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885作の頂点は「忍者×女子高生」の青春…現役・図書館職員が第67回講談社児童文学新人賞に輝く 3年ぶりの佳作も選出

  • 2026.11.4
cocreco▲第67回(2026年度)講談社児童文学新人賞を受賞した、森名子氏(中央)、佳作を受賞した瀬戸かなた氏(左)、入江真理子氏(右)

数多くのベストセラーを送り出し、児童文学作家の登竜門として知られる「講談社児童文学新人賞」。

斉藤洋氏、柏葉幸子氏、森絵都氏、はやみねかおる氏らを輩出してきた歴史ある同賞の第67回贈呈式が、2026年9月30日、東京都文京区の講談社にて開催されました。

応募総数885作品の頂点に輝いたのは、森 名子(もり・なこ)氏の『生き延びよ!忍者同好会』。「忍者修行」に情熱を傾ける一風変わった女子高生とクラスメイトたちの、等身大の悩みや友情を描いた青春ストーリーです。

森氏には賞状と記念品のほか、副賞として賞金50万円が授与されました。受賞作は今後、単行本として刊行される予定です。

cocreco▲贈呈式では賞状と賞金が講談社第三事業本部本部長より授与された

新人賞を受賞した森氏は現役の図書館職員。受賞者スピーチでは「この賞を目標にずっと書き続けてきた」と振り返り、

「受賞のご連絡をいただいたときは肩の力が一瞬抜けたのですが、その後すぐにドキドキ、ワクワクして『これからもお話が書き続けられるんだ』という喜びでいっぱいになりました。この気持ちをずっと忘れず、自分が楽しいと思える作品はもちろん、たくさんの子どもたちに楽しんでもらえるお話を書き続けたいです」

と、作家としての第一歩を踏み出す喜びを語りました。

cocreco▲『生き延びよ!忍者同好会』で新人賞を受賞した森名子(もり・なこ)氏。

佳作には、個性あふれる2作品が選出

新人賞に続き、選考委員から高い評価を受け佳作に選ばれたのは、瀬戸かなた(せと・かなた)氏の『死神ホネルのほねおりクリスマス』と、入江真理子(いりえ・まりこ)氏の『ゴッホの桜』の2作品です。

cocreco▲『死神ホネルのほねおりクリスマス』で佳作を受賞した瀬戸かなた(せと・かなた)氏

新米死神がクリスマスイブに奮闘するユーモラスな物語『死神ホネルのほねおりクリスマス』を描いた瀬戸かなた氏。

スピーチでは「この賞に応募するために試行錯誤を重ねてきた」と明かし、主人公について「自分が書いてきた物語の中でも一番愛着があります」と、涙で声を詰まらせながら受賞の喜びを噛み締めました。

cocreco▲『ゴッホの桜』で佳作を受賞した入江真理子(いりえ・まりこ)氏

帰国子女が抱える葛藤と成長を描いた『ゴッホの桜』で佳作を受賞した入江真理子氏は、演劇という自身のバックグラウンドに触れつつ、初めて挑戦した作品で賞を獲得できた感動を伝えました。

さらに、AIや動画配信が普及する現代において作家となる意義を見つめ直し、「自分のやるべきことを考えている」と今後の展望を語りました。

ユニークな視点と豊かな表現力で選考委員を魅了した佳作2作品(副賞各20万円)の今後の展開にも、大きな期待が集まります。

第67回(2026年度) 講談社児童文学新人賞の選考経過と選考委員

第67回(2026年度)児童文学新人賞には885作品の応募がありました。

応募者の年齢層は、最年少10歳から最年長88歳までと幅広く、平均年齢は44.8歳でした。

一次・二次選考を経て最終候補の6作品が選出されたのち、同年8月25日に最終選考会を実施。

今年度より新たに選考委員へ就任した工藤純子氏、福田隆浩氏、吉野万理子氏(五十音順)の3名に講談社・児童図書編集長を加えた4名で選考が行われ、厳正なる審査の結果、新人賞1作と佳作2作が決定しました。

cocreco▲工藤純子氏(中央)、福田隆浩氏(右)、吉野万理子氏(左)〔五十音順〕

贈呈式では、選考委員から受賞者へ温かい祝辞と選評が述べられました。

工藤純子氏は出版状況や世界情勢に触れ、先行きが不透明な現代において、児童文学は子どもの心の土台を作るために不可欠なものであると説き、出版関係者や作家が一丸となって子どもたちへ本を届けていこうとエールを送りました。

福田隆浩氏は、自身が40代で同賞を受賞した際のエピソードや、その後の執筆活動を回想。受賞者たちへ、手にした貴重なチャンスを逃がさぬよう、実体験に基づいた具体的で力強いアドバイスを語りました。

吉野万理子氏は、デビュー後に周囲と比べて思いどおりに執筆が進まない時期があっても、書き続けていれば必ず次の道が開けると話し、「マイペースに、楽しみながら書き続けることが何より大切」と受賞者を優しく励ましました。

受賞作品

◆新人賞

正賞 賞状・記念品 / 副賞 50万円・単行本として刊行

『生き延びよ!忍者同好会』

森 名子(もり なこ)

◆佳作

正賞 賞状/副賞 20万円

『死神ホネルのほねおりクリスマス』

瀬戸 かなた(せと かなた)

『ゴッホの桜』

入江 真理子(いりえ まりこ)

撮影/市谷明美

受賞作のあらすじと作者プロフィール

◆新人賞

『生き延びよ!忍者同好会』

【筆名】

森 名子(もり なこ)

