで「元に戻してください!」と言われて。どうやら全然できなかった模様です(笑)。

■自分は「言葉にできない」けれど、蕗子さんは「できる人」だと信じた


――「人生を手放さない」というメッセージは、浅野さんご自身にも響きましたか?

浅野:蕗子は強い人だと思いますし、私の周りにも、共演の(中尾)ミエさんみたいに強い人がいます。でも、私は全然前向きじゃないんですよ。

――そうなんですか?

浅野:ここまで強くないです。「人生を手放さない」なんて、言葉にできないもん、私は(笑)。でも蕗子は、できる人だと思ってまっすぐにやりました。彼女は、かつて手を離された過去を持つ人です。だからもう二度と、自分で“大切なものは手放さない”と思っている。その核が抜けたら作品を壊してしまうし、蕗子という人の説得力がなくなるので、そこはすごく大事にしました。

――蕗子さんの思いがまっすぐに伝わってきました。

浅野:現実の社会にも、こういう人っていると思うんです。表に見えていない“蕗子さん”たちに、「伝わっていますよ」と言ってあげたいです。

――ほかに、浅野さん自身の印象に残ったエピソードはありますか?

浅野:さやかの母親役の(仙道)敦子ちゃんは、本当に大変だっただろうなと思います。台本を読んで、これは誰がやるんだろうと思ったら敦子ちゃんで、「うわぁ」って(笑)。いじめを受けた子と、その親が、問題に一生懸命になる話はあっても、親子のその先までを描くのは、なかなかないですよね。それをやりきった敦子ちゃんと(父親役の)萩原聖人くん、ひよりさんは、本当にすごいと思います。

――親の目線でも、役者としても、大変だと感じたと。

浅野:答えの出ない役ですからね。なかなかきついですよ。ああ、私は蕗子の役でよかったと思いましたね(笑)。

■スマホで歌詞をカンニング!? マイペースな現場と、読者へのメッセージ

――夜間学級のシーンが本当に楽しそうでした。キャストは年齢の幅もあったと思いますが。

浅野:何の違和感もなかったです。一番大人だったのは、さやか=ひよりさんで、あとのメンバーはみんなグダグダ(笑)。それぞれ勝手にマイペースでした。

――劇中では「見上げてごらん夜の星を」を歌う場面もありました。歌手でもある中尾ミエさんはもちろんですが、みなさんなじみのある曲だったのでしょうか。

浅野:それが、あんまりなかったんです。ちゃんと歌えていたのはミエちゃんだけで、あとはみんな、歌詞が覚えられなくて。「見上げて~、え、次なんだっけ?」みたいな(笑)。ガクさん(山本學)なんて、カンニングでスマホを見ていたら、画面が光っちゃって。「ガクさん、光が映ってます」ってスタッフさんに注意されたりして(笑)。結局、ミエちゃんに任せて口パクしていたら中川監督に「ちゃんと覚えて歌ってください」と怒られちゃって。みんなで「はーい」って言いながら、また口パクしてました(笑)。

――そうした楽しい現場の空気も感じられる作品でした。最後に、公開に向けてメッセージをお願いします。

浅野:観ていただいた方にどんどん盛り上がってもらって、それを周りの方たちに伝えていただけたらいいなと思います。そうやって門戸を広げて、たくさんの人たちにこの王道の映画を観ていただけたらうれしいですね。

(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)

映画『星の教室』は、11月6日より全国公開。

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