【プロフィール】

1997年、神奈川県生まれ。東京都在住。2020年第6回ブックショートアワード大賞受賞。現在は図書館職員として勤務。

【あらすじ】

「私はこの学校で、忍者部を作りたいと思っています」

高校に入学したばかりのさゆきにとって一番大切なのは、ひとりぼっちにならないこと。空気を読んで周りに流されてばかりのさゆきの前に、忍者部を作りたいというおかしな宣言をするクラスメート・真珠が現れる。周囲の遠巻きな視線をものともせず、放課後は日々、忍者修行に邁進する真珠。一方さゆきは、仲間外れを恐れるあまり、本当は入りたくない陸上部の体験入部を断れずにいた。

入部についてどっちつかずな態度をとったことで友達と仲たがいをしてしまい、思わず「死んじゃいたい」とこぼしたさゆきに、真珠は忍者が大切にしている五つの考え「五忍」の一つを教える。「とにかく生き延びよ」「生きてさえいれば、次があるからだ」という言葉と、それを語る真珠の真剣さに、さゆきは友達と向き合う覚悟を決める。

一風変わった、でもいつも全速前進な真珠の言葉に、その後ろ姿に、いつのまにかみんなが勇気を貰っている。かつて忍者たちが戦乱の世を生き延びるために培った忍術が、現代の高校生たちの心に息づいていく、忍者・青春ストーリー!

◆佳作

『死神ホネルのほねおりクリスマス』

【筆名】

瀬戸 かなた(せと かなた)

【プロフィール】

1986年、東京都生まれ、香川県育ち。東京都在住。東京女子大学現代文化学部地域文化学科(2009年当時)卒業。受賞歴なし。13歳から書き始め、19歳から文学賞(純文学から始め、主に児童文学)に応募。現在は、コピーライターとして広告業界の会社に勤務。

【あらすじ】

あの世に勤めて五年目の、新米の死神・ホネル。クリスマス・イブの夜、るりちゃんちでサンタクロースに出会う。そこで、「プレゼントをくれるよりも、おばあちゃんの病気を治してほしい」という、るりちゃんからサンタクロースへの手紙を読む。おばあちゃんをあの世へおむかえにきたホネルは困ってしまう。悩みすぎたホネルは、まちがってサンタクロースの空飛ぶ車に乗ってしまい、大慌て。考えた末、子ども好きなホネルは、今夜だけサンタクロースの代わりを務めることに。死神らしい失敗を繰り返しながらも、プレゼントを届けていくホネル。子どものために贈り物をするすばらしさに喜びを感じたり、命の温かさに感動したり。プレゼントを全て届けて、るりちゃんちへ。偶然のひらめきで、おばあちゃんの病気を治し、ホッと安心。サンタクロースへ車を返し、自分の車であの世へ帰る。こうして、サンタクロースも無事に、るりちゃんの枕元にプレゼントを置き、明るんできた空へ帰っていった。

◆佳作

『ゴッホの桜』

【筆名】

入江 真理子(いりえ まりこ)

【プロフィール】

1981年生まれ。神奈川県在住。東京女子大学現代文化学部卒業後、ロシア国立サンクト・ペテルブルグ演劇芸術大学俳優学科に留学。ロシア功労芸術家セルゲイ・チェルカスキー氏に師事し、同大学の卒業国家試験に合格、全課程を修了。ロシア、イタリア、デンマークの劇団に客演し、日本の現代演劇作品『楽屋』や『父と暮せば』にロシア語で出演。現在はロシア語通訳、そして盲聾者通訳介助としても活動。

【あらすじ】

小学校四年生のミカは、生まれてから九年間暮らしたポルトガルを離れ、家族で日本に帰ってきた。日本の小学校に転入し、アニメや映像でしか知らなかった「本物の日本」を、初めて体験する日々が始まる。ずっと憧れていた日本のランドセルは、倹約家の母の手配で、ボロボロのものを使う羽目となった。同じクラスの子どもたちは、ポルトガルという馴染みのない国からやってきたミカに、まもなく異質な存在として接するようになる。教員歴が長いはずの担任も、外国育ちのミカの言動に理解を示さない。家には、いかがわしい商売を営んでいるお調子者の父、物静かで倹約に命をかける母、医学部を目指して浪人中の暴力的な姉がいる。ミカは家でも学校でも「日本語をしゃべっているはず」なのに真意が伝わらず、孤立していく。そんなミカを救ったのが、赤毛のアンのような家に住むナオミちゃんとその両親、殺人的な量の本に埋もれて暮らす三井のおじさん、スイスから来た時計修理職人のペーターさん、「前世研究所」の屋敷で出会った二人のおばあさんだった。そしてミカは「前世研究所」で、母の過去を思わぬ形で知ることになり……。

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講談社のWEBメディア「コクリコ」では、選評も詳しく紹介している。

工藤純子先生

講談社児童文学新人賞について

講談社児童文学新人賞は、子どもたちのための、オリジナリティあふれる作品を発掘する新人賞です。1959年に講談社創立50周年記念の文学賞として創設、現在では児童文学作家の登竜門として知られています。

これまで、

松谷みよ子 『龍の子太郎』(第1回)

福永令三 『クレヨン王国の十二か月』(第5回)

柏葉幸子『気ちがい通りのリナ』(『霧のむこうのふしぎな町』に改題:第15回)

斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』(第27回)

森絵都『リズム』(第31回)

椰月美智子 『十二歳』(第42回)など、

児童文学から一般文芸まで幅広く活躍する作家・作品を輩出しています。

